奈良の寺・神社

更新日:2009年09月15日

奈良の寺と神社

奈良には、数々の歴史の古い神社や寺があります。しかし、かなり広範囲にわたっているため、うまく計画を立てないと、すべて回ることはできません。来年の遷都1300年に向けて、まずは基本を学びましょう。

奈良の寺と神社は、広範囲に点在している

さて、今から奈良についての内緒の話をいたします
奈良の見所は、たいへん広範囲に点在しており、すべてを訪ね歩くには、たいへんな時間を要します。東大寺ひとつとっても大仏殿、二月堂、三月堂、戒壇院などがありますし、奈良公園内には、ほかにも興福寺、春日大社、奈良国立博物館などがあり、かなりはしょって見ても、たっぷり丸一日かかります。

奈良公園内

また、少し離れたところには薬師寺、唐招提寺がある西の京地域があり、さらに離れて法隆寺がある斑鳩(いかるが)地区があります。これらも、思いっきりはしょっても、やはり丸一日、法隆寺と斑鳩をしっかり見ようと思えば、それだけで一日取りたいところです。

西の京
法隆寺
大仏殿に行くと、誰もがその大きさに仰天する

大仏殿に行くと、誰もがその大きさに仰天する

奈良県には、3つの世界遺産がある

京都には「古都京都の文化財」という世界遺産がひとつあり、その中に多くの寺社が属しているのですが、奈良の場合は、「古都奈良の文化財」という世界遺産の中に東大寺、興福寺、薬師寺、唐招提寺などがあり、法隆寺は、「法隆寺地域の仏教建造物」 という別の世界遺産に属しています。さらに、金峯山寺がある吉野山は、「紀伊山地の霊場と参詣道」という、熊野古道などと同じ世界遺産に属します。

が、これだけで奈良の見所を網羅しているわけではなく、飛鳥地区、長谷寺、室生寺、山の辺の道など、世界遺産に属してはいないが魅力的なエリアがたくさんあります。

というわけで、奈良の寺社旅は、「どこを選んでどう回るか」がポイントとなります。今回は基礎編として「古都奈良の文化財に属する主な寺+法隆寺コース」の寺と仏像を中心にご案内をしますが、奈良の魅力は有名な寺ばかりではなく、素朴な風景の中にある小さな寺の仏像も素晴らしいので、2度目、3度目の奈良旅で、さらに深く分け入っていただきたし。
猿沢の池はライトアップも美しい

お得なきっぷの選び方

奈良の寺社めぐりでお世話になる交通機関は、JR、近鉄、奈良交通のバス、の3つです。奈良には新幹線の駅がないため、名古屋か京都、もしくは大阪経由で奈良入りする人がほとんどだと思います。その3都市から近鉄を使い、奈良の主な見所を巡るバスなどがセットになったきっぷがいくつかあります。

奈良世界遺産フリーきっぷ ~奈良公園エリア
奈良公園内の寺社と薬師寺、唐招提寺の基本コースのみ。京都のついでに一日だけ奈良に行きたい人に適します。京都発なら1590円。

奈良世界遺産フリーきっぷ ~奈良・西の京、斑鳩エリア
上記のコースに法隆寺をプラス。今回の記事でご案内する寺社をすべて含み、奈良旅初心者の方はこれ1枚でオッケー。京都発なら2150円。

奈良世界遺産フリーきっぷ ~奈良・斑鳩・吉野エリア
上記のコースに吉野をプラス。3つの世界遺産を網羅する上に、長谷寺、室生寺、飛鳥地区のバスなど、遠方の見所をかなり押さえています。京都発なら3000円。奈良旅の中級者以上向けでかなりお得です。

奈良大和路スルーパス
名古屋発で最終的には京都に抜ける片道きっぷ(逆コースも可)。途中にある長谷寺、室生寺、飛鳥、山の辺、吉野、当麻寺などほとんどすべての見所に行ける上に、法隆寺、奈良市内も当然オッケー。京都への道筋も途中下車可です。4日間有効で4060円というお値段は奇跡的なので、名古屋以東にお住まいで、あちこち行きたいベテランの方は、ぜひお試しください。


こんなに広い奈良公園

奈良公園は、若草山や春日山原始林なども含む広大なエリアで、上り下りもけっこうあるし、バスも一部の道路にしか走っていないので、主に自分の足が頼りです。
奈良公園をのんびり歩いていると、この世の憂さをすっかり忘れます
・奈良公園詳細マップ
寺社だけでなく、県庁までもが奈良公園内にあります。

まずは奈良の象徴、東大寺を歩いてみましょう

写真で見ると大きさがわからないので、ぜひ実物を見て
東大寺はお堂ごとに拝観料が必要です。各お堂には何でもご存知の係の方がいるので、疑問があったら訊ねてみましょう。

