遺産分割協議書に署名・押印(ハンコ)を行う
複数の相続人がいる相続のケースにおいて、遺言書がない場合(遺言書がある場合でも、全相続人等の同意があれば遺言書の内容と異なる遺産分割をすることも可能)には、遺産分割協議によって、各相続人間の相続分を決定することとなります。一般的には、法定相続分をベースに、遺産分割協議を行い、お互いの主張を調整して、最終的に各人の相続分を決定することが多いと思います。そして、その協議がまとまった証として、遺産分割協議書を作成し、全相続人が協議内容に異議がないことを証明するために、その遺産分割協議書に署名・押印(ハンコ)を行います。実は、この署名・押印されていることが非常に重要となります。凍結されていた銀行預金の引き出しや不動産名義の変更登記などの相続手続きには、この署名・押印された遺産分割協議書が重要となります。
したがって、押印は実印で行われ、印鑑証明書も添付します。
すべて一人で相続することも!
例えば、うちは本家だから長男に実家財産を引き継がせたいと思っていても、他の相続人の納得を得られなかったら、つまり、すべて長男が遺産を相続する内容の遺産分割協議書に署名・押印してもらえなかったら、長男に実家を引き継がせることが難しくなります。逆に、遺産分割協議書に署名・押印してもらえれば、引き継がせることも可能となります。ただじゃハンコを押してもらえない!?
上記の例の場合のように、長男に実家財産を引き継がせるために、つまり、遺産分割協議書へ押印してもらうために、いくらかの金銭を支払うことが行われます。これが通常ハンコ代と言われています。もちろん、他の相続人に納得したもらった上で押印してもらうことが前提となります。結局ハンコ代とは!
結局ハンコ代とは、法定相続分とは異なる遺産分割を認めてもらうために、他の相続人に支払う金銭であるとも言えます。こんなケースも!
相続人は妻である私(配偶者)だけだと思っていたら、夫には前妻との間に子Aがいたことが判明!当然に子Aと面識はないのですが、子Aも相続人のため、遺産分割協議が必要となってしまうというケースもあります。このような場合でも、ハンコ代を利用することが行われています。ハンコ代の相場は?数万円・数十万円~遺留分や法定相続分までの間
では、ハンコ代に相場はあるのでしょうか。実は、相場はないと思った方が良いです。なぜなら、遺産総額は人それぞれであり、また、法定相続分も人それぞれです。すると、納得できるハンコ代も人それぞれになってしまうからです。遺産総額が1億円あった場合でも10万円でよいと思う人もいれば、5,000万円ではないとだめという人もいます。ただ、一応の目安としては、数万円・数十万円~遺留分や法定相続分までの間で、協議が行われるのが一般的です。(遺留分や法定相続分になると、もはや、ハンコ代ではなく、通常の遺産分割協議となってしまいます。)
最近では、ハンコ代の協議には応じず、通常の遺産分割協議を要求するケースも増えています。それでも合意がとれず、「争続」に発展するケースも少なくありません。
代償分割という手法
実は、ハンコ代は、その法的根拠が非常に重要となります。通常の場合、ある人から別の人に金銭を支払うと贈与の問題が発生します。相続に伴うハンコ代も例外ではありません。
そこで、一般的には、遺産分割協議書の中に、ハンコ代(一般的にハンコ代という表現は致しません)を支払う旨を記載しておくことにより、贈与ではなく相続における金銭の支払いであるということにします。代償分割という方法を用いるケースが多いです。
税務上の注意点
代償分割を行うと、贈与税は課税されませんが、相続税が課税されてしまいます。そこで、一般的には、相続税分も含めた金額にて、代償分割が行われるケースが多いです。なお、代償分割を行うために、土地建物等を譲渡して資金を捻出する場合には、譲渡所得が発生するケースもありますので注意が必要です。
いずれにしても、各相続人間において争いがなく、円満な相続とするために、お互いの立場も尊重しながら、納得できる遺産分割を目指したいものです。
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