最初にモーツァルトの楽曲と学習効果の関係が発表されたのは1993年、 米ウィスコンシン大のフランシス・H・ラウシャー博士らのグループでした。
学生にモーツァルトのソナタ曲を10分間聴かせたあとに行った空間知能テストでは、 抽象的な思考能力が高まり、知能指数(IQ)が上昇したと報告したのです。
これ以後、クラシック音楽は教育効果もあると急速に広まりを見せ、 アメリカではクラシック音楽のCDを無料で妊婦や新生児を持つ家庭に配ったり、 公立の保育園で週1回クラシック音楽を流すことを義務づける州も出てきました。
また、アメリカの一部レコード店では モーツァルトのCD・レコードが売り切れになったという話があるほど モーツァルト効果は注目されたのです。
しかし99年から、この説に反論する声が出始めます。
モーツァルト音楽と脳の発達は無関係だと発表したのは ハーバード大学のシャブリ博士らのグループ。
州立アパラチア大(ノースカロライナ州)の研究グループによる実験でも 「幼児の脳の発達に効果は見られなかった。」という結果を発表しています。
発表によって、モーツァルト効果を実践してきた父母、 教育関係者は戸惑うことになりました。
フランスの耳鼻咽喉科医であり、ドクター・モーツァルトという異名を持つ アルフレッド・トマティス博士によると 「モーツァルトの音楽は民族を超えて世界中の人々に受け入れられる音楽であり、 自律神経を覚醒させ、創造性を引き出し、空間の認識力を高める効果がある。」といいます。
彼は聴音障害、聴覚障害・発声に関しての研究で世界的な権威でもあり、 音楽の持つ力を生かしたトマティスセラピーという療法の中でもモーツァルトを使用しています。
モーツァルトに関する著書もある彼の理論によると、 モーツァルトの音楽が直接知能指数の上昇に結び付かないとしても 創造性や空間認識力を高めるためには有効だということになります。
またここ数年、日本でも話題になっているミュージックセラピーの世界では、 モーツァルトやバッハの楽曲には癒しや精神安定の効果があると言われています。
現時点では幼児期の脳に関してはまだまだ分かっていないことも多く、 知能指数が上昇するか否かはどの研究報告が絶対だとは言えないようです。
ただ、幼児にモーツァルトを聴かせることで情緒の安定や創造性を高めるという点に関しては、 まだまだ解明されていない効果もたくさんあるのではないでしょうか。今後の研究に注目です。
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