果たして「紫電」はGTカーなのか?
そんな疑問を持つ人もいるだろう。改めてGTの定義を確認してみたいが、GTはグランドツーリングの略である。語源には長距離を速く走れる車という意味があり、公道走行可能なスポーツカーを指す言葉である。「紫電」が今年出場するスーパーGTの場合、ナンバーを取得したロードゴーイングカー(公道走行を許された車両)が世界のどこかで1台でも登録されていればベース車両として使う事ができる。つまり出場するということは(存在していなくても)どこかで登録されているということになる。実際、GT初年度には純・レース専用車両であるグループCカーのポルシェ962Cが公道バージョンも存在したため、GTマシンとして出場したこともある。
由良氏の考えの中では新型「紫電」のロードゴーイングカーを市販するという計画がある。もし実現すれば所有してみたい、そんな憧れのプレミアム・スポーツカーになることは間違いない。しかし、ロードゴーイングカーの発売までには高いレベルの審査基準をクリアせねばならず、相当な時間がかかると思われる。しかも、このデザインだ。昨年までGT300のチャンピオン争いをしていたASLのガライヤが結局発売されなかった前例もある。しかし、由良氏は車を心から愛し、夢を大事にしている人だ。ぜひ実現して欲しい。
新型「紫電」は今シーズン、ベルノ東海ドリーム28からGT300クラスに参戦する。メインスポンサーにはプリベ・チューリッヒ。ドライバーには高橋一穂に加えて、速さと開発能力に定評のある加藤寛規が決定している。
2日間に渡って鈴鹿サーキットで行われたシェイクダウンテストでは大きなトラブルもなく無事にテスト走行を終えることができた。ベストタイムは2分7秒台。GT300クラスのトップ争いができるタイムではないが、ドライバー2人は好印象を得たようだ。
実際に見た印象は相当大柄なボディで実に迫力満点である。真っ黒カーボン地であれだけ大きく見えるのだから、カラーリングが施されれば凄まじい迫力で存在感を大いに示してくれるに違いない。1年目はじっくりと取り組む年になるだろう。実戦とテストを通じて開発を続け、シーズン後半には優勝争いをして夢を見せて欲しいものだ。
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