ショパールの〈ミッレミリア〉、カルティエの〈ロードスター〉など、車好きな男性諸兄のハートをくすぐる腕時計はいくつもありますが、今年、また一つ「男のロマン」系ウォッチが〈バーゼル2002〉に登場しました。ヴィンテージ・カーへの憧れを熱っぽく漂わせた〈スターター〉と〈マスコット〉。これを発表したのは、意外なことに、クリスタル・ウェアで知られるフランスの《ラリック》だったのです。

ラリック社といえば、女性ならキュートなクリスタルのアクセサリーを思い起こすでしょう。美術に興味のある方なら、アール・ヌーヴォーからアール・デコ期にかけて活躍した工芸作家、ルネ・ラリックの偉業を想起することでしょう。ルネ・ラリックのデザインを受け継ぐ現在のラリック社は、事実、昨年の〈バーゼル2001〉ではベゼルにクリスタルをあしらったスウィートな腕時計を発表していました。それが今回のモデルは、全くクリスタルを使っていないハードなデザインに180度方向転換。しかもコレクションの名付け親は、ジャン・ポール・ベルモンドの息子、元F1レーサーのポール・ベルモンド。

 

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▲写真左:〈スターター 4〉
自動巻クロノグラフ/42時間パワー・リザーブ/
ステンレス・スティール/ブラック・レザー・ストラップ
¥425,000
ベゼルの形は、ラジエーター・キャップを模したもの。
2重になっているレザー・ストラップは当時の安全ベルトを、
バックルはアクセルのステップの形を表しているとか。
直径42mmで、マスキュリンな雰囲気。

▲写真右:〈スターター〉の名付け親となった、ポール・ベルモンド。
Photos: Courtesy of Lalique

もちろん、唐突に「ヴィンテージ・カー」というコンセプトが浮上したわけではありません。ルネ・ラリックは伝説的な公道レース、1906年の第1回タルガ・フローリオで優勝者に与えられるプラークを制作し、1920~30年代には、ガラスのカー・マスコットをデザインしています。当時の車は、ボンネットの前面にラジエーターの水の注ぎ口があり、注ぎ口のキャップにシンボリックな像を取り付けていました。これがカー・マスコットと呼ばれるもので、ルネ・ラリックがデザインしたガラスの小像は、当時の趣味人たちの間で大変な人気を呼んでいたのです。(日本では、愛知県のトヨタ博物館にルネ・ラリックのカー・マスコットが常設展示されています

というわけで、今回の新作〈スターター〉と〈マスコット〉は、スポーク・ホイールをデザインした文字盤、ダッシュボードを思わせるビスのモチーフやタキメーター、ラジエーター・キャップの形をしたベゼルなど、ヴィンテージ・カーへのオマージュがいっぱい。狂騒の時代と呼ばれた20世紀初頭、エンジンの熱い鼓動とオイルの匂いをこよなく愛したジェントルマンたちの雰囲気が、上手に再現されているのです。

 

 

▲写真左:〈マスコット 3〉
自動巻/ステンレス・スティール/
カーフスキン・ストラップ
¥198,000
スポーク・ホイールの模様が入った文字盤、
スピードメーターのカバーを思わせるビスのモチーフ。
ケース裏にはカー・マスコットの絵が刻印されています。

▲写真右:〈バッシャント〉
クォーツ/クリスタル/ステンレス・スティール/
エメラルド/白蝶貝文字盤/アリゲーター・ストラップ
¥230,000
ちなみにこちらは、これまでのレディス・ウォッチ。
しっとりしたサテン仕上げのクリスタルが特徴です。
バッシャントとは、バッカスを熱狂的に信奉する女たちのこと。
ルネ・ラリックにも同名の作品があります。
Photos: Courtesy of Lalique

ところで、クリスタルを全く使わない、初めてのコレクションをプロデュースしたのは、ラリック社のヴァレリー・サミュエル女史。この人はなんと、1995年にモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH)グループに買収されたジュエラー、フレッドの創業者の孫でデザイナーだった人でした。フレッドといえば、ステンレスのワイヤー・ロープを使ったスポーティな腕時計が思い出されます。

一方、ラリック社は1994年にポシェ・グループ傘下に入り、ルネ・ラリックの孫でクリスタルのデザイナーだったマリクロード・ラリックは、1996年には完全に事業から手を引いてしまいました。手工業的なファミリー・ビジネスが消え、ブランドが企業化していくこの時代ならではの二人の女性の交錯が、ラリック社の新たな冒険を高らかに告げるこの腕時計のデザインに、一瞬浮かび上がってきたような気がします。

■お問い合わせは、ラリック銀座ブティック 電話 03-3575-0453
WEBサイトは、www.lalique.co.jp

 

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