組み合わせられるトランスミッションは、新開発となる6速MTとMTモード付きの5ATが用意されている。6速MTは、縦方向におけるストロークが短いタイプだが、横方向におけるストロークはそれほど短く感じない。つまりニュートラルの位置から左右に動かす時のストロークは縦方向ほどではない。しかもこの位置(ニュートラルの位置を含め、そこから左右までの横方向全て)にシフトレバーがある時の支持感があまい。一方縦へ動かす時の支持感や抵抗感はしっかりとある。ゆえに縦方向へ動かす時にはカッチリした感じがあるのだが、それ以前の段階で横に動かす時にはゆるみを感じるので、ややチグハグな印象を受ける。参考までに言うと、左ハンドルのクルマの方がシフト感が良い。これは多くの人の聞き手である右手でシフトするからという理由もあるが、やはりメイン市場がアメリカだから左ハンドル前提のシフト設定なのか?とも思えてしまう。
さらにこの6MTとエンジンの組み合わせ、というところで見ると、エンジンは前述したようにこれまでの価値観とは違う、どちらかといえば実用性すら感じるものなのに対し、6MTのフィーリングそのものは、チグハグではあるものの、カッチリを目指す方向にあるので、その組み合わせに戸惑いを覚える。というのも手元の感触は結構その気にさせる感じも生むが、つないだ先にあるエンジンの感触はあくまで一定に回っていくものだからである。
その意味ではATの方がマッチングが良いと思える。回転に特別鋭さのないエンジンのフィーリングからすれば、Dに入れっぱなしの方が雰囲気として合っているし、MTモードでシフトしても実際のMTほどの変速の早さはそこにないから、こちらの方がエンジンの性格に近いフィールだといえるのだ。
ドライブトレーンを総じて見ると、クルマ好きの心を震わせるような官能性はほとんど感じられない。ただ実際のドライブトレーンの仕事はしっかり行われている感じである。
次にハンドリングについての印象。まず一言で、洗練されている。操作に対し、実に素直に正確な動きを見せる操縦性だ。しかもその操縦性は常に高い安定性を伴っており、公道域ではかなり高い入力を行っても、姿勢が変化してニュートラルステアやオーバーステアになる、ということがない。ちなみにサーキットでも基本的には常に安定し続ける性格であり、よほど強く舵を入れたり、慣性力を存分に残さない限りは、スライドする状態にはならない。このような味付けなので、基本的にはアンダーステアを出さないことだけを注意して走ればいい。それゆえにオン・ザ・レール感は当然強い。とにかく安定を忘れることなく、操作に対して実直に反応するという感じである。
同じFMプラットホームを使うスカイラインと比べると、当然ロール/ピッチともに小さく感じ、クルマの動きが身体にフィットしている感じが高い。乗り心地もZの方が当然ハードな印象。17/18インチを問わず、路面の荒れたところを通過するときには、バネ下のバタ付きが感じられる。
このようにしてハンドリングは、極めてクリーンな印象。高い速度でも何事もなかったかのようにコーナーをクリアしていく。それだけにいちクルマ好きとしては、このハンドリングは素っ気ないものに感じてしまう。淡々と速く走ってしまうので、ドライビングにおける会話、という感じは薄い。ステアリング・フィールは優れている。手応えや重みなどは好ましく、クルマがいかに動いているのかを手のひらに伝えてくる。が、クルマはあまりにあっさり動いてしまうので、その感触を手のひらで味わう、という感じではない。あくまでセンサーのひとつとして、という感じである。そういったハンドリングおよびステアリング・フィールの融合によって、自分自身が操って走っているという感じよりは、クルマの性能の高さで走っている感じを受ける。その意味では、スポーツカーである前に、既にクルマとして存分に洗練されているという感じである。