1BOX型ミニバンの最上級クラスに位置するアルファードにハイブリッドモデルが追加された。簡単に概要を説明するならば、先に登場しているエスティマ・ハイブリッドのパワートレーンを移植したもの。もちろん、4輪完全独立制御型ABSや微細にコントロールする電子制御スタビリティコントロールも採用されている。
エスティマ・ハイブリッドから時を経た分だけ改良が加えられているが、全体的な効率向上などのブラッシュアップ施したもので、基本システムは以前と同じだ。後輪駆動の上限速度を高く設定して、4WD走行範囲を拡大したこと、駆動用ニッケル水素電池のエネルギー密度が35%向上し、同じサイズと重量で容量が増加したことが最も大きな改善点といえる。なお、エスティマ・ハイブリッドもマイナーチェンジで同様の改良が施され、現行モデル同士ではアルファード・ハイブリッドとまったく同じ内容となっている。
ただし、駆動用ニッケル水素電池はエスティマがリヤに配置するのに対し、アルファードでは積載性の観点から前席下に置いている。そのため、エスティマ・ハイブリッドは標準エンジン車よりも荷室高が上がっていたが、アルファード・ハイブリッドは標準エンジン車と同じである。
さて、ここでアルファード(エスティマ)のハイブリッド・システムのおさらいだが、先駆となったプリウスとは異なり、ベルト式無段変速機(CVT)を採用し、駆動用モーターが発電機を兼用する。駆動系は前輪がエンジン/電動、後輪が電動という4WD。駆動用モーターが前輪と後輪に個別にあり、これにより精密な電子制御コントロールも可能になっている。
プリウスのシステムと比較すると重量が重いミニバンの特性に応じてエンジンの負担比率が大きくなっているが、低速軽負荷時や後退時は電動走行を行う。トヨタ流の表現ならば正真正銘のストロング・ハイブリッドシステムである。ちなみに走行中はかならずエンジンが稼働しているシステムはマイルドハイブリッドになる。
使われているエンジンはアトキンソンサイクルを採用。これは吸気バルブの閉じるタイミングを大幅に遅らせることで、実質吸入行程を短くするというもの。これにより排気圧力に逃げるエネルギーを減少させて燃費を改善する。もっとも、そのままでは吸気量が少なくなるので、全開時のパワーもダウンしてしまう。そこで吸気バルブタイミングを可変として、低負荷時には省燃費、高負荷時には出力という具合に制御されている。
面倒くさい解説が嫌いな人は、ここまで知っていれば十分だと思うが、次項はもう少し突っ込んだ知識が欲しい人向けの解説。