耳に入れるだけで使える携帯用イヤフォンマイクを作りたい
ナップエンタープライズの代表取締役、瀬戸信次氏。 |
元々、inCoreは、なるべくコンパクトな携帯電話用のイヤフォンマイクを作りたいという瀬戸信次氏のアイディアから生まれたものです。そのアイディアは、イヤフォンの本体の中にマイクも収納してしまうという、普通ならハウリングは起こるは、エコーはうるさいはで使い物にならないはずの、とんでもないものでした。
「あちこちの学者さんやオーディオメーカーに、それは無理と言われました」と瀬戸さん。実際、大学との共同作業では、中々実現の目処が立たなかったそうです。このあたりの話を詳しく書くと、プロジェクトXみたいな長編ドキュメントになってしまうので、ここでは割愛しますが、ともあれ、その難問を、瀬戸さんは、とんでもないアナログな方法で解決してしまいます。簡単に言えば、耳の中のスピーカーから出る音が、最も響かないポジションを探して、そこにマイクを設置するというアイディア。
ただ、そのベストポジションを探すのに2年近くかかったのだそうです。「とにかく、毎日、少しづつ場所を変えては実験するの繰り返しですから」と、瀬戸さんが言うように、その作業はとてもアナログというか、手作業だったそうで、話を聞いていると、工芸品をつくっているかのような印象を受けました。実際、inCoreは、どこか工業製品というより手作りの工芸品的なムードがある製品です。
騒音の中でも会話を楽しめるイヤフォンマイクとして
開発されたのがinCoreの始まり |
そんな作業の中で生まれたinCoreだけに、イヤフォンマイクとして使うと、確かに使いやすいです。マイクを気にしなくて良い上に、マイクは耳の中の音を拾うため、相手の携帯電話に不要な音が入りません。また、イヤフォン自体も周囲の音に邪魔されずに相手の声がよく聞えるので、街中でも落ち着いた会話が出来ました。耳が多少遠い人でも、携帯電話での会話が楽しめるのも、inCoreの特徴の一つです(ただし、携帯電話によって使えない機種もあります。適合表を参照して下さい)。
耳に優しいイヤフォンへのこだわり
ポーチとイヤーパッド大・中・小が付属する
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80db(デジベル)までの音量なら、24時間聞き続けても人体に害はないのですが、それ以上になると、長時間聞き続けることで難聴が進行するという研究結果が、日本産業衛生学会から発表されています。瀬戸さんは、そのことを重要視して、80db以内の音量で楽しめるイヤフォンを作ることにこだわったのだそうです。そのこだわりが、何処ででも、誰もが使える携帯電話用のイヤフォンマイクにも、地下鉄の中でも気持ち良く音楽が聴けるイヤフォンにも、集中したい時の耳栓にもなる、そんな製品に繋がったのだと思います。
イヤーパッドの独自の形状にしても、カナル型イヤフォンの弱点でもある、「パッドをきちんと装着しないと、良い音で聞くことが出来ない」という点への瀬戸さんなりの解答なのだそうです。実際、入れる角度や押し込み具合で随分聴こえ方が変わるのが、通常の密閉型イヤフォンなのですが、inCoreの場合、耳に差し込むだけで、特に押し込んだり、角度を変えたりしなくても、きちんと密閉されます。だから着脱が簡単で、その点も他のカナル型に比べてアドバンテージになっています。
イヤーパッドに関しては、さらに改良を加えて、より多くの人の耳に合うようにした新型が準備されていました。この改良版からは、自分の耳に合うサイズのものを残して、他をナップエンタープライズに送り返せば、合うサイズのパッドと無料で交換してくれるサービスを行うそうです。また従来のタイプでも、不要なサイズのものを送り返してもらえば、サイズに合う新型を送ることも考えているそうです。サイズが合わないパッドが部屋にゴロゴロしているガイド納富としては、このサービスはとても嬉しいものです。後は、パッドを色分けしてもらえると、左右が一目で分かって助かるのですが、と、瀬戸さんに伝えておきました。
次のページでは、高音質補聴器としての利用法と実際の購入方法、細かい使い勝手を紹介します。