・東大寺のホームページ
普段見られない秘仏などの開帳日も、ここでチェックできます。

■南大門
ここは拝観料なし。運慶快慶作の金剛力士像に圧倒されます。秋にはライトアップがあるので、ぜひ、夜にも見てください。

■大仏殿
大仏様(銅造盧舎那仏坐像)だけでなく、建物の壮大さにもご注目ください。堂内の木造如意輪観音や虚空蔵菩薩坐像も迫力たっぷりです。

■二月堂
お水取りで有名な舞台式のお堂です。内部には入れませんが、舞台の上から眺める奈良の景色が最高です。特に秋の夕暮れ時が素晴らしく、地元の人も夕日を見に集まります。

■三月堂(法華堂)
宝石いっぱいの冠をつけた不空羂索観音立像(ふくうけんさく)、日光、月光菩薩像ほか、数々の国宝仏像が並びます。大仏殿ほどは混雑しませんが、ゆっくり見るなら朝イチで行きましょう。

■四月堂(三昧堂)
立派な千手観音像があるのに、なぜかこのお堂は拝観料なし。お見逃しなく。

■戒壇院
大仏殿や二月堂エリアから少し離れたところにあるせいか、訪れる人は少なめですが、仏像マニアに人気のオトコマエ四天王がいるお堂。

■轉害門(てがいもん)
東大寺は、平安末期、平重衡によってほとんどの建物を焼かれてしまい、多くの建造物は鎌倉時代以降に再建されたものですが、この轉害門だけは、創建された天平時代そのままの建物で、たいへんな貴重品。しかし、国道沿いのバス停前という実にさりげない場所にあるので、見逃さないように注意のこと。
二月堂から眺める夜景。大仏殿の屋根が山のよう

次は春日大社に行きましょう

二月堂エリアから、手向山八幡宮などを眺めながら、春日大社に行きます。この八幡様は、東大寺建立の際に九州の宇佐八幡宮から勧進された東大寺の守り神です。二月堂から春日大社までは、1kmほど。

春日大社はかつては興福寺と一体となった藤原一族の氏寺(氏神)で、明治初頭の神仏分離令以降、寺と神社に分かれ、広大な敷地が奈良公園になったのです。今から1300年ほど前、茨城の鹿島神宮の神様であるタケミカヅチノミコトをこちらにお迎えした際、白い鹿に乗って飛んでこられました。現在、奈良公園に群れる鹿たちは、その子孫だということで、実は鹿島神宮の方が歴史が古いという、ちょっと驚きの事実もあります。

最後は興福寺で、阿修羅さんに会います

興福寺は、五重塔以外は何となく実態のつかみにくいお寺です。それは、明治の神仏分離令やその他のもろもろで、昔の建物があまり残っていないせいです。メインの建物である中金堂は、2010年の遷都1300年に向けて再建が進んでおり、完成の暁には、伽藍の様子がよくわかるようになることでしょう。

興福寺のホームページ
再建が進む中金堂などの様子がわかります。
興福寺の五重塔と東金堂
常時拝観できるのは次の2つ
■国宝館
人気爆発の阿修羅像をはじめとする国宝仏像がずらりと並ぶ博物館です。阿修羅さんは、2009年の9月までは九州におられますが、その後、こちらにお帰りになり、10月17日(土)から拝観できます。
■東金堂
薬師如来像、日光、月光菩薩、十二神将など、国宝、重要文化財クラスの仏像が並びます。

期間限定で拝観可能なお堂
■南円堂
基本的にご開帳は10月17日のみですが、昨年(2008年)は西国三十三ヶ所のご開帳の一環で、かなり長期間、開帳されていました。まばゆいばかりの不空羂索観音立像などが祀られています。
■北円堂
こちらは春と秋の一定期間、開帳されます。木造無著菩薩(むじゃく)・世親菩薩立像など、仏像マニア垂涎の傑作仏像があります。


西の京ってどんなところ?

平城京の西側の地域を指します。1300年前に造られた人口河川である秋篠川に沿っており、主な見所は、唐招提寺と薬師寺。近鉄の西の京駅で降り、歩いて2つの寺を拝観するのが一般的ですが、西大寺前のレンタサイクル屋さんで自転車を借りて川沿いを走るのも、また一興です。

金堂落慶が待たれる、唐招提寺

唐招提寺は苔や樹木も美しい
唐招提寺は、現在、メインになる金堂が10年がかりの修復中で、いよいよ、2009年の秋に完成し、落慶法要が行われます。

修復の様子は、テレビなどで何度も見ましたが、ひとつひとつの木材を調べ、使えるものはそのまま使う、腐りかかった木も修理して生かせる部分はないか細かくチェックするなど、気が遠くなるような作業です。唐招提寺の金堂は、わたしも学生時代から愛してやまない典雅な建物です。再び見られる日を、指折り数えてお待ちしておりました。

