同音異義語の識別に役立っているアクサン・グラーヴ
次に、accent grave(アクサン・グラーヴ)についてみてみましょう。accent graveが、「e」の上につくと発音が変わることは既に述べましたが、「e」以外にaccent graveがつく文字には、「à」と「ù」があります。
この2つの文字につくaccent graveの主な役割は、先ほどみたような発音の変化ではなく、同音異義語(homonyme)の識別です。つまり、アクサンがついている場合とついていない場合で全く違う意味になってしまう言葉がフランス語にはあるというわけです。双子を区別するのに、マジックでほくろをつけた?みたいなもんですね。ちょっと例をあげてみましょう。
有名なところでは、「~へ」などという意味を表す前置詞の
à(ア)と、「持っている」という意味の動詞avoirが活用した形の
a(ア)、英語のtheにあたる定冠詞の
la(ラ)と「そこ」という意味をもつ副詞の
là(ラ)、英語のorにあたる
ou(ウ)とwhereの意味をもつ疑問副詞の
oùなどがあります。
歴史の生き証人アクサン・スィルコンフレックス
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お次は、お山の形のaccent circonflexe(アクサン・スィルコンフレックス)。長い名前ですが、私は初めてフランス語をならったときから、実は、この言葉の発音があまりにもフランス語っぽいのでaccent circonflexe様と呼びたいくらい好きです。
日本でも人気の高いフレンチポップスにFrançoise Hardiの『Comment te dire adieu ?』(さよならを教えて)というのがありますが、鬼才Serge Gainsbourgが歌詞をてがけたこの作品には、「X」で韻をふむというものすごい芸当が隠されています。どうでもいいのですが、このメロディーにのせて、歌詞をaccent circonflexeばっかりにして替え歌で歌うと、あまりにもそれらしいので笑えます。お暇な方は是非試してみてください。
それはさておき、このaccent circonflexeですが、このアクサンは「â,î,û,ê,ô」と5つの母音につきます。役割としては、
cote(コット/相場)、
côte(コート/あばら骨)とaccent aigu(アクサン・テギュ)のように発音を変えるもの、また、
tache(タッシュ/汚れ)、
tâche(タッシュ/任務)とaccent grave(アクサン・グラーヴ)のように、同音異義の識別に役立っているものなど、いろいろです。
結構ややこしいので、フランス人向けの本にも、
château(シャトー/城)、
gâteau(ガトー/お菓子)には、accent circonflexeはつくが、
bateau(バトー/船)にはつかないので注意!みたいな文章がのっていたりします。こうなると日本人にはお手上げという気もしますよね。
なんだか、ややこしくて嫌な感じなので、もっとaccent circonflexeとお近づきになるために、accent circonflexeの起源についてお話をしてみましょう。例えばフランス語では病院のことを
hôpital(オピタル)と言います。しかし、かつて、フランス語では病院のことを英語のようにhospitalと表記しておりました。つまり、「o」の後に「s」が存在していたわけですね。消えてしまった「s」の代わりに、その前の母音にお山の形のaccent circonflexeをつけたというわけです。
forêt(フォレ/森)も、元がforestですから同じです。
亡き友人の代わりに存在し続けるaccent circonflexe。発音の美しさもさることながら、なかなか優美な精神の持ち主です。
その他の綴り字記号に関しては、次号でご紹介いたします。お楽しみに!