事件の裏にある政治的背景
遅配の原因は、単純に現場や経営陣のシステム統合対応が不十分だったことだけではありません。その裏には、ここまでに至った政治的な背景が存在しています。まず、1年の中でも宅配便が最も忙しいはずの7月に統合を強行した点について。民主党政権は、7月1日にどうしても統合を行いたかった理由があります。1つには、参院選で敗北してしまうと、民主党が進めようとしている郵政再改革が、その後思うように行かなくなる可能性があります。そのため、参院選前にできることはやっておこうという狙いがあったと思われます。
もう1つは、参院選前の実績作りの意味もありました。しかし、今回のような大規模なトラブルが起こり、かえってイメージが悪くなってしまったのではないでしょうか。
トップを元官僚にすげ替え
2006年に日本郵政株式会社が正式に発足し、初代社長についたのは、三井住友銀行の元頭取・西川善文氏でした。しかし、民主党は政権奪取前から郵政民営化には反対。そのため政権についた後は、民営化に逆行する再改革法案を提出。2009年には、日本郵政が保有する宿泊施設「かんぽの宿」売却に関して、「国民の財産を不当に安く売ろうとした」として、民主党は特別背任未遂罪で東京地検に西川社長を告発しています。政権奪取後は民主党がさらに西川社長に対する圧力を強め、2009年10月にはとうとう辞任に。
その後、民主党が日本郵政社長として立てたのは、元大蔵事務次官の斎藤次郎氏でした。郵便事業を行う日本郵便の社長には、総務官僚出身の鍋倉眞一氏を置きました。このように、民主党は小泉政権が進めてきた郵政民営化路線とは異なる、トップを民間企業出身者から官僚出身者に変えるまでを実行。
もちろん、西川氏が社長だったとしても、今回のような遅配が起こらなかったと断言することはできません。しかし、このドタバタ劇が混乱の遠因のひとつになっているのは否定できないのではないでしょうか。