乗っているだけで能天気なほどに楽しいクルマ
最高出力135ps/最大トルク206Nmを発生する1.4リッターターボエンジンを搭載。最高速度は205km/hと記載される |
そんな中、500アバルトがついに登場した。このクルマの登場でアバルトビジネスはいよいよ本格化すると言っていい。フィアットにとっても、そしてイタリア車好き、クルマ好きにとっても、待ちに待った1台。フィアット500が華々しくデビューしたときから、否、その企画が生まれたときから、アバルトモデルへ発展路線は既成事実だったことだろう。
フィアットグループのテスト基地、バロッコのテストコースで始めて実車と対面したボクは、ひと目惚れよりも強烈な、曰く言い難い気分になってしまった。あまりに可愛らしいモノに出会うと、つぶしてもいいと思えるほど抱きしめたいという気分になることがある。500アバルトに乗った瞬間のボクは、それに近い気持ちだったのだ。
むちゃくちゃに乗り回したい!もはや正しいラインを走ろうとか、キレイな姿勢で駆け抜けようとか、そんなテクニカルなことはどうでもよくなって、ただアクセルペダルを踏みつけ、向かいたい方向にステアリングホイールをこねくり回し、何が何でも突っ走りたいという心の命ずるまま、それ以外のことなど一切忘れて無心に前進を求める。アンダーも、オーバーも、なーんも関係ない。
クルマなんてものは、本来、がたがた言わずに乗っているだけで楽しいもんだと、改めて思い知らされた。あーだこーだと難しいことばかりで(特に最近はね)、カチカチに固まってしまった脳味噌を一気にかきほぐす、能天気なほどに楽しいクルマ。それが500アバルトの第一印象である。
スタイリングからインテリアの造作まで、“運転してみたい”という気にさせる演出が、本当に巧いし憎い。試乗前のプレスカンファレンスで、バロッコのテストコースをプロドライバー(かテストドライバー)が駆って走る500アバルトの映像を見せてもらったが、ダンゴムシが地面からつかず離れず、時に後輪をリフトして、滑るように流れるように走る姿を見ていると、もうそのときすでに“乗りてぇ”な気分になった。
やや高めのシートポジション。ちょっと違和感がある。これはレザーシート仕様で顕著で、クロスシートの場合は幾分緩和されていた。ダッシュボード周りは、ノーマルの500とは随分と違う雰囲気だ。メーターナセル向かって左側、ブースト系と、シフトアップインジケーターが特徴。躊躇わずブーストアップのスポーツボタンを押してスタートした。クラッチペダルを含め、操作系はあくまで軽め。乗り心地も小気味よく、悪くない。これなら街でも存分に乗り倒せそうだ。
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