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1980年代以降の建築とファッション(3ページ目)

国立新美術館にて開催中の「スキン+ボーンズ―1980年代以降の建築とファッション」展。創造性の高い建築家やデザイナーの作品を概念、形態、構成、技法等を切り口として、建築とファッションの共通性を検証します。

遠藤 友香

執筆者:遠藤 友香

レディースファッションガイド


共通の概念


Skin + Bones: Parallel Practices in Fashion and Architectureフセイン・チャラヤン《アフターワーズ》コレクション(2000年秋冬)
Hussein Chalayan, Afterwords collection (Fall/Winter 2000)
Photo c Chris Moore, Courtesy of Hussein Chalayan
Collection Musee d'Art Moderne Grand-Duc Jean, MUDAM, Luxembourg

Skin + Bones: Parallel Practices in Fashion and Architecture(左)ヨーリー・テン ドスキンで縁取り下フード付ケープ 1982-83年秋冬 Hooded Cape with Doeskin Piping from Collection Autumn/ Winter, 1982-83 By Yeohlee Teng, YEOHLEE(右)ヴィクター&ロルフ 9枚目のドレス 《ロシアン・ドール》オートクチュールコレクション 1999-2000年 Collection Groninger Museum Photo: Peter Tahl
Skin + Bones: Parallel Practices in Fashion and Architecture
フランク・ゲーリー《ウォルト・ディズニー・コンサートホール》(アメリカ カリフォルニア州ロサンゼルス)2003年 Untitled No. 1, 2003, Frank Gehry Walt Disney Concert Hall, Los Angeles, California, 2003 Photo Todd Eberle


この展覧会の特筆すべきは、その独自の切り口による考察方法。まず、展覧会の入り口を抜けて、会場内に一歩足を踏み入れると広がるセクションが「共通の概念」。この「共通の概念」は3つの項目―「アイデンティティ」「シェルター」「創造的なプロセス」から構成されています。

「アイデンティティ」の項目に展示され、まず最初に目を奪われるのが「フセイン・チャラヤン《アフターワーズ》コレクション(2000年秋冬)」。


4脚の椅子と1台の丸いコーヒーテーブルが舞台のほぼ真ん中に置かれ、そこにシンプルなドレスを着たモデル4人が登場。個々のモデルが椅子に近づき、カバーをはがし、それを着用するとドレスに様変わり。そして、そのモデルたちが椅子を畳むと、その椅子がキャリー・バッグに変化。最後に1人のモデルが登場し、コーヒーテーブルを着用すると、幾つかの円形から構成されるスカートに。そして、最終的には空虚な部屋のみが残されるコレクション。

このショーにおいて、チャラヤンはロンドンに拠点を置くトルコ系キプロス人としてのアイデンティティと、1990年代のバルカン紛争における難民といった自身の帰属意識の問題を表現したのです。つまり、服を担いで自らの故郷を後にし、ファッションデザイナーとして他の場所で生活をする自身を示唆したのです。アイデンティティへの間接的な表現方法は、ファッションデザイナーというよりは、むしろアーティストといった方が適切なのかもしれません。

その他、ヴィクター&ロルフの《ロシアン・ドール》オートクチュールコレクション(1999-2000年秋冬)では、まるでロシア人形のように、衣服を層状に重ねていくことによって、シェルターの概念を見出したり、フランク・ゲーリーの《ウォルト・ディズニー・コンサートホール》では、船の帆などをイメージさせる形状が流動的で複雑な建物の、当初の発想から創造過程までのプロセスを見ることができたりと、平面的な素材を3Dの構造形態へと作り上げていく工程を垣間見ることができます。

形態の生成


Skin + Bones: Parallel Practices in Fashion and Architecture
プレストン・スコット・コーエン《テル・アヴィヴ美術館》(イスラエル、テル・アヴィヴ)2004-08年 Courtesy Preston Scott Cohen


「形態の生成」は、「幾何学」「ヴォリュームの構成」から構成されています。幾何学的なフォルムは、材質、構造の関係から、建築にとっては根本的な要素として存在してきました。そして、身体という曲線を包み込むファッションにおいては、直線的なフォルムは基本的な形ではありませんでしたが、幾何学的な着想からデザインを行ったファッション・デザイナーがいるのです。

これら建築とファッション、両者における近年の関係性を、プレストン・スコット・コーエン《テル・アヴィヴ美術館》(2004-08年)や、イザベル・トレド《パッキング・ドレス》(1988年春夏)などから考察していくセクションです。

Skin + Bones: Parallel Practices in Fashion and Architecture(左)伊東豊雄+アンドレア・ブランジ《ゲント市文化フォーラム コンペティション応募案》(ベルギー、ゲント)2004年 Photo c Hisao Suzuki(右)foa(フォーリン・オフィス・アーキテクツ)《横浜大さん橋国際客船ターミナル》(横浜) 1995-2002年 Yokohama International Port Terminal, Yokohama, Japan By FOA Photo © Satoru Mishimaそして「幾何学」とは逆に、複雑かつ緻密でヴォリュームのあるフォルムは、これまではファッション分野のみで実現できたことでした。例えば、ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン《テクノ・クチュールあるいはソワレ・コレクション》(2000-01秋冬)などがその典型として考えられます。

しかし、先にも触れたように、近年の技術革新によって、ファッションのみならず建築分野においても、ヴォリューム感のある造形作りが可能となりました。伊東豊雄+アンドレア・ブランジ《ゲント市文化フォーラム コンペティション応募案》を見れば、それは一目瞭然でしょう。


次のページでは、「スキン+ボーンズ」展を技法およびの構成の視点から見ていきましょう。
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