世界遺産/アジアの世界遺産

モヘンジョダロ/パキスタン(5ページ目)

下水道を完備し、水洗トイレや浴室さえ備えた古代都市の清潔ぶりは19世紀欧州諸都市さえ凌ぐ。一方で温暖化と環境破壊によって滅びたと言われ、3,500年を経た現在、再び温暖化と環境破壊によって滅びつつある。今回はパキスタンの世界遺産「モヘンジョダロの遺跡群」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

モヘンジョダロ消滅の謎

モヘンジョダロの道路と下水道

交錯する道路と下水道。この遺跡が滅んで3,500年たった現在のモヘンジョダロ周辺の村では、これほど整備された街並みは見られない

モヘンジョダロは紀元前1,500年前後に突如放棄されたことがわかっている。

滅亡の理由には諸説あり、アーリア人が南下したためであるとか、モヘンジョダロ周辺の気候が大きく変動したからだなどといわれている。ただ、大きな戦場跡がないことから、アーリア人の南下だけが原因であると考えるのは難しいようだ。

現在モヘンジョダロ周辺は半砂漠地帯で、インダス川も5km離れた場所にある。環境に変化が起こったことは、想像に難くない。

その環境変化の理由のひとつは地球温暖化で、そのためにインダス川の流路が変わり水が引けなくなったためという仮説もある。また、レンガを焼いたり火を起こす必要から森林伐採が進み、一体を砂漠化してしまったため人口を維持できなくなったともいわれている。

地球温暖化と環境破壊……

モヘンジョダロと世界遺産の意義

モヘンジョダロ周辺の湿地帯

息を呑むほど美しかいモヘンジョダロ周辺の湿地帯。遠くにラクダの商隊が見える

モヘンジョダロは平和と清潔を追い求める文明だったが、そのために自然を犠牲にしてしまった……そんな可能性さえあるのだ。

現在、今度は人間の手によると思われる地球温暖化による気候変動のおかげで、半砂漠地帯に豪雨が降り、モヘンジョダロの遺跡を傷めつけている。また、モヘンジョダロ周辺に水が引かれ、地下水位が上昇し、その水がレンガを破壊しているという。

実はモヘンジョダロの地下にはさらに以前の遺跡が眠っていることがわかっているが、世界最古の可能性さえあるこの未知の遺跡は、地下水の影響で未知のまま崩壊しつつあるという。発掘して救おうにも、地下水が湧き出してきて発掘を進めることさえままならない。

地球温暖化と環境破壊で滅んだモヘンジョダロが、現在ふたたび地球温暖化と環境破壊によって滅びようとしている。モヘンジョダロの歴史をより詳しく解明し、二度と同じことを繰り返さぬようその教訓を未来に活かすこと――世界遺産の意義がここにある。
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