その響きは、非常に精緻で洗練されたものながらも、とても軽い感じで、いかにもフリクションが少ないと思わせるもの。回転の上昇も下降も、針のように鋭く、まさに今までに聞いたことのない澄んだサウンドだった。
カレラGTのエンジンサウンドを一度聴いてしまうと、フェラーリのそれが意外にザラッとしたものに思えてしまう。それほどまでにこのエンジンには、クリアな感じがある。もちろんそこには、本格的なレーシングエンジンを源とする、迫力も忘れられていない。こうしてカレラGTは我々の前にお披露目されたのだった。
かねてから噂だったカレラGTで第一の特徴といえるのが、そのボディコンストラクションである。ボディを構成するのは、カーボンの複合素材で、これによってモノコックが構築されている。ここにサスペンションやエンジンが直接組み付けられる構成となる。
会場では、実際にボディパネルを取り払ったモデルが展示されたが、剥きだしのモノコックはそれだけでも価値を感じる非常に美しい仕上がりを持っており、目にすると確かにこれなら高価なのも仕方がないと思える。まさに機能美の極み、といったものだ。しかしカレラGTのハイライトはまだある。
ミッドシップに搭載された新開発のV10エンジンは、まずNAながらも612ps/62.0kgmという出力が大きな話題となった。最近のパワーウォーズでは、600psという数字に目新しさはないが、ポルシェはNAでそれを実現した、というところに意味がある。5.7Lの排気量を持つこのV型10気筒は、もともとル・マン24時間で活躍したGT1の流れを汲む由緒正しきものでもある。しかもこのV10は、かねてから噂だっただけに、ついに登場! という感じがより強かった。
カレラGTは複合素材によって構築されたモノコックボディはもちろん、その他のパーツに関しても徹底的な軽量化が図られており、車重は1380kgと、この手のクルマとしてはとても軽量なものに仕上がった。これによって、パワーウェイトレシオも実に2.25kg/psという、まさにスーパースポーツに相応しいものとなっている。動力性能の圧倒的パフォーマンスは実際にもアナウンスされており、0-100km/h加速が3.9秒だ。
このV10エンジンは6速MTと組み合わせられるが、注目なのはクラッチに世界初のセラミック素材を用いたこと。ポルシェ・セラミック・コンポジット・クラッチ(PCCC)と呼ばれるそれは、従来のものに対して長寿命を実現したほか、クラッチディスクのサイズを大幅に小型化することに貢献した。
このV10エンジンの両脇には、レーシングカー同様のプッシュロッドタイプのサスペンションが取り付けられている。ブレーキはもちろん6ポッドキャリパーを備えた、セラミック・ブレーキシステムを採用。これらを見ているだけでも、相当に高いパフォーマンスを持っているのだろうと簡単に予測出来てしまう辺りがまさにポルシェらしい。
さて、気になる(?)値段だが、なんとこちらも超弩級の39万ユーロ(!)とのこと。まさに限られた人だけが手に入れることのできるスーパー・ポルシェ。2005年12月までに1500台が生産・販売されるというから、今から手付け金(いくらだ?)を払えば、まだ間に合うかもしれない。