ジャガー/ジャガー

大革新のXJ、でもジャガーでしかありえない(2ページ目)

7年ぶりにモデルチェンジを果たしたジャガーのフラッグシップサルーン、XJ。旧型とは180度異なるコンセプトの新型に試乗しました。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

5m超サルーンとは思えない、その身のこなし

ジャガーXJ
最高出力385ps/最大トルク515NmのV8NAエンジンと、最高出力470ps/最大トルク575Nmと最高出力510ps/最大トルク625Nmを発生する2種類のV8スーパーチャージャーをラインナップする。ちなみに510psのスーパーチャージャーエンジンの0-100km/h加速は4.9秒

試乗車はショートホイールベース×ポートフォリオ、すなわち385psの5リッター自然吸気エンジン搭載グレードだった。

身近に見ると、想像以上にでかく感じる。実際、ショートボディだというのに全長は5.1mを超えているからその通りなのだが、この手の大型サルーンとしては異例に薄いサイドウィンドウグラフィックスによって、いっそう薄く、長く見えるのだ。要するに、今まで“見たことのないカタチ”なので、余計大きくみえるのだった。ポルシェパナメーラを初めてみたときも、その異物感に驚いたものだったが、このXJもそれに近い。

顔つきはXFとの繋がりを感じさせるもの。全体的なシルエットの雰囲気もそうだ。ただし、XFよりも挑戦的である。特にリアセクションやエンドピラーあたりが面白い。ビッグサルーンがたむろする赤坂・永田町あたりでは、大いに異彩を放っていた。

インテリアもまた、XJのみどころだ。特に、ラウンドしたダッシュボードがいい。丸形のデザインモチーフを多用している点も、ライバルたちとは違う。このクラスで、たとえば丸いエアコン吹き出し口を使うことなど、これまであまりなかった。

ジャガーというとレザーとウッドのコンビネーションイメージが強く、それは新型でもその通りなのだが、そのあしらいは全体的にしぶめ。ポルシェやマセラティのようにゴージャスさを強調しすぎないのは、こういうクルマをずっと作ってきたんだという矜持だろうか。

ジャガーXJ
XFに初めて搭載されたダイヤル式シフトセレクター(ジャガードライブセレクター)が備わる
スターターボタンを押すと、シフトダイヤルがぬっとせり上がる。XFと同じである。確かに見栄えは新しいし印象深いが、個人的には使い勝手で問題があると思っている。特に、リバースに入れる際などは心理的に多少あわてる場面も多いから、ゆうちょうに操作したくない。こういうクルマなのだから、もっと落ち着いてドライブせよ、という意味かもしれない。

ジャガーXJ
ディスプレイにメーター類を映し出すバーチャルインストゥルメンツを採用。シートはもちろんインパネやセンターコンソールなど室内の主要部位はすべてレザーが用いられている

意外や意外、乗ると速い。スーパーチャージャーなしだから、感覚的な速さはあまり期待していなかったが、けっこうな俊足ぶりだ。比較的軽くおさまった重量と、エンジンの有効性能が利いている。オートマの反応も鋭い。高速道路でのライドフィールは、多少前輪が動きたがるも文句なし。

そして。。。真骨頂はスポーティに走らせたときである。その身のこなし、とてもオーバー5mのサルーンだとは思えない。そういう走り方を勧めても仕方ないが、できるのだから大したもの。

これだけ大きく生まれ変わったというのに、ジャガーらしいと思ってしまうのは、なぜだろう。ジャガーでしかありえない、とも思う。ジャガーでしかできなかったから、かもしれない。スタイリングも、そして、このパフォーマンスも。スーパーチャージャー付きに試乗するのが、今から楽しみだ。

そうだなあ、やっぱり若い人には似合わない。ぎらぎらしたクルマをひととおり経験したカーガイが、普段着にさらりと乗りこなす。そんな景色なら、素晴らしい。
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