アレルギー/黄砂アレルギー

黄砂が運ぶ有害物質による健康被害リスク・効果的な対策法は?

【医師が解説】黄砂は3~5月に日本国内でも増え、健康被害が心配されます。大気汚染物質は肌荒れやアトピーの悪化、喘息の原因にもなる大気汚染物質を含んだ黄砂に対して、効果的な対策法をご紹介します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

かすんだ大気の街

工業地帯や交通量の多い場所の大気には様々な物質が含まれています。黄砂の被害とは? ※画像はイメージ


花粉が飛ぶ季節になると、日本国内でも問題になる「黄砂」。黄砂とは何か、どのような対策が効果的なのかを解説します。
 

黄砂とは……3~5月に強くなる偏西風で運ばれてくる中国大陸の砂

黄砂とは、中国大陸の乾燥地帯や黄土地帯の多量の黄色い砂塵が、強風によって吹き上げられ、上空の偏西風で運ばれ、日本で降下する現象のことです。偏西風は特に3~5月に強くなるため、日本ではこの時期に黄砂が多く観察され、しばしば問題になっています。

黄砂は自然現象の一つでもありますが、森林伐採や土地の砂漠化が広がることで、よりひどくなることから、環境問題として考えられている面もあります。

黄砂の量は、中国の天候に左右され、乾燥地帯や黄土地帯に雨が降れば、その後の量は一時的に減ります。しかし近年、中国で放牧や耕作地などの開発が進んで乾燥地帯が増加していることから、黄砂の量は増加していると考えられています。
 

黄砂の有害成分とは? ただの砂ではないという問題点・健康被害のリスク

特に黄砂で問題になるのは、黄砂がただの砂ではなく、大気汚染物質が付着した状態で飛んでくる点です。

過去の日本では、経済発展に伴う「公害病」が深刻な問題になったことがあります。社会でも習う「四大公害病」の中の一つに「四日市ぜんそく」がありますが、これは石油コンビナートなどの大気汚染物質によって喘息が引き起こされてしまった、大規模な公害です。ガソリンや石油燃焼で発生する二酸化窒素、二酸化硫黄は、気道を過敏にします。ディーゼル粒子も喘息の悪化因子です。喘息を予防するためにも、環境を守るのは重要なことなのです。

日本ではかつて「公害対策基本法」が作られ、現在ではそれに代わって「環境基本法」によって、環境が保全されています。しかし、こういった大気汚染物質を乗せた黄砂などは、国内でいくら規制しても、風に乗って飛んできますし、今年も日本に降下しています。

現在の中国は経済発展が著しい状況ですので、今後は電気自動車などの普及によって、現在よりも大気汚染が改善される可能性もあります。環境に起因する健康被害の問題は、国内の対策だけで済む問題ではありませんので、今後もグローバルな協調と対策が大切になってきます。
 

黄砂による健康被害を防ぐ効果的な対策法

飛んでくる黄砂の量を直接減らすことはできませんので、まずは自分の周りで黄砂による健康被害を防ぐ対策を取ることが大切です。

最も簡単にできる対策法は、黄砂をなるべく吸い込まないためにマスクを着用することですが、黄砂の大きさは0.5~5μmで、スギ花粉(20μm)よりもさらに小さいため、かなり気密性の高いマスクを選ぶ必要があります。黄砂にはアルカリ性の大気汚染物質がついていることがあるため、衣服や肌につくことで、肌荒れにつながったり、アトピーが悪化したりするケースもあります。

個人でできることとして、以下のポイントを押さえるのがよいでしょう。
  • 花粉飛散情報と同じく「黄砂情報」に注意する。黄砂の多い日には急ぎではない外出を避けたり、洗濯物を屋外で出さないようにするなどの工夫をする
  • 外出時には、眼鏡とマスクをする。特にマスクは気密性の高いものを選ぶ
  • 黄砂の多い日は、窓を開けないようにする
  • 屋内に入ってくる黄砂は掃除機で除く
  • 家に入るときには、衣服を掃ってから入る
  • 屋内では、場合によっては空気清浄機を使用する
  • 洗顔、手洗いをする
これらはどれも、花粉症対策と似た方法です。スギ花粉やヒノキ花粉が飛ばなくなってからも、しばらくは花粉症対策を続けておけば、黄砂対策になるかもしれません。無理なくできる方法を、うまく取り入れていってください。
 
 
豆知識
環境基本法:平成5年(1993年)に制定された。この法律以前は、公害対策に公害対策基本法、環境対策に自然環境保全法で行っていた。環境問題に広く対応するために、制定された。 公害対策基本法は廃止になっている。
 
■参考記事
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