フセイン・チャラヤン《アフターアワーズ》コレクション2000-01秋冬 Hussein Chalayan, Afterwords collection(autumn/winter 2000) Photography Chris Moore |
ファッションと建築は、用途やスケール、素材が異なることから、これまでほとんど同じ俎上で語られることはありませんでした。しかし、1980年代以降、両者は急速に接近し、お互いを刺激しあっているように見受けられます。コンピューターをはじめとする様々な技術の革新が、自由な造形を可能とし、表面と構造の関係に変化をもたらしました。ファッション・デザイナーたちは、布を用いて、構築的で複雑な衣服を作り始め、また建築の分野では、仕立ての技術に通じる、より複雑なフォルムを生み出しています。
国立新美術館で開催中の「スキン+ボーンズ 1980年代以降の建築とファッション」展は、現代のファッションと建築の共通項を探る展覧会になっています。
今回は、わたしたちの生活に身近なファッションと建築を、少し違った視点でご紹介します。
CONTENTS
Page1:フセイン・チャラヤン…シェルターとアイデンティティー
Page2:畳む、ドレープを作る、プリントする…構成の技法
フセイン・チャラヤン…シェルターとアイデンティティー
フセイン・チャラヤン《アフターアワーズ》コレクション2000-01秋冬 Hussein Chalayan, Afterwords collection(autumn/winter 2000) Photography Chris Moore |
太古の昔から、ファッションと建築は、人類の誕生以来、人間の身体を守るシェルターとしての本質を共有しています。また両者は、社会的・個人的あるいは文化的なアイデンティティの表出としての役割を担ってきました。
ロンドンに拠点を置くファッション・デザイナー、フセイン・チャラヤンは、1990年代にコンセプチュアルな傾向をもつ作品で、広く知られるようになりました。
パリ・プレタポルテ・コレクションではじめて披露された《アフターワーズ》コレクションで、チャラヤンは、トルコ系キプロス人としての個人的アイデンティティに関する問題に取り組みました。
シンプルな白の、漠然とした室内の舞台装置をデザインし、そこには、4脚の椅子と1台の丸いコーヒーテーブルが舞台のほぼ中央に配置されていました。
ショーはシンプルなスリップを着た4人のモデルが、ブルガリアの女性合唱団が唄う中、舞台に現れるという短いパフォーマンスをもってそのクライマックスを迎えます。
個々のモデルが椅子に近づき、そのカバーを取ると、カバーがドレスに様変わりします。モデルがドレスを着た後に椅子を折り畳むと、椅子はキャリングケースに変わります。
最後のモデルが入場してきて、コーヒーテーブルの中央部から丸い部品を取り外し、そうしてできた開口部に足を踏み入れて一番内側の輪を腰に取り付けると、テーブルはいくつもの同心円がゆったり広がるスカートへと変容します。
最後に5人のモデルは退場し、空っぽの部屋が残されます。
次のページでは、ファッションの構成の技法を取り入れた、建築をご紹介します!