逆転敗訴判決に驚き、呆れ……
ガイドも、この日は東京高等裁判所に行き、法廷で傍聴していました。傍聴希望者が多く、抽選になるほど関心を集めていた裁判です。横浜地裁でほぼ勝訴した後、大阪の大東市では同じような裁判で最高裁の判決が下り、保護者側が勝訴し、確定しています。少なくとも、この最高裁の判決を否定しないような判決が出て欲しいと願っていたのですが、結果は敗訴でした。裁判長が主文を読み上げた瞬間、法廷内からは、傍聴者たちの低い唸り声がもれました。何より、保護者たちが怒っているのは、この裁判に対する高等裁判所の態度です。実は高等裁判所に上告してから、途中で一度裁判官が替わり、その後、約1年半に渡り、止まったままになっていました。さらに結審してからこの日の判決まで半年以上も「放置」されたまま。
「原告」となっている子どもたちは、どんどん卒園していきます。子どもが卒園してしまえば「該当者」ではなくなってしまうため、訴訟は続けられません。最後の子どもが卒園するまで、あと2か月しか残されていないこの時期になってようやく判決が出たのです。
裁判員制度の開始に向け、迅速な裁判が進められている時代です。昨年起きた事件の判決がもう出ていたりする時代に、この空白期間は異常。はっきり言って、子どもたちの卒園を狙っての引き延ばしではないか…?そう勘繰られてもいたのではないか…?と疑われても仕方ないのではないでしょうか。
また、判決文の内容についても怒り心頭。熟読すると「保育園のことで住民訴訟を起こすな」と言っているようなもの。私たち保護者は、わが子が正当な保育を受ける権利を奪われた時に、訴える場もない、ということなのでしょうか? 司法に守られているはずの国で、ありえない言いぐさだと思います。
判決文を読めば読むほど、子育てについて、子どもの成長や育ちについて、そして、保育園が親の生活をどれだけ支えているかについても全く知らない人が書いているな、という印象をぬぐえません。担当の弁護士は「究極のKY判決」と断じていました。
保護者は上告を決意!
すべての在園児が卒園するまで、残された時間はあと2か月。それでも、保護者たちは怒りのあまり最高裁への上告を決意しました。子どものこと、保育のことを何も知らない、知ろうともしない裁判官に断じられたまま、終わることが許せなかったのでしょう。裁判の後、保護者からは、民営化の後に園での子どもたちのケガの数が圧倒的に増えたことが報告されています。比較的「いい」と言われる社会福祉法人が引き受けて、落ち着いてきている園でもそうなのです。子どもを安全に保育するためには、保育者たちの力量が必要。それには経験や教育がなければなりません。
公立の保育園は、その園に通っている子どもだけではなく、その近隣地域すべての「子育て力」をバックアップする力になっていることを忘れてはならないのです。
「格差」がひどくなったことで、小泉改革の揺り戻しが少しずつ来ている今こそ、もう一度、公立保育園を民営化していいの?という原点に立ち返る時期になっているのではないでしょうか。