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藤井鞄の定番型シリーズ ブライドル・バッグ これが超絶技巧の手縫いバッグだ

藤井鞄は伝統的な手法と職人魂を用いて、これまで最高の手縫いバッグを仕上げてきた。なかでも定番型シリーズはフルオーダーと同じグレードをもちながら、お買い得プライスなのである。これは狙いめです!

倉野 路凡

執筆者:倉野 路凡

メンズファッションガイド

狙いめは定番型シリーズ

手縫いダレス
定番型シリーズ 手縫いダレス。ブライドルレザーを使用。色はブラウン。34万6500円(税込み)。
渋谷に店舗&工房を構える藤井鞄。ここは鞄職人の藤井幸弘氏を含めて3人の鞄職人で手縫いバッグを手掛けている。

その技術力の高さから、どうしてもフルオーダーの手縫いバッグが注目されることが多いが、じつは定番化している既製の手縫いシリーズも扱っている。

型は伝統的なダレス・バッグなどで、ビジネスシーンにも役立つデザインのものが多い。

手縫いカカエ
定番型シリーズ 手縫いカカエ。ブライドルレザーを使用。色は濃いグリーン。37万8000円(税込み)。
フルオーダーの場合はさまざまなリクエストに応えるために、どうしても、それなりの価格になってしまうが、その点この『定番型シリーズ』は手頃な価格で手に入るのだ。

しかも同じ型のものを長年にわたって作り続けているため、職人にとっても得意中の得意というわけで、完成度が凄く高いのである。

英国製ブライドルレザーを使用する

手縫いカカエ
定番型シリーズ 手縫いカカエ。ブライドルレザーを使用。色はヌメ。37万8000円(税込み)。
今回おすすめしたいのはツイード・ジャケットとも相性のいい、英国製ブライドルレザーを使ったダレス・バッグとカカエ(ブリーフ・ケース)の2型。

このブライドルレザーというのは乗馬用の鞍や手綱に使われているカウハイド(成牛の革)で、耐久性と独特のヌメリ感が特徴だ。

質のよい真鍮製金具
ハンドルの金具はオリジナルではないものの、良質の真鍮製金具を使用。錠前と底の鋲などはオリジナルを使用する。表面にブライドルレザー特有のブルームが現れている。
なめし方は樹皮など自然な草木を使った“ベジタブルタンニンなめし”。クロームなめしにくらべると大変手間がかかり、約10週間かけてなめされるという。その後、革にタロー(獣脂)がしっかりと染み込むまでブライドルグリースのなかに浸される。

英国製のバッグ好きの貴兄ならご存知だと思うが、革製品の表面にブルーム(白い粉)が現れるのが特徴だ。

手縫いの魅力とは

麻糸を使った手縫い
すべて麻糸を使った手縫い。厚い革や難しい箇所にも手なら縫えるのである。麻糸とコバの間に一本の線が入っている。これがネンと呼ばれる仕上げだ。
『定番型シリーズ』は麻糸を使った手縫いである。ミシン縫いにくらべると力の加減が調整でき、ギュッと糸を強く締めることもできる。

また、ミシンでは縫えないような厚い革や難しい箇所には大変効果的なのだ。アタッシェ・ケースの場合、木枠にも穴を開けて手縫いすることだってできてしまう! 市場に出回っているバッグのほとんどはミシン縫いである。

こだわりのオリジナル錠前と金具

オリジナルの錠前と金具
藤井鞄オリジナルの錠前と金具。真鍮製とスターリングシルバー製がある。
藤井鞄は錠前などの金具にもこだわっていて、真鍮製スターリングシルバー製のオリジナルを使用する。

これまで使っていた既製の金具では納得がいかずオリジナルを作ることを決意し、5,6年前から技術力の高いところに依頼して作ってもらっているのだ。フルオーダーだけでなく『定番型シリーズ』にも使われている。

オリジナルの真鍮製錠前
オリジナルの真鍮製の錠前にはFugEEの文字がさりげなく刻印されている。
バッグの顔ともいえる錠前は、あくまでもクラシックなデザイン。強い主張ではなく、さりげなく上品なところが好印象だ。“FugEE”の刻印も控えめでよろしい。

それにしても、オリジナルの錠前を使っているところがどれほどあるのだろうか・・・。長年使っていると味が出てくる錠前こそ、本物の錠前なのだ。

緊張感漂うハンドルと金具を見よ!

