機械式時計はヨーロッパ中世に遡る

時計は、基本的に時刻を表示する道具である。最も一般的な現在のアナログ時計は、文字盤の上に記された目盛りと回転する針とを組み合わせて、何時何分という時刻を表している。この針を規則正しく動かしているのが、時計内部に収められた「ムーブメント」と呼ばれる装置である。こうした駆動装置には、現在、機械式とクォーツの2方式がある。

機械式ムーブメント。戦前のIWC製懐中時計より
機械式ムーブメント。戦前のIWC製懐中時計より

機械式ムーブメントの基本は、動力のゼンマイ、その伝達や運針を行う各種の歯車、そして動力の消費と歯車の回転速度を一定に保つ制御装置の脱進調速機という3つの部分から成り、すべて金属の機械部品(軸受のルビーをのぞく)で構成されている。クォーツの場合は、動力に電池、脱進調速機構に水晶振動子と電子回路を用いているのが大きな違いである。クォーツ・ムーブメントの腕時計が、初めて市販品として登場したのは、1969年のこと。機械式をはるかに上回る高い精度や扱いやすさが人気の的になり、以後20年も全盛時代が続いた。現在も生産数でいえば、機械式よりクォーツが圧倒的に多い。

ところで、機械式時計そのものは、ヨーロッパ中世末期にまで遡る。広場や教会にそびえ立つ大型の時計塔が原型である。やがて時計は、小型精密化が進み、18世紀の懐中時計で現在とほぼ同じ仕組みの機械式ムーブメントが完成する。代表的な複雑機構も200年ほど前に出揃った。機械式時計が、さらに小型で腕に着けることができる、現在のような「腕時計」へと進化したのは20世紀の初頭だった。

興味深いのは、クォーツ時計が登場するまでの約700年ちかく、機械式時計が改良に改良を重ねながら作り続けられてきたという事実。ふだん気付かないかもしれないが、機械式時計には長い歴史を積み重ねて受け継がれてきた先人たちの科学的知識や技術、創意くふうが結晶しているのである。

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