Q1:今回減らされるという、企業年金とは何ですか?
誤解としてまずあるのは、国の年金の「消えた年金」問題などと今回の企業年金の減額問題がごっちゃになっているケースです。きちんと厚生年金保険料を納めていれば(これは国に納めて国のほうで管理する)、会社が倒産しても厚生年金の受給権を減らされることはありません。(いわゆる消えた年金は、会社が厚生年金保険料をきちんと払っていなかったため、年金額も減らされるケースです)。
JALで今起きているのは、「企業年金」と呼ばれる独自の制度の見直しです。これは、会社の退職金を積み立てる手段として導入されたもので、それを年金受け取りできるようにしているもので、日本では会社員のおおむね2人に1人が加入している制度です(特別に贅沢な話ではありません)。JALの場合、確定給付企業年金法にもとづく確定給付企業年金があります。
Q2:会社がつぶれるようなとき、年金をもらえなくても当然では?
「会社が危機なのだから、減らされて当然」というのもよく聞く意見ですが、これは大きな問題があります。退職金や企業年金は働く人(働いた人)の、守られるべき大切な権利だからです。景気が悪いとき約束を守らなくていいのなら、「ウチは退職金5000万円だよ」と人材募集をしておいて、60歳になったら「景気が悪くて払えない。すまんね」ということになってしまいます。これでは安心して働けません。
きちんと退職金や企業年金を払うことは、会社に求められる大きな責任といえます(払いたくないなら、会社は最初から企業年金や退職金の規程を設けないこともできる)。簡単に、「払えないのだからもらえなくても仕方ない」という議論をすると、実は普通の会社員の立場を弱くしてしまうことは考えてみてください。
企業年金制度は、確実に退職金を準備・保全する仕組みです。この点はQ8で開設します。また、会社が完全に破綻した場合、退職金や企業年金がどうなるかは後半のQ7で解説します。