大切なのはドラマの世界にはまること
ガイド:イ・ジスさんの曲はドラマととても合っていますが、曲を作るときはどのようにイメージを膨らませるのですか。
イ・ジス:
映像を前もってもらうこともありますし、シノプシスや写真を見て作曲するときもあります。大切なのは、ドラマの世界にはまることです。写真などを見ながらピアノの前に座ったり、実際にイメージの沸く場所に行ったりもします。『春のワルツ』の場合は、仮編集をした段階の映像を見ながら作曲しました。島に行くのは難しいので、仁川の海にいって想像を膨らませましたね。風を感じ、音を感じるために。森や公園にいったりもしました。
ガイド:
『春のワルツ』の挿入曲を作るにあたって、一番苦労したのはどんな点ですか。
イ・ジス:
曲を作るのは難しくなかったですね。ただ、「Flying Carpet」という曲を弾くシーンの代役をするときに、地方にいって長時間待ったりして、撮影の過程で肉体的につらかった思い出があります。代役の話は、突然電話がかかってくるのです。車に乗って地方に行き、10時間以上待って撮影する。そして徹夜でソウルに戻ってくる。いつもそんな調子です。
ガイド:
代役の話はいつも何日くらい前に連絡が入るのですか。
イ・ジス:
言っちゃっていいのかな……(笑)。いつも当日ですね。早くて一日前(笑)。台本ができないと代役が必要かどうかわかりませんからね。撮影しながら監督が決めるので、とつぜん連絡が入るのです。
ガイド:
そういう状況にもきちんと対応するので、監督はイ・ジスさんを信頼しているのでしょうね。
イ・ジス:
そう、僕は監督の言うことをちゃんと聞くからね(笑)。代役までやる作曲家なんて、あまりいませんから。でも、僕はとても楽しんでいます。撮影現場を知るのは、作曲家にとって大切なことだと思います。現場に行くと、監督と話す機会も生まれます。「次のシーンではどんな曲を使おうか」と話しながら一緒に決めていくのです。クラシックが必要だとすれば、僕が知っている曲を弾いて提案することもあります。
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