カメラの前の一瞬を大切に
――アンディ・ラウさんとの共演はどうでしたか? またエピソードがあれば教えてください。アン・ソンギ:
ひとつひとつの質問に考えながら丁寧に答えてくれた |
――アン・ソンギさんは俳優生活50周年を迎えました。役者として心がけていることを教えてください。
アン・ソンギ:
撮影現場と、撮影している瞬間のひとつひとつを重要に考えています。歌手や演劇俳優はその場に観客がいませんが、映画の撮影現場には観客は存在せず、カメラの前で演じるだけ。反応が返ってくるのはずっと後になってからです。でも観客の存在を忘れず、カメラの前に立つことが大切だと思います。その一瞬一瞬を重要なものととらえていくのです。
また、自分の時間を持つことも大切ですね。考える時間を持つこと。スケジュールがいっぱいでああ休みたいというのではなく、撮りたい、演じたいと思う余裕を持てる日程を組むことが大事だと思います。
一つ一つの質問に丁寧に答えていたアン・ソンギ。予定していたインタビューの時間が過ぎ、撮影中のエピソードを聞くのはあきらめようか……そんな空気が流れる中、名残惜しそうな雰囲気を感じたのか、アン・ソンギが「時間はまだ大丈夫ですか? エピソードを話しましょう」と自ら提案してくれました。
そのエピソードとは、「現場には各国語のたくさんの通訳がいました。日本の阪本撮影監督の通訳が一番大きな声で話すのが通例で、阪本監督が怒ると通訳も一緒になって怒っているのが面白かったですね(笑)」というもの。
にこやかに語る姿からは、初めての本格的な合作映画に取り組んだアン・ソンギが、いかに現場を楽しんでいたのかを察することができました。