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【正直不動産2 第10話のあらすじをFPが考察】移転登記しないと大変なことになる

ブラックなイメージが拭えない不動産業界。ドラマ「正直不動産」で描かれるような悪徳営業は本当にあるの?――。3月12日の第10話(最終回)の放送内容を踏まえ、不動産を購入する場面での住宅業界のここだけは気をつけたいポイントを確認していきましょう。

執筆者:All About 編集部

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落ち込む人

所有権移転登記をしないと大変なことになる?

ブラックなイメージが拭えない不動産業界。ドラマ「正直不動産」で描かれるような悪徳営業は本当にあるの?――。

山下智久さんが演じる、嘘のつけない不動産営業マン・永瀬財地が活躍する不動産業界のお仕事コメディーシリーズ第2弾「正直不動産2」(NHK総合)。

3月12日の第10話(最終回)の放送内容を踏まえ、不動産を購入する場面での住宅業界のここだけは気をつけたいポイントを確認していきましょう。

第10話(最終回)の放送内容のおさらい、ネタバレ

6年越しの物流倉庫建設用地の大規模開発プロジェクトが間もなく成立する段階となり、上機嫌の登坂不動産の永瀬。しかし地権者の一人が突然、遊休農地を売買する契約を解除すると言いだす。

実はプロジェクトの情報を聞きつけたライバル会社のミネルヴァ不動産の神木(ディーン・フジオカ)が、この地権者から遊休農地を高値で買い取ろうと裏で妨害工作をしていたのだ。

永瀬や月下(福原遥)ら登坂不動産の社員は、プロジェクトが頓挫すると会社の未来がないことを確信し、プロジェクトを成立させるべく一致団結して動き出す。

一方、永瀬はプロジェクトが無事成功した場合、同棲中の美波(泉里香)にプロポーズすると決心していた。しかし、そんな矢先に美波がニューヨークへの転勤を命じられてしまい……。

地権者の「ちゃぶ台返し」はなぜ起きた?

1月から始まった「正直不動産2」もついに最終回。登坂不動産の永瀬とミネルヴァ不動産の神木との最終決戦の舞台となったのが、遊休農地を活用した6年越しの大規模開発プロジェクトでした。

今回は、この遊休農地にまずは焦点を当てて考察したいと思います。

ドラマで取り上げられているように、遊休農地を他の用途に変更する(農地転用)場合には、地元の農業委員会の許可を得る必要があり、複雑な書類手続きが伴います。

また、永瀬は遊休農地の地権者80人のもとを一人一人回り、説得に多大な時間を費やしました。

このように苦労して進められた大規模プロジェクトが、農業委員会の許可も下りた最終段階で遊休農地を売買する契約を解除され、買主が第三者(ドラマの中ではミネルヴァ不動産)に所有権を主張できない、つまり、買主が確実に所有権を取得できないなんてことはあるのでしょうか。

また、遊休農地に限らず、一般的なマンションなどの不動産を購入する際、引き渡し直前に売主から契約を解除され、第三者に所有権を主張できないなんてことがあるのでしょうか。注意点なども踏まえ、確認していきましょう。

遊休農地では「仮」登記の有無が明暗を分ける!

遊休農地から宅地などに利用方法を変え、所有権自体も移転するといった農地転用の場合、前述のように農業委員会の許可が必要となります。

一般に、たとえ小規模な農地転用であっても、申請から許可を得るまでには1カ月以上はかかります。そのため、許可を得ることを前提に、先に売買契約を結ぶことが多いのが実際のところではないでしょうか。

農業委員会の許可がない段階では、所有権移転の効果はまだ発生していないことから、本来の登記はできません。したがって確実に買主に所有権を移すためには、条件付きの「仮」登記をすることが考えられます。
 
もっとも、仮登記の手続きが面倒であったり、費用がかかったりすることから、仮登記をしないこともあります。ただ、仮登記をしないと、農業委員会の許可が下りても、第三者に所有権を主張できない状況をつくってしまうので、結果的に、今回のドラマのように遊休農地を売買する契約を地権者に解除されるといった話になってしまうのです。

住宅業界ここは気をつけたい! 移転登記が済むまでは安心できない

前述のように、農地転用の場合には、仮登記をしないと条件付きでも第三者に所有権を主張できないことを確認しました。

一方、一般的なマンションなどの不動産売買の場合には、農業委員会の許可などの条件が付いていないため「仮」登記ではなく、本来の登記をすることで第三者に所有権を主張できる状況をつくっていくことになります。

今ではめったに起こらないものの、バブル期には実際に多くみられた例として、売主が一度は売却を約束した後で、所有権の移転登記が行われる直前になって、より高値で契約できる第三者が現れた場合、引き渡し直前に契約を解除されることはあり得ます。

もちろん、引き渡し直前というタイミングであれば、手付放棄による解約ではなく、契約で規定した違約金(一般的には売買代金の20%)を売主からもらえはします。

しかし、転居を予定していて、子どもの学校の手続きなどを済ませてあれば、タイミングによっては、違約金をもらえるからといっても、これから他の物件を探すのがなかなか難しいことになるでしょう。特に、学校の新学期が始まる時期に転居すると、学校関連の手続きが複雑になるため、引き渡しのタイミングは年度の切り替わり直前は避けたほうが無難です。

また、事前に引っ越し業者の手配や家具の購入などを済ませておきたいところですが、所有権の移転登記をするまでは、売主から契約を解除される可能性が少なからずあるため、これらのことは引き渡しの後にするか、引っ越し業者などへのキャンセル料が発生しないタイミングを考慮したほうがよいかもしれません。

文:みちば まなぶ(ファイナンシャルプランナー)
大学卒業後、大手ハウスメーカーや不動産業者などを経て、住宅ローンを切り口に、住宅購入をはじめとしたライフプランニングを提案する1級FP技能士。

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