レトログラードといえばピエール・クンツ
ピエール・クンツ「パピヨン“タヒチムーン”」。時間(9時位置)と分(3時位置)の表示がレトログラードになった「パピヨン」のスケルトン・バージョン。それぞれの針を逆行させるカムが見える。自動巻き、18Kグレイゴールド。281万4000円 |
現代の複雑時計においてこのレトログラードをあらゆるモデルに搭載して脚光を浴びたのが、ピエール・クンツである。時計師として複雑機構に精通した彼は、自分のブランドを創設するにあたって、レトログラードに着目した。彼の場合、時間表示、分表示、秒表示、日付や曜日のカレンダー表示、はたまたパーペチュアルカレンダーという具合に、レトログラードを多用した独特の複雑時計をこれまでに開発してきた。文字盤に時間と分表示をシンメトリーに配した、通称「パピヨン」は、その代表作として知られる。
ちなみに、針を逆戻しする仕組みには、カムとバネ、またはひげゼンマイを利用する両タイプがある。いずれも針の移動とともに反発エネルギーが徐々に蓄えられ、終点でフルに達する。その力によって針がジャンプする。日本庭園に置かれる「鹿威し」をイメージすれば、わかりやすいだろう。
ピエール・クンツ「トリプル・レトログラード・セコンド」。秒表示が0から20、20から40、40から60に3分割され、3本のレトログラード秒針がリレーする。自動巻き、18Kグレイゴールド。246万7500円 |
ピエール・クンツの時計は、通常の回転運動をするムーブメントをベースに用い、そこに巧妙に設計されたレトログラード機構を組み込むことによってユニークな反復運動を実現している。さらに興味深いことに、「トリプル・レトログラード・セコンド」のように、3つの独立した秒針が20秒ずつリレーしながら60秒を表示する、機械式時計の歴史上初めてのモデルさえ開発している。レトログラード式のカレンダーなどでは、週に一度や月に一度しか逆戻りの瞬間を目にするチャンスはないが、このモデルの場合、1分間に3度も針のジャンプを見ることができて楽しい。
ピエール・クンツ「ヴィルヴォルタント・レトログラード」。6時位置の秒針が回転しながら移動し、60秒経過すると高速で元の位置に戻る。自動巻き、18Kレッドゴールド。262万5000円 |
巧妙なメカニズムはもちろんだが、このように目を楽しませるエンターテイメント性も、レトログラードの魅力である。秒針が目にもとまらぬ超高速で回転する「ヴィルヴォルタント・レトログラード」は、まさにピエール・クンツの真骨頂だ。
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ピエール・クンツ東京 TEL03-3400-5717
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