満足度追求による大学改革を実施する法政大学
都心市ヶ谷にそびえたつ法政大学市ヶ谷キャンパス。徹底した満足度追求による大学改革を推し進めている
例えば、2008年度「窓口での職員対応」については、「やや不満」「不満」が多くよせられた。全体で23%という数値でもあったので、それに対して即座に対応。窓口対応を向上させる小委員会を立ち上げ、マニュアルの充実や、職員研修などの対応を実施した。
就職支援の面では、市ヶ谷キャンパスが40.6%と高い満足度である一方、小金井キャンパスが26.1%と低かった点も深く掘り下げ、「低学年の時期からの就職支援活動の実施」を2011年4月までに行うと確約している。
このような対応は、一見地味で必要がないように思えるかもしれないが、大学は新しい学生の獲得だけに専念するのではなく、まず地場固めが大切であると考え、地道な努力を法政大学が実行していることの証左であるだろう。とかく、旧来の日本の大学組織は、内側の欠点を隠したり内部に甘い傾向がある。毎年の卒業生の意見こそ大学改革の大きなヒントと位置づけている法政大学は、非常に健全な組織運営を行っていることがはっきりとわかる。
なお、法政大学は地味な大学内部の改革と新学部・学科開設、または改組改編という一連の事業を並行して行っている。近年の主な大学改革事業は以下のとおり。
- 2000年…現代福祉学部・情報科学部を開設
- 2003年…キャリアデザイン学部(「生き方・働き方・学び方の設計について考え、自分が育ち、人を育てる能力をつける学部」)開設
- 2004年…大学院法務研究科(法科大学院)開設
- 2005年…会計大学院開設、スポーツ・サイエンス・インスティテュート(スポーツ推薦枠での各学部での研究を行う)を開設
- 2008年…工学部を理工学部と生命科学部に改組、GIS(グローバル教養学部)を開設
- 2009年…スポーツ健康学部開設
- 2010年…現代福祉学部を改組、福祉コミュニティ学科と臨床心理学科(仮称)を開設予定
学部横断で単位を認定。これも学生満足の一つ
大学改革は、なにも新しい学部、学科の開設や改組改編だけではない。上記のような既存の中のシステムを少し変えるだけでも、大きな効果があげられるようだ。このことから、法政大学は内部の学生をいかに「満足させるのか」に大きな力点を置いていることがわかる。一般には、学部学科の垣根を越えた「新しい大学教育」が叫ばれているが、様々な学部・学科の特徴を総合した新学部・学科の開設という形をとることが多い。法政大学では、3・4年次に一定の条件(履修単位の上限を設定)を満たせば、既存の大学の授業を学部横断して受講でき、それを卒業単位として認めている。文学部に入ったが、現代福祉学部の授業を受けてみたいという場合でも、以下のように単位として認定される授業が様々に展開されている。
■現代福祉学部の公開科目例
地域経営、地域文化政策、コミュニティデザイン、コミュニティアート、地域ツーリズム、文化環境創造論、非営利組織の運営、福祉国家論、国際福祉論、保健医療サービス、異文化心理学、福祉企業の経営、都市住宅政策論I・II