11月第2週:今週の銘柄推奨ポイント
ここ数日、急速にM&Aの話題が出てきています。1. バフェット氏が、米国鉄道2位を総額3兆円で買収。
2. KKRのノースロップ子会社買収にバークレイズ、RBC等が買収資金提供の見通し。
3. 中国IT最大手聯想控股グループが日本のシステム会社SJI買収の交渉。
4. パナソニックが三洋のTOBを実行。
5. ビクター音楽部門をコナミが買収の見通し。
6. HOYAのペンタックス・デジカメ事業をJVCケンウッドが買収の見通し。
7. 楽天が電子マネーのビットワレットの過半数を取得し子会社化へ。
8. チムニーが非公開化型MBOを発表。
9. 吉本興業が非公開化型TOBを実施。
企業買収が実現するためには、あえて簡単にいえば、1、株価が割安であること、2、買収資金を調達できること、の2点が揃う必要があるといえます。
今回の場合は、
1. 今の時点が株価的に底値に近いと判断されること。
2. ECBや英中銀のトップ会見に見られる通り、金融緩和から金融引き締めへと政策転換するタイミングが遠くなく、資金調達面で今を逃すと先々に不透明感があること。
などが影響したものと推測できます。
さて、これらの流れを受けて、我々が意識すべき次なる投資ターゲットはどこになるでしょう?
M&A銘柄をピックアップするオーソドックスな手法としては、EV/EBITDA倍率からM&Aの候補銘柄を見極める、という方法があります。これは、EV(Enterprise Value=企業価値)がEBITDA(キャッシュフロー)に対して何倍なのか、を見る指標です。
これをかなり大雑把に言い換えると、要するに、今仮にこの企業を買収したら、何年後までにその投資資金を回収できるのか、という考え方です。例えば、EV/EBITDA倍率が3.0倍の企業は、今買収すると回収に3年かかる、5.0倍なら5年、10倍なら10年、というイメージです。逆に1.0倍の企業は1年で回収できそうなので、買収しがいがあるぞ、という訳です。
ただ、今のタイミングのリストアップとしては、単にEV/EBITDAでは戦略的に的を得ないと考えます。直近、日立製作所がグループ4社をTOBで完全子会社化する、というM&Aがありました。ここから得られるヒントは、今後、親子上場している大企業が、上場している子会社を完全子会社化する、あるいは逆に持分を放出する、という現象が起こってくる可能性がある、と考えます。
従来より指摘されてきましたが、日本には300社以上もの子会社企業が上場されています。通常、親子で上場することに合理性は低く、株価的にはいわゆるコングロマリットディスカウントが生じている、と考えられます。これまでは、仮にコングロマリットディスカウントが生じていても、特に親会社側も子会社側も困る事情に乏しいということがありましたが、昨今の景気情勢、資金情勢から見て、特に親会社側にキャッシュポジションを多めに確保しておきたい、というニーズが高まっていてもおかしくはありません。
このため、当社では今後、親子上場企業間で何らかのM&A的なアクションが加速する可能性が十分にある、と考えています。したがって、今週の銘柄選定は、親子上場のM&A関連銘柄をポイントとすべきものと考えます。
(このテーマでのリストアップ結果については、当社サイトの「SIスクリーニング」で実際にご覧頂けます)