クルマとしては未完成、だからこそ楽しい
重量配分は51:49(前760kg:後720kg)とされた。回生ブレーキは試験的に最大に設定され、減速時にかかるGは最大で0.3Gとなる |
立ち上がりの制御は利いていて、いきなりフルトルクで走り出すようなことはないが、じゅわっと発進したと思ったら、そのあとのトルクの立ち上がりは強烈。路面に凹凸があるような場所では、ステアリング、取られる取られる。トルクステアを注意して、って言われてたんだけど、あまりに楽しい加速フィールですっかり忘却のかなた。
もっと面白かったのが、都内じゃほとんどブレーキペダルを使わずに済む、ということ。実はこの実験車、あらゆる可能性を検証するために、最も効果的に回生ブレーキを使えるよう、減速Gを最大値に設定してあるとのこと。
アクセルペダルを完全にオフにすれば、クルマは勝手に停まり出す、というわけだ。これ、慣れたらとっても便利。そのあとフツウのクルマに乗って、ブレーキペダルを踏まにゃならんことが、どうにも不条理に思えるくらい。新しい乗り物って感じがして、ボクはこの減速Gの出方が最も気に入った。まあ、悪い路面環境でどうなってしまうのか、ちょっと心配ではあるけれど……。実験、実験!
皮肉にも、クルマとしては未完成の、バランスの悪いパッケージだからこそ、ちょっと乗っていて楽しかった。なるほど、乗り物の楽しさって、不安や不定、危険や崩れによって増長されるのだなあ。
これまでの実証実験データによると、ほとんどのユーザーが自宅や勤務先で“じっくり”充電するのだという。平均走行距離は、だいたい40km弱。日常的なEV利用という点において、BMWでは急速充電器はほとんど不要という手応えである。言い換えれば、日常公道の範囲内に一つでもあってくれればそれで安心、というわけだ。
ほら、インフラ整備が急務、なんて言わなくたって、人はちゃんと上手くやるもんですって。インフラを先に整備して物事が上手く進んだことなんて、ほとんどないんですから。
最高出力449psの4.4リッターエンジンと20psのモーターが組み合わせられたハイブリッドモデル。国内ではロングボディが1420万円で販売される。750Liに比べ最高出力が14%最大トルクが17%アップしつつ、10・15モード燃費は約40%向上している。またハイブリッドシステムによる車両の重量増は75kg |
重量27kgのバッテリーはトランクルーム内に設置されている |
特にコイツは、4.4リッター直噴ツインターボエンジンとの組み合わせ。電気のみで走ることもない。高いクルマを買う人にも、少しだけエコ精神を持ってもらいましょうよ、程度の発想である。欧州車のハイブリッド戦略は、ほとんどがこれ。ただし、BMWやメルセデス、VWグループのSUVでは、EV走行も可能なモデルが登場している。
ともあれ、選択肢が増えること。それがユーザーのベネフィットに繋がることは間違いない。