こんにちは、保畑です。
前回に引き続き「IT御三家を斬る」というテーマで、今回は「ソフトバンク」について綴りたいと思います。
このコラムを読んでいて、株に親しんでいらっしゃる方はいまさらソフトバンクを語る必要もないでしょう。しかしながら、一般的には意外に知名度は高くないようです。昨年、ダイエーからプロ野球チームのホークスを買収しソフトバンクホークスを持ったことによって、一般的な知名度の上昇中というところでしょうか。
私も含めて、様々なところで「楽天」や「ライブドア」と比較されていますが、ソフトバンクと他の2社の実力差は明らかです。ソフトバンクは、すでに業界で確固たる地位を築き、もはやインターネット業界以外の分野でも業界を主導する企業です。CEOはご存知の孫正義さん。「IT業界の風雲児」とまで言われた人物です。
孫正義ってどんな人?
1958年生まれ、佐賀県鳥栖市出身で、在日朝鮮人2世の次男です。もちろん帰化されているので日本人でいらっしゃいます。
孫さんって昔からやっぱり凄い人で、松下幸之助が最初に豆電球を発明して資金を作り事業を起こしたように、孫さんはアメリカ留学中に音声付き翻訳機を考案、その特許を所得した後、特許を売って会社を興したんです。大学在学中ですよ。ちなみに卒業した大学は名門・カリフォルニア大学バークレー校です。
ソフトバンクってどんな会社?
では、そもそもソフトバンクってどんな会社かご存知ですか?最初からこんなに凄い会社だったわけではもちろんありません。設立は1981年と意外と古く、最初はパソコンソフト卸会社、日本ソフトバンクとして設立されました。 翌年はパソコン関連出版業(現ソフトバンクパブリッシング)にも業務拡大。 当時から、ソフトバンクのパソコンソフト卸業での発展は目覚しく、パソコンソフト卸シェアの8割近くを占めていたと言われるほどでした。
1990年に株式会社ソフトバンクに社名を変更。1994年に店頭公開をします。ちょうど、このころからソフトバンクの現在の姿であるベンチャー投資的な事業が開始されます。つまり、店頭公開し、その資金を元にM&AやIT関連企業への投資などをはじめたのです。
1996年に、米国Yahoo!社に多額の出資をし、合弁で、Yahoo! JAPANを設立。この投資で随分の資金を手に入れたようです。その後、数々の買収を経験していますが、最近では、前述したように福岡ダイエーホークスを200億円(ダイエーの持つ球団株式98%を50億円、コロニー・キャピタルが持つ興行権を150億円)で買収し、ソフトバンク・ホークスが誕生しました。
実は失敗だらけのソフトバンクの企業買収
ソフトバンクのM&Aやベンチャー投資は、Yahoo!JAPANの設立やネット証券大手のE*トレード証券など成功も多いのですが、実は失敗した例も結構あるんです。じっくり思い浮かべてみてください。そういえば、あの案件も、この案件もソフトバンクだったなって思い出しますから。
まず、1995年アメリカのジフ・デービス社に投資を行います。ジフ・デービス社といっても皆さん馴染みがないと思いますが、IT関連のニュースを流している「ZDネット」といえば、分かる人も多いんではないでしょうか。アメリカ最大のパソコン雑誌出版社なのですが、収益が上がらず失敗に終わります。
また、同年マイクロソフトと組んで、ゲームバンクという会社を設立したのですが、それも全くといっていいほど収益が上がらず98年にマイクロソフトから資金を抜かれて失敗。
まだまだあります。
1999年、我々金融業界にいる人間にとってはとてもショッキングなニュースだったのですが、米証券業協会(NASDAQ)と提携し、ナスダック・ジャパンを設立すると発表しました。翌2000年、計画通りナスダック・ジャパンは誕生したのですが、時のITバブルの崩壊により市場自体が大きなダメージを受け、2002年に撤退してしまいます。
これも、1999年。今でも現存する事業なのですが、東京電力とマイクロソフトと合弁で無線による高速インターネット接続サービスの合弁会社スピードネットを設立。しかし、2003年に東京電力に営業譲渡し清算手続き。
破綻したあおぞら銀行(旧日本債券信用銀行・日債銀)に最低3年保有する事を条件に筆頭株主として出資。しかしながら、わずか2年半で米国の投資ファンドに売却。
時代の風雲児も「一夜にしてならず」と言ったところでしょうか・・・。