Q3:OBが反対するとなぜ年金額を減らせないのですか?
OBが反対しているため年金額が減らせない、という記事をよく見ます。これは、年金の権利を簡単に会社が変更してしまわないよう、厳しい法律の定めがあるからです。Q2で指摘したとおり、単に景気が悪いからという理由で年金額を減らすことはとても危険なことです。しかし、減らさなければ制度の存続が困難になることは考えられるため、確定給付企業年金法ではOBの年金の権利を減額する場合には、OB全員から個別に3分の2以上の同意を取ることを求めています。(なお、同意した人だけ減らして同意しなかった人は減らさないことは可能ですが、強い不公平感が生じますのでほとんど行われていません)
また、OBの減額や現役の減額については厚生労働省の認可が必要になります(確定給付企業年金法の定めによる規約の変更の認可)。厚生労働省では、企業が掛金を払うことが困難である実態があるかなどの判断を行い、減額がやむを得ないことを確認のうえ、認可を出します。
こうした手続きは、会社の一方的な理由により退職金や企業年金の権利が減らされないようにするための工夫なのです。
なお、現役社員の将来受け取る年金額を減らすこともあり、これは労働組合等の合意と厚生労働省の認可が必要になります。JALではこちらは実行されるようです。
Q4:OBはなぜこれほど、かたくなに反対するのですか?
ニュースでは、とにかくOBが頑固に反対しているように見えます。OBの同意取得は困難な情勢、という記事を見るとOBがワガママなのかなと思う人も多いでしょう。しかしよく見るとOBには正式な減額提案は一度もなされていません(報道では11/23.26に行われるらしい)。つまり、OBは「減らされるらしい」という不確定な情報をベースに「反対するらしい」と決めつけられているのです。実は会社はOBとは直接交渉しておらず、国や債権者(銀行等)とOBの年金の減らし方について議論している段階です。これは現行の法律において、OBの減額に関する交渉の方法が限られていることによります。現役社員の年金額を減らす場合には、労働組合などと交渉して細かい条件を修正しながら調整ができます。しかし、OBには労働組合のような団体がないため(OB会にはそうした交渉を行う代表権はない)、減額をする際に1つの提案を示して、「同意か、同意しないか」という評決を取るのです。
OBとしては細かい意見を予め会社に言えないため、給付減額が少ない提案を期待するしかありません(そのほうが同意しやすいし、成立しても影響が軽くてすむ)。OBが強い反対の意思を示すことには単なるワガママではなく、構造的な理由もあるわけです。
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どうですか? JALの年金減額問題についてのイメージが変わってきましたか?
次回はQ5~Q8について回答したいと思います。
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