男の腕時計/スイスの老舗高級ブランド

ヴァルカンの時計を自作する醍醐味(2ページ目)

7月18日の記事で紹介したように、スイスの時計ブランド、ヴァルカンから日本のファンに向けて自作キットがこの秋に発売され、大きな話題に。実製品と同じ機械式時計を自分で作り上げる貴重な体験ができる。

執筆者:菅原 茂


講習会に参加して時計づくりを学ぶ

こうした機械式時計の自作は、まず何より数百個の部品から成るムーブメントの構造がよく理解でき、しかも、一つの時計を仕上げるのにいかに熟練の手作業を要するかが身をもって体験できる点で非常に貴重である。筆者もスイスや日本でムーブメントの分解組み立てを自分で体験する機会が過去に何度もあり、その度に伝統的な時計づくりの知恵や技術に敬服したものだ。

山田氏
「神の手を持つ男」と称される山田喜久男氏は、日本有数のコンプリケーション・マイスター。彼から指導を受けることができる講習会は、それだけでもまたとない貴重な機会
とはいえ、専門技術を備えない未経験者でもこのヴァルカンの「テキニカルワークキット」を組み立てることができるのだろうか? 読者の方々はおそらく疑問に思われるだろう。そんな心配に応えるために、輸入代理店のワールド通商では、購入者に同社のテクニカルスタッフとともに時計製作を学び、実体験できる「ウォッチメイキング受講カード(権利証)」を発行し、コンプリケーション・マイスター山田喜久男氏の監修のもとで、組み立て作業の指導が受けられる講習会を設けている。つまり、かりに初心者でも、この「テキニカルワークキット」を通じて、時計師の入門ができるという仕組みだ(講習会の詳細は、ヴァルカン150周年記念サイト参照)。

 V10ムーブメント
機械式ムーブメントは、ヴァルカンの代名詞となっているアラーム付き、キャリバーV10
実際の組み立ては、地板に輪列や各種部品を組み込む工程も含めて約60工程もあり、かなり本格的である。最終調整はさすがに専門技術者でないとできないので、受講者は、その手前までのプロセスを体験することになる。首尾良く自力で組み立てられればラッキーだが、受講しても完成に至らなかった場合は同社で完成させるので安心だ。最後は、コンプリケーションマイスターが仕上げ、完成品となって購入者へと届けられるというシステムをとっている。

キャビノチェ外観
講習会が開かれるワールド通商の「キャビノチェ・ギャラリー東京」には、講習会スタジオも新設。時計職人が使うワークベンチも完備した
多少なりとも自分で製作した時計を着けることができるのは無上の喜びであるのと同時に愛着もまた一段とわくだろう。アラームの音を聴くたびに、「テキニカルワークキット」を組み立てた楽しい思い出が甦るはずだ。今回は40本限定だが、時計好きとしては、可能ならば今後もぜひ続けてほしい好企画である。


【問い合わせ先】
ワールド通商 TEL03-3549-3011

【組み立て・商品に関する問い合わせ先】
キャビノチェ・ギャラリー東京 TEL03-5976-2555
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