クロノグラフを応用して使う

クロノグラフとはどんな腕時計?その特徴と人気のワケで紹介したように、クロノグラフとは、簡単にいうとストップウォッチ機能を備える時計である。この機能を利用すれば、例えばマラソンなどで、走者のスタートからゴールまでのタイムを計ることができる。

クロノグラフの応用としては、一定の距離の移動に要した秒数から平均時速を計算する「タキメーター」、光速と音速の差を利用して対象までの距離を計算する「テレメーター」、また、脈拍数を計算する「パルスメーター」などがある。クロノグラフをスタートさせて計測を始め、ある時点でストップさせた際に、針が指している目盛の数値が、それぞれ時速、距離、脈拍数になる。

計測の操作を簡便にするフライバック・クロノグラフ

ブランパン「フィフティ ファゾムス フライバッククロノグラフ」。1953年に発表のダイバーズウォッチに基づく最新モデル。自動巻き、ステンレススティール・ケース、ケース径45mm、300m防水。逆回転防水ベゼルにドーム状のサファイアクリスタルを使用。耐水キャンバス・ストラップ。

ブランパン「フィフティ ファゾムス フライバッククロノグラフ」。1953年に発表のダイバーズウォッチに基づく最新モデル。自動巻き、ステンレススティール・ケース、ケース径45mm、300m防水。逆回転防水ベゼルにドーム状のサファイアクリスタルを使用。耐水キャンバス・ストラップ。


「フライバック・クロノグラフ」は、外観上は通常のクロノグラフと変わりはない。しかし、リセットボタンの構造に大きな違いがある。このボタンの特徴は、計測中に押すと(一般のクロノグラフでは操作不可)、ストップ→リセット→再スタートの3段階の操作が一度で行える点にある。

これによって、クロノグラフのあらゆる針が一瞬にして元の位置にジャンプして戻ることから、「フライバック」と呼ばれる。この機能を備えない通常のクロノグラフで、針のゼロ復帰の動作を同じ「フライバック」の言葉で表現する紛らわしい例もあるので、購入の際は十分に注意したい。

この特殊なクロノグラフ機能は、パイロットの敏捷な作戦行動のために開発されたという。1950年代にブレゲがフランス政府の要請で製作し、海軍航空隊などで使われた「タイプXX (トゥエンティ)」は、フライバック・クロノグラフの先駆者としてとりわけ有名である。

ブレゲ「タイプ XX(トゥエンティ)トランスアトランティック」。オリジナル・モデルのフライバック・クロノグラフは、フランス政府の要請で1954年に開発。現行品もその機能とデザインを踏襲。自動巻き、ステンレススティール・ケース、ケース径39mm。

ブレゲ「タイプ XX(トゥエンティ)トランスアトランティック」。オリジナル・モデルのフライバック・クロノグラフは、フランス政府の要請で1954年に開発。現行品もその機能とデザインを踏襲。自動巻き、ステンレススティール・ケース、ケース径39mm。


フライバックは、通常より一段と繊細なクロノグラフ機構と、頻繁な操作に耐える耐久性が同時に要求されるだけに、製造は難しく、現在も製品数は限られている。

最も複雑かつ高度なスプリットセコンド・クロノグラフ

通常のクロノグラフの場合、計測用の秒針は1本しかなく、計測の対象も一つに限られる。スプリットセコンド・クロノグラフの特徴は、計測用の秒針を2本備えていること。それによって複数の対象の経過時間を計測したり、あるいは、一つの対象の中間タイム(スプリットタイム)を連続的に計測することができる。

IWC「パイロット・ウォッチ・ダブル・クロノグラフ“TOP GUN”」。お馴染みの「ドッペル・クロノグラフ」の流れを汲む最新のオール・ブラック・スプリットセコンド・クロノグラフ。自動巻き、チタン&セラミック・ケース、ケース径46mm。

IWC「パイロット・ウォッチ・ダブル・クロノグラフ“TOP GUN”」。お馴染みの「ドッペル・クロノグラフ」の流れを汲む最新のオール・ブラック・スプリットセコンド・クロノグラフ。自動巻き、チタン&セラミック・ケース、ケース径46mm。


スプリットセコンド・クロノグラフの原型は、19世紀前半の懐中時計にまで遡り、20世紀前半になって腕時計にも組み込まれるようになった。クロノグラフの中で最上位の高度な技術ゆえ、トゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーターとともに、「4大コンプリケ-ション」に数えられることもある。

すでに述べたように、スプリットセコンド・クロノグラフには、クロノグラフ秒針とスプリット秒針の2本があり、興味深いのがそれらの独特な動きだ。

まず、スタート/ストップボタンを押すとクロノグラフ秒針とスプリット秒針が同時にスタート。両者は重なっていて、1本の針が動いているように見える。スプリットセコンド機能用のボタンを押すと、スプリット秒針のみが停止して中間タイムが読み取れる。この間もクロノグラフ秒針は動き続けるので、2本の計測用秒針が割れる(つまりスプリット)。

さらに、ボタンを押すと、スプリット秒針がクロノグラフ秒針へとジャンプして追いつき、再び一緒に動き続ける。スプリット秒針が、クロノグラフ秒針の経過時間を、メカニズムが「記憶」しているわけである。この「追いつく」動作をフランス語で「ラトラパント」と呼び、機能名や商品名によく用いられている。

スプリットセコンド・クロノグラフも、フライバック・クロノグラフと同様に製品数は非常に少ないが、最近になって、比較的近づきやすい価格のモデルも登場してきた。メカ好きの時計ファンなら、自分自身で実際に操作して、その精巧な機構をじっくり堪能したいクロノグラフだろう。

ラドー「ジ・オリジナル スプリットセコンド・クロノグラフ」。ハードメタルを使用した独特のケース・デザインで有名な同モデルに、スプリットセコンド・クロノグラフを搭載するモデルが新登場。自動巻き、ハードメタル・ケース、ケース幅41mm。

ラドー「ジ・オリジナル スプリットセコンド・クロノグラフ」。ハードメタルを使用した独特のケース・デザインで有名な同モデルに、スプリットセコンド・クロノグラフを搭載するモデルが新登場。自動巻き、ハードメタル・ケース、ケース幅41mm。


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