男の腕時計/スイスの老舗高級ブランド

高品質と低価格を実現するオリスの機械式(2ページ目)

機械式時計に興味はあるが、値段が高くて手が出ないと躊躇する人も少なくないはず。しかし、高品質と近づきやすい価格を実現させた魅力的なモデルを発表して人気を集めるブランドもある。オリスはその代表だ。

執筆者:菅原 茂

時計好きの声を反映したモノづくり

オリスの創業は1904年。現在まで一貫して機械式腕時計の専門メーカーとして伝統を築いてきたブランドである。現在のオリスを支えるのが、会長でCEO(経営最高責任者)のウーリック・エルゾック氏だ。

昨年末の来日の際に、その企業努力について彼にたずねると、「現在のオリスには、7万円から10万円台のベーシックなモデルと20万円から30万円の多機能モデルや限定モデルなどの二つのラインがあります。後者の比較的高い価格のラインで得られた利益を低価格ラインの商品に還元しているのです」という明快な答えが返ってきた。オリスの成功は、二つのバランスによって得られたのである。

ウーリック・エルゾック氏
オリスの現会長でCEO(経営最高責任者)のウーリック・エルゾック氏

彼は以前からよく「手頃価格の本格機械式時計を作るのは、高価な機械式時計を作るよりもずっと難しい」と語っていた。それでも、低価格ラインのコレクションを維持しているのは、「できるだけ多くの人に機械式時計の魅力を発見してもらいたい」という一貫した願いから。だからこそ、つねに「近づきやすい価格で、しかも価格以上の満足感が得られるような時計でなくてはならない」と考えてきた。

たとえば、有名なポインターデイト付きの「ビッグクラウン」の現行品の価格は10年前とほとんど変わらず、8万円前後を実現している(前ページの写真参照)。実際、ブランドを代表するこのベストセラー・モデルをきっかけにして機械式時計に入門したという者が筆者の周囲に何人もいる。

機械式時計にとって最も重要なのが、ムーブメントという時計を動かす機械装置。オリスは、大半のスイスのメーカーと同様に、ベースとなる汎用品に自社で独自の改良を加え、モデルによって複雑機能を組み合わせている。そうした改良や開発の過程でたえず品質の向上を図ってきた。以前、バーゼルでの新作発表の際に、エルゾック氏は「オリスのムーブメントは、もはや“オリジナル”と呼ぶにふさわしいレベルに達した」と自信のほどを語っていたことが思い出される。

エルゾック氏と筆者
エルゾック氏とは10年以上の旧知の仲。2006年11月、東京にて
彼にとって「改良」は、ムーブメントのみならず、デザインや機能、使い心地、価格設定などなどあらゆる面でキーワードである。そのためにまず、彼は顧客や販売代理店はもとより、雑誌の取材者などの意見に熱心に耳を傾け、「オリスのどこが良くて、どこが良くないのかを判断する」という。時計の完成度を高め、魅力のある新製品を開発するには、それが近道だと考えている。机上のマーケティングよりも、生の声が時計づくりに血を通わせることを彼はよく心得ているからだ。

毎年恒例の時計見本市「バーゼルワールド」では、スポーツ・ウォッチの充実や、限定モデルの発表が予定されている。また随時新作情報をお届けしてゆきたいと思う。

【オリスの問い合わせ先】
ユーロパッション
TEL03-5295-0411
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