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祐真朋樹×林央子 司会:桑原茂一 音楽選曲とファッションショー(3ページ目)

GW期間中、原宿で開催された『トーク・ディクショナリー』。コム・デ・ギャルソンの音楽を担当した選曲家、桑原茂一氏が、2人のゲストを迎え、ショーと音楽の世界について語り合う。

執筆者:森田 剛

コム・デ・ギャルソン

(H)「たとえば、マーケットとか時代性とかを冷静に分析したところから、モノを 作ってゆくブランドは多いけれども、コム・デ・ギャルソンのように、誰も見たことの無いようなモノを作ることに徹底しているブランドは、パリコレでも少ないと思いま す」
(S)「そうですね。いま話のあったようなショーのディレクションも含めて、他に2つとないブランド。コピーしても仕方のない服ですね」

(R)「コム・デ・ギャルソンの創造性について、少し加えたいことがあります。川久保さんは非常にチームワークを大事にされていて、チームのメンバー個々を1人のクリエイターとして捉えていると思うんです。
パタンナーも含めて、スタッフそれぞれに テーマを与えて、その人がクリエイティブなものをフィードバックしてくれて、それをインスピレーションとして消化したものの集積が、コム・デ・ギャルソンというブランドとなっている。
それが他の多くのデザイナーだと、個人のエゴみたいなものがもっと出ているような気がして、デザイナーのエゴを周りの人間たちに伝えてその人たちが働き蜂のように して、そのエゴを実現してゆくという構図が多い。
でもコム・デ・ギャルソンの服には、 単にデザイナー1人のエゴではなく、色々な人の意思や魂みたいなものが吹き込まれていると感じます」

(K)「先ほど禅問答と言いましたが、たぶんそれは川久保さんの周りにいる誰もが 禅問答で、結果として答えを見つけるのは、最終的なジャッジはもちろん川久保さん なのだけれど、仕事を受けた人間がすごくギリギリの部分で自分と向かい合って、もうどうしようもないところまで追い込まれて、で、もっと出るんじゃないか、もっと 他にはないのかと、それが毎回続くわけですから、偉そうに言うと自分との闘いというのかな、だからいつも逃げたくなるのだけれども、逃げられないですよね。
そこまで追い込まれる仕事というのは、後にも先にもコム・デ・ギャルソンの仕事以外は無いですね。

僕はDJという仕事がまだ日本に無い時から、選曲の仕事をやっていますが、カタカナでディージェイと言うのが嫌で選曲家と名乗っていまして、川久保さんとの仕事が無ければ、そう名乗ることも無かったような気がします。
自分を楽しませる選曲をするのはもちろん、流行っている雰囲気の曲を並べて人をそれなりに楽しませるというのも、そんなに難しいことではないと思う。でもそういう、見えないものに向かって何かをやっていくというのは、いい経験だったかな、とは思いますね」

(H)「さきほど祐真さんがショーは楽しいものであってほしいと言われていましたけれど、コム・デ・ギャルソンのショーって、ストイックであまり楽しい気分にならなかったりするのでは?」
(S)「いや、わりとメンズは、楽しいショーが多いんですよ。サーカスの人たちを使ったり、サイズなんかもメチャメチャ着せちゃったり、袖なんかビローンと長くて、お腹が出ていたり、みたいな・・・
もちろんそんなのは全然気にならないほど素晴らしいわけです。帰りとか、元気になっちゃいますね」
(K)「たしかに、メンズはレディスとは全然アプローチが違っていました」
(S)「そう、たとえば『反抗』とかわりと明快なアプローチも多くて、メンズの ショーは夜に始まることが多かったので、終わった後でお酒を飲みにいって、ああ楽しかったなってショーが多いですね」
(K)「たとえばスタイリングのお仕事では、コム・デ・ギャルソンの服に対して、他にはない独特のパワーを感じることがありますか?」
(S)「そうですね、さっきも言いましたけど、あの世界をもっているものはどこにも無い。だから他のものと合わせること自体がベストなものにはならないという・・・
・・・ もう、完成されているわけです。ですから単に雑誌の企画に満足せずに、コム・デ・ギャルソンの凄さを追及してゆくような仕事にも個人的には魅力を感じますね」

(H)「私が前にいた雑誌の『花椿』というところで、アートディレクターの方が、コム・デ・ギャルソンの服をトータルコーディネートで表紙に使った時 に、普通の外人モデルさんなんですが、お腹に風船を入れて妊婦さんとして着せたんです。ショーの見せ方はそうではなかったんですが・・・
外人のファッション関係者がそれを見たときに、(何でこんなことをするのか)という言い方をしたんです。普通の モデルにきれいなスタイルで着せればいいじゃないか、という考え方で・・・
アートディレクターはそういう表面的なところとは違うところでコム・デ・ギャルソンの服を見ていたんだな、と後になって気付きました。
たとえば他の有名なデザイナーというのは、女性の身体をセクシーに見せるという考 えでデザインしている人が多いと思うんです。セクシーさのバリエイションというの は、じつはそれほど多くなくて、川久保さんの、あの身体のラインを1度消してしまうような彫刻のような服のラインは、対極にあるものだと思います」
(K)「ではコム・デ・ギャルソンのどこが、パリのショーの長い歴史のなかで特別 なのか、その辺についてうかがえませんか」
(H)「やはり、セクシーさの賛美を単純にしないところ、だと思います。セクシーさを強調する、女性の身体をナイスボディの方向できれいに見せるデザイナーが現れ ると、アライアもそうでしたが、すぐに評判が高くなるんです」
(S)「別の意味で、僕の周りでコム・デ・ギャルソンを着ている女の子に、ショーで見るストイックな雰囲気とはまた違って、いいなと思う時がありますよ。たとえば胸もとをはだけていなくてもセクシーだと感じさせるような」
(K)「内面が重要というか、とても品があるんですよね」

(H)「女性が、こういう風に魅力的でいたい。と思う気持ちはそれぞれ異なってい ると思うんです。だからセクシーでありたいという人もいれば、もっと微妙なところ で魅力的な女性でありたいと思う人もいろいろとあると思うのですが、ファッション ショーでモデルが着る服というのは、そういう気持ちの幅に比べると、なんて種類が少ないのだろう、と思うんです」
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