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絵の具をつくるワークショップ

アーティストによる絵の具づくりのワークショップを取材しました。絵の具の色はもともと物なんだという体験。さまざまな知覚体験をとおして、身近な環境を考えてみませんか。

松本 英恵

執筆者:松本 英恵

カラーコーディネートガイド

ファッションにおける色は、シルエットや素材、ユーザーの嗜好や流行など、さまざまな要素を客観的に判断して選択されます。しかし、アートにおける色は、もっと主観的に用いられるようです。今回は、いつもとは趣を変えて、国内外で活躍されている美術家・片山雅史さんによる、絵の具づくりのワークショップをご紹介します!


CONTENTS
Page1:物としての色を体験するワークショップ
Page2:絵の具づくりのプロセスと成果

物としての色を体験するワークショップ

絵の具づくりを体験するワークショップ。色には、視覚情報だけでなく、様々な知覚情報が介在しています。
絵の具づくりを体験するワークショップ。色をつくる過程には、視覚情報だけでなく、様々な知覚情報が介在しています。

松本:絵の具づくりのワークショップを始められたきっかけや目的をお話いただけますか?

片山さん:このワークショップをしようと思ったのには3つの考えがあります。いわゆる古典技法を学ぶのではなく「現代美術の表現講座」として行いました。

手作業で絵の具を作ること、これは「絵の具の色」を単なる「記号としての色」として接するのではなくもともと物だったということを体験してもらいたいと思ったからです。自分で土や鉱石を探し、時間をかけて細かくし、それに溶剤を混ぜる作業。この時間の中には視覚情報としての色だけではなく、様々な知覚体験が介在している。そこにある「絵の具の色」はもともと物なんだということですね。

現在画材店で購入する「チューブ入り絵の具」はいわゆる工業製品でほとんどがケミカルなものですが、そうではなく自分の身の回りの自然環境の中にものづくりの素材があるという発見。身近なところで環境についても考えてみる機会、消費社会について考えてみようということ。

そして絵を視覚イメージから入るのではなく描く素材からこだわって考えてみようということです。

これらにすべて共通するのは現代の都市型消費社会、視覚優先の情報社会について考えること、そして私達が通常接する美術の見方ではない切り口を体験し発見することです。

この絵の具の講座のほかに「身近にある雑草から紙を創る」というワークショップも行いました。
美術を専門的領域だけではなく自然科学や社会学といった複数の領域を横断して様々な角度から現代についても考える機会があればと思っています。これらの講座は土や植物の専門の先生と一緒に行われました。

記号としての色とは?

松本:「記号としての色」について、もう少し詳しくお話いただけないでしょうか?

片山さん:絵を描く際に絵の具の色を選ぶとき、色はもともと物であったということを考えて選ぶ人はいません。たとえばレモンを描く時、黄色という記号として色を選びます。レモンににせて黄色という色を探すわけです。チューブ入り絵の具が出来る以前は、画家は顔料と亜麻仁油、鉱石などと向き合っていたはずです。あたりまえのことかもしれませんが色も本来様々な物から出来ているということです。

西洋ではおよそ150年前にチューブ入り絵の具が出来、画家は手軽に絵の具の色を扱えるようになり、それ以降、絵画表現はそのイメージの広がりに大きな変遷を遂げるわけです。そのように便利になった側面で切り捨てられているたくさんの細部があるわけです。本来自然界にある色は無限ですが、チューブ入り絵の具の色数には限りがあります。そして記号化された情報は多くの人とコミュニケーションするのには都合がよいのですがそのものを伝えられているとは限りませんよね。


次のページで、絵の具づくりのプロセスを公開します!

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