アプローチは、はじめにデザインありき
アーティストらしい風貌が印象的なロドルフ・カタン |
2006年のスイス時計専門誌『モントル・パッション』でウォッチ・オブ・ザ・イヤーに輝いた「インスティンクト・クロノ180°」に代表されるように、独自の美意識に貫かれたロドルフのデザインは、どれもインパクトが強く、一度見たら忘れられないほど個性的なスタイリングが施されている。最近のスイス時計は、伝統を脱して、新しい発想から21世紀のデザインを目指す動きが活発だが、ロドルフはまちがいなくその先端に位置するブランドだ。
今年のトゥールビヨンの中でも一際強烈な個性を放つロドルフの「ビッグ・トゥールビヨン」。手巻き、ステンレススティール(PVD)、1505万円(予価) |
さて、そんなロドルフの2008年最新作から、まず驚きのスーパー・コンプリケ-ションを紹介しよう。「ビッグ・トゥールビヨン」である。ビッグなのは、そのトゥールビヨンのキャリッジの大きさ。なんと直径20mm。横長文字盤の左半分がこの巨大トゥールビヨンで占められている。それだけでなく、プッシュボタンでゼンマイを巻き上げる機構や、ジャンピングアワーの原理を応用して時間と分をデジタル式に表示したり、7日間パワーリザーブを備えるなど、なにしろ型破りな時計である。ステンレススティールにブラックPVDを施したケースもトレンディだ。
この時計をみると、コンプリケ-ションという機構からデザインが発想されたように思えるが、実際は逆だ。彼のアプローチは、つねに、はじめにデザインありき。芸術的な造形を最優先する。ケースや文字盤からさまざまなディテールまで、フォルム、カラー、素材などが詳細にデザインされ、それに合わせてムーブメントが開発されるのである。そのため、ムーブメントの製作には相応の高度な技術も不可欠だ。理想の時計を実現するためにフランク・ミュラー ウォッチランドグループと手を結んだ理由もそこにあったという。
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