昨年初めてバスク地方を旅し、たくさんの美味しいものに出会い、すっかりどっぷり魅了されてしまったのですが、数々のバスク料理に欠かせない代表的調味料といえば、まず、Piment d'Espelette(ピマン・デスペレット、エスペレット産の唐辛子)です。これ無しに、バスクは語れません。
一番右端がパウダー状のもの。ジュレ、マスタードもある。
その名の通りエスペレットという村が、この農作物の産地。実(み)は、唐辛子に比べるともっと肉厚で、大きさはパプリカと同じくらいか、それ以上のかなり大きなものもあります。パプリカよりも細長く、いわゆる唐辛子をぷっくりさせて巨大化させたような感じ。色もかなり濃い目の赤です。バスク地方では、このエスペレット唐辛子がたくさん束になって、日本でいう干し柿のごとく、天井からずらりとぶら下って乾燥されている姿をあちこちで見ることができます。
日本の唐辛子を想像すると、辛いのかなー、と思ってしまいますが、実際はピリッとするやや優しめの辛みの中に、奥からふくよかな甘みがじわっと湧いてきて、とても奥行きある味わいです。辛いものが苦手な人でも大丈夫かと思います。実そのままのかたちで干したものや、使いやすいよう粉末にしたものなどが、市場や食料品店で売られています。
まるで魔法の粉のように、肉でも魚介でも野菜でも、とにかくこのエスペレット粉をささっと振りかければ、たちまち美味しいバスク料理になってしまいます。いや、ほんとに。なんと便利な調味料であることか。この地方の料理には、なんでもとりあえずエスペレットが入っているようで、しまいにはチョコレートにも使われていました。キワモノ菓子と思いきや、甘さの中にピリッとした辛さが良いアクセントになっていて、なかなかイケる、お酒にも合いそうな味です。
写真は、ビアリッツにあるMaison Arosteguy(メゾン・アロステギー)という、老舗の食材店で買い求めた小瓶たち。エスペレットのパウダーと、ジュレになったもの(チーズやお肉にかけるとウマイ)、マスタードに混ぜたものの3種。かの地で食べたプーレ・バスケーズ(バスク風鶏の煮込み)を再現したいがため、何度も作っては自己満足し、既にパウダーは半分くらいなくなってしまいました。もっと大瓶で買うべきだったと、本気で後悔しています。
Maison Arosteguy
http://www.arosteguy.com/
※日本では、新宿伊勢丹のB1Fで同じメーカーのものを販売しているのを見かけました。