オリジナルの金具
真鍮製の金具に取り付けられたハンドルは、左右にガタつくことも、浮き上がってくることもない。
ハンドルを留めている金具に注目してもらいたい。ハンドルと金具の間が密着しており、左右にガタつくことも浮くこともない。必要な方向にだけ動き、余分な遊びがないのである。

こういった細部へのこだわりが、カバン全体の雰囲気をピシッと引き締めているのだ。

コバの仕上げとネン

丁寧なコバの仕上げ
コバはカンナで面取りされ、布海苔で何度も磨かれる。この工程だけで、まる一日かかってしまう。もっともぶつかりやすい箇所だけに、時間をかけて耐久性をもたせているのである。
カバンの良し悪しを見分ける方法で、素人でもわかるのが、コバの仕上げの丁寧さを見ること。藤井鞄のブライドルレザーのカバンは、縫製後にカンナで面取りを施し、布海苔(ふのり)、磨き、染色を繰り返すのだという。

麻糸とコバの間に見えるのがネン
麻糸とコバの間に見える一本の線がネンだ。これによって革同士がギュッと圧縮され、厚みがなくなり、耐久性が増すのである。
水分を吸収するというブライドルレザーの特性を活かした仕上げである。これによってコバがギュッと引き締まり耐久性が飛躍的に向上するのだ。

この工程にどれほど時間をかけているかが、信頼できるメーカー(工房)であるかどうかの判断基準になる。

ネンを入れる工程
「こんな感じでネンを入れます」と藤井氏が実演してくれました。ネンという道具を使うのだが、その先端は職人によっていろいろ工夫が施されている。右のグラスに入っている液体が布海苔(ふのり)である。
コバから少し入ったところに1本の線を見ることができる。専門工具のネンを使って、革と革を縫い合わせた部分を圧縮して、より頑強にするための線なのである。

この仕上げそのものもネンと呼び、布海苔(ふのり)で磨いた後にこの作業を行う。

10年、20年使えると考えれば、けっして高くない

手縫いカカエ
オーダー品。定番型シリーズ 手縫いカカエの標準装備ハンドルではなく、“磨きの持ち手”にしたもの。ブライドルレザーを使用。定番型より1万円高い、38万8000円(税込み)。
われわれ庶民から見たらびっくりするほど高い値段かもしれない。ただ、わかってもらいたいのは量産しているものと、本質的に異なるのである。

使っている革のクオリティーから各工程の多さと費やす時間、こだわり抜いた錠前と金具、手縫い、仕上げの丁寧さなど、まったく妥協していない。10年、20年先を見つめてカバンを作っているのだ。

磨きの持ち手
“磨きの持ち手”とは、左右のコバをしっかり磨き上げたハンドルのこと。これだけ丁寧なハンドルはめったにない。ステッチはもちろん手縫いだ。
フルオーダー(40万円~)は夢かもしれないがこの『定番型シリーズ』ならどうにか買えそうだ。長きにわたって作り続けている型のため、職人の腕が名人の域にまで達しているのだ。ほんと完成度が高いのである。

とはいえ30万円以上するものだから、やっぱり冬のボーナスを注ぎ込むしかない。渋谷という立地もいいので、一度手にとってじっくり見てもらえると嬉しい。

●定番型シリーズ(手縫い)
ダレス/ブライドルレザー/ブラウン/34万6500円(税込み)
カカエ/ブライドルレザー/濃いグリーン/37万8000円(税込み)
カカエ/ブライドルレザー/ヌメ/37万8000円(税込み)
カカエ 磨きの持ち手(オーダー仕様)/ブライドルレザー/38万8000円(税込み)

●馬蹄形の小銭入れ(手縫い)
馬蹄形の小銭入れ
手縫いの馬蹄形の小銭入れ。蓋を閉じるときに吸い付くように閉まるところが職人技なのだ。巷に似たタイプは多く出まわっているが、ここまで作り込まれたものはない。革は本物のオーストリッチを使っている。
オーストリッチ 3万6750円(税込み)
タンニンなめし 2万6250円(税込み)


藤井鞄】 (ふじいかばん)
東京都渋谷区鶯谷町18-8 亀山ビル101
営業時間 12:00~20:00 休日 木曜
TEL/FAX 03-5489-2279
http://fugee.jp.jp/


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