 

唐招提寺を代表する行事、うちわまき。僧侶が投げるうちわを観客が奪い合います
唐招提寺のホームページ
金堂修復の様子がわかります。

唐招提寺の代表的な仏像
■金堂
盧舎那仏坐像、薬師如来立像、本当に手が千本ある珍しい千手観音立像。金堂落慶とともに、また拝観できるようになります。

■講堂
弥勒如来坐像、持国天、増長天立像など、多数の仏像が祀られます。

■新宝蔵
鉄筋の収蔵庫。旧講堂木彫群と呼ばれる、奈良時代末期に制作された多数の木彫像が収められ、中でも首のない菩薩像(通称、唐招提寺のトルソー)の流れるようなボディに注目。

青丹がまばゆい薬師寺

薬師寺東塔。この塔だけは創建時のもので、青丹の色彩は消えている
しっとりとした唐招提寺から来ると、薬師寺のあまりの色鮮やかさに戸惑う人もいるでしょう。朱色と緑に塗られた建物が並ぶ伽藍には、樹木もあまりなく、青空の下で強烈な光を放ちます。が、実はこれが、奈良時代の寺の本来の姿です。

朱色と緑の色あわせは青丹(あおに、奈良の枕言葉です)と呼ばれます。薬師寺の創建時の建物は多くが失われましたが、戦後に修復が始まり、奈良時代そのままの建物が再建されたのです。2つある塔のうち、東塔は1300年前の創建当時のもので、西塔は1981年の再建です。両者の見比べは実に興味深いです。

 

薬師寺金堂。この中に薬師三尊像がある
・薬師寺のホームページ
薬師寺日記というブログに最新の情報満載

薬師寺の代表的な仏像
■金堂
薬師三尊像が圧巻です。脇待の日光、月光菩薩は、2008年の薬師寺展で東京国立博物館にお出ましになり、大きさと美しさに改めて驚いたものです。

■大講堂
弥勒三尊像という珍しい仏像が祀られます。脇待は法苑林菩薩、大妙相菩薩という、薬師寺の宗派法相宗に独特のものです。京都仏教より古い奈良仏教には、このように、京都では見られない仏像もあります。

■東院堂
聖観音のたおやかなお姿にうっとり。この方も薬師寺展にお出ましになり、意外に厚味がある体つきであることを発見しました。


法隆寺は斑鳩の里にあります

法隆寺に行くには、JRの法隆寺駅から15分ほど歩くか、近鉄奈良駅から法隆寺行きのバスに乗るか。奈良市内からは少し離れた斑鳩の里というところにあり、法隆寺のほかに、世界遺産の一部の法起寺、飛鳥から平安時代の傑作仏像が並ぶ法輪寺などがあります。斑鳩の里全体をまわるなら、レンタサイクルが便利です。

法隆寺の拝観料は、とてもお安い

法隆寺夢殿。ご開帳の日はこんな感じで、救世観音様とのご対面はほんの一瞬です
法隆寺の拝観料は1000円です。他の寺と比べるとずいぶん高いと思う人もいるでしょうが、それは間違いです。

金堂、五重塔などがある西院伽藍と夢殿がある東院伽藍に分かれ、国宝建造物は19棟。それに加えて百済観音などが展示される大宝蔵院もこの拝観料に含まれるのですから、えらく安い、というのが本当です。建物は世にも美しく、見所は多彩で、じっくり見ていたら、半日ぐらいは、あっという間に過ぎてしまいます。これほどのものをたったの1000円で見せてくださる聖徳太子様に一礼。

 

法隆寺の南大門と五重塔。青い空が似合う
法隆寺のホームページ
法隆寺の七不思議が興味深いです。

法隆寺の代表的な仏像
■金堂
わが国最初の仏師、止利仏師が造った釈迦三尊像、わが国最初の四天王像など多数

■五重塔
奈良時代のはじめに造られた塑像群

■大講堂
薬師三尊像及び四天王像

■夢殿
聖徳太子をモデルにしたと言われる救世観音。春、秋の一定期間のみ開帳

■大宝蔵院
夢違観音 悪夢を吉夢に変えるご利益あり
百済観音 大宝蔵院の特別ルーム、百済観音堂に単独でお祀りされています。

●仏像ファンたちの心の恋人、麗しの如意輪観音像は、中宮寺という別のお寺に祀られているため、別途拝観料がかかります。

奈良好きの必読書「奈良寺あそび 仏像ばなし」は大山蓮華の花が目印です
奈良のお寺と仏像めぐりについてより深く知りたい方には、以下の本をお勧めします。
奈良 寺あそび 仏像ばなし

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この記事の担当ガイド

写真

吉田 さらさ

お寺、神社、仏像、宿坊に関する単行本と雑誌記事をメインとして執筆と写真撮影をしています。「散歩の達人…

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