タバコ・禁煙

喫煙後も家族の健康を損なうサードハンドスモークとは

近年注目されている「サードハンドスモーク」。受動喫煙とも少し違うタバコによる健康被害で、「第3の喫煙被害」ともいわれています。子どもへの健康被害がより大きいことも懸念されているため、子どもをもつ親はぜひ知っておきましょう。

執筆者:All About 編集部

染み付いたタバコの有害成分がもたらす健康被害……

窓の外を眺める乳幼児

親ならば、幼い子どもの健康を第一に考えるべきではないでしょうか……?

タバコの害として、自ら喫煙することで起こる「ファーストハンドスモーク(能動喫煙:一次喫煙)」と、自分ではタバコを吸わないけれど、他人のタバコの煙を吸わされてしまう「セカンドハンドスモーク(受動喫煙:二次喫煙)」の2つがよく知られています。

ところがこれに加えて、タバコの煙が消えた後でも、壁やカーテン、ソファ、衣服などに染みこんだタバコの有害成分によって、健康被害を受けるケースがあることが分かってきました。これを「サードハンドスモーク(残留受動喫煙:三次喫煙)」と呼びます。

これまで、あまり指摘されてこなかったサードハンドスモークの害ですが、アメリカ・ボストン小児病院の医師がこの言葉を使い始めたことをきっかけに、海外で研究が進められてきました。日本でも、厚生労働省による「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会」で議論が交わされるなど、近年注目されています。

乳児や子どもの健康を脅かすサードハンドスモークとは

タバコの煙には4000種類にもおよぶ化学物質、約200種類の有害物質、60種類以上の発がん物質が含まれています。受動喫煙やサードハンドスモークによって、タバコを吸わない人までこれらの有害成分にさらされてしまいます。

サードハンドスモークが罪深いのは、大人だけでなく、とりわけ乳幼児や子どもへ健康被害のリスクを負わせてしまうことです。大人なら、自らその被害を避ける術はもっていますが、小さな子どもはそうはいきません。

たとえば、子どもはカーテンの裏に隠れて遊んだり、ソファに寝転んだり顔をうずめたりすることがあります。また赤ちゃんは床やカーペットの上で遊んだりはいはいしたりと、室内の低い位置にいることが多いものです。さらに、喫煙していた部屋に置かれたおもちゃにも有害物質が付着しますが、赤ちゃんは直に触ったり口に入れたりします。そうしたことで、大人に比べて大きな被害を受けてしまうのです。

さらに受動喫煙以上に厄介なのは、タバコの煙そのものはすでに見えなくなっていることです。有害物質は喫煙者の吐く息、髪の毛や衣類、喫煙をしていた部屋のカーテン、ソファ、壁やじゅうたんなどに必ず潜んでいます。しかも、その残存期間は長く、数カ月間も消えないといわれます。

家庭で心がけるべきサードスモーク対策法

喫煙者のなかには、家族に受動喫煙をさせないように室内では換気扇の下などでタバコを吸う、という人もいます。しかし、換気扇を回してもサードハンドスモークによる室内汚染は防げません。同じように、タバコを吸うときに空気清浄機を稼働させている人もいますが、空気清浄機には、有害物質を除去する効果はほとんどありません。空気清浄機が除去できるのは粒子の一部のみ。気体であるタバコの煙は素通りしてしまいます。

またベランダでの喫煙は、洗濯物を汚染し、近隣の人の健康被害にもつながります。妊婦や子どもがいる家庭では、そのそばはもちろん、遊び場や寝具が置いてあるところでの喫煙は絶対に避けてください。なお、タバコを吸ったあとも、30分程度は喫煙者の呼気から有害成分が出ていることも覚えておきましょう。

サードハンドスモークへの対策としては、まず室内の換気を徹底します。カーテンや壁、ソファなどに染みついたタバコの有害物質は、換気だけでは完全に除去できませんが、有害性を軽減することはできます。カーテンなどの布製品はできるだけこまめに洗濯をしましょう。カーペットやソファ、フローリング、畳などは、表面を水拭きするだけでも効果はあります。有害物質は濡れている物に付着しやすいので、洗濯物は喫煙場所から離れた風通しのよい場所に干すことです。喫煙者やその近くにいる人は、衣類や髪にも有害物質が付着するので、こまめに洗濯や洗髪をするようにしましょう。

タバコの害から子どもを守るためには、親や同居している家族が禁煙するのがいちばんです。家族や周囲に禁煙をすすめるときは、喫煙は本人への害だけでなく、受動喫煙やサードハンドスモークによって、子どもに健康被害をもたらすことを十分に説明して理解を得ることです。どうしてもタバコがやめられない人に対しては、喫煙は完全な屋外で行ってもらうようにしましょう。

(監修:今村 甲彦医師)
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