社会ニュース/よくわかる政治

いよいよ始まる18歳選挙権の生かし方

2015年に行われた公職選挙法改正により選挙権が18歳に引き下げられ、今夏の参院選から新たな基準で選挙が行われる。今回その資格を得たのは高校生を含む18歳から19歳まで約240万人。彼らが新たに政治参加することで何が変わるのか、その可能性をさぐる。

松井 政就

執筆者:松井 政就

社会ニュースガイド

有権者となる18~19歳世代が果たす役割とは?


今夏に行われる参院選より、「18歳選挙権」による投票が行われる。

選挙権を18歳に引き下げる法改正については、以前、社会ニュースで

「選挙権年齢を18歳へ引き下げ その利点と責任」

として解説したが、法改正後初の選挙となる参院選を前に、新たに有権者となる18~19歳世代が果たす役割について考えてみたい。

民主主義にも欠点がある

日本は民主主義国家であり、国民の意見が政治に反映される"ことになっている"。あえてこんな言い方をしたのは、必ずしもそうではないからである。

実際に反映されているのは国民の意見というよりもむしろ投票した人の意見であり、これが民主主義の第一の欠点と言える。

それは投票する層にばかり有利な仕組み

一つ例を挙げてみる。たとえば「奨学金」だ。

諸外国の多くは奨学金といえば返済しなくてもよい給付型の学業資金を指し、中には大学まで授業料が無料の国まである

一方の日本では、奨学金とは名ばかりの貸与型。つまり名前を変えただけの「借金」であり、学生は卒業後も多額の返済に苦しめられ、若者の貧困の一因となっている。しかも奨学金を貸した事業者が、卒業後の学生の就職先にまで取り立てに来るなどの問題も表面化している。

これはほんの一例だが、日本の政治は若年層に冷たい面がある一方、高齢者には手厚いと言われている。

その理由は単純だ。選挙で投票する人が圧倒的に高齢者が多いからだ。
総務省の調べによれば、2014年の衆院選で70~74歳の投票率が72%台であった一方、20~24歳の投票率はたった29%台。何と2.5倍ほどの開きがある。しかも人口に占める割合が若者は小さいため、投票の実数で見ればその差はさらに拡大する。

政治家も人間である以上、落選したくないあまり、自分に票を入れてくれる人の意見を優先するのも仕方がない。これでは投票できない人に手厚い政治を行うのは難しい。投票できない人の大半は子どもを含む若者である。

受益世代間の不公平を減らす

日本では若年層への福祉が手薄と言われ、例に挙げた奨学金の問題についても、20歳に満たなければ、当事者である学生自身でさえも投票という形で意思表明できなかった。

政府が調査した191ヵ国のうち176ヵ国が18歳以上に選挙権を認めているので、日本では世界標準と比べて若者の権利が制限されてきたと言えるだろう。

また、待機児童の問題も若年層に関わる問題の一つであるが、もしも保育園に入れず困っている子どもに投票権があったとすれば、現在起きている問題がどのように判断されるか興味深い。

これを一例として、投票できる層とそうでない層との間の福祉の不公平を是正するためにも、18歳選挙権は意味がある。

民主主義のもつもう一つの欠点の克服

若者の政治参加で期待されるのが、民主主義のもつもう一つの欠点の克服だ。それは、国民が必ずしも正しく公平な情報をもとに判断を下せるわけではないという点である。

国民が正しく公平な情報を得るのはかなり難しい。その象徴とも言うべき問題が今起きている。公費の私的流用の疑いが持たれている舛添要一現東京都知事の問題である。

本当の人物像を知らずに投票が行われた

ご存じの方もいるだろうが、過去に行われた、いわゆる”総理にふさわしい人”を尋ねるアンケートで舛添氏は1位になったことがある

彼が起こした問題を考えると、彼がなぜ1位になったのか首を傾げる人も多いだろうが、当時アンケートに答えた人は彼の本当の人物像など全く知らなかったからである。その印象のまま、先の都知事選で多数の人が彼に票を入れた

余談だが、そのアンケートの2位は鳩山由紀夫氏、3位は菅直人氏だった。国民が答えた”総理にふさわしい人”の2位と3位は実際に総理になったが、その後総理としてどうだったかはご存じの通りだ。そして1位の舛添氏もご覧の通りだ。

これは、国民が政治家の本質を知ることが難しいことの証拠ともいえるが、国民が投票によって下した判断により、後になって悪い結果が起きれば、その責任はブーメランのように国民に返ってくる。それを防ぐには、できるだけ正しく公平な情報を有権者が手にすることだ。

ネットネイティブである若者の良さを生かす

これまで長い間、有権者が手にする情報は新聞やテレビといった大メディアが中心だった。大メディアの情報は、社として統一されたものになりがちなため、有権者の判断材料が同一の情報源に集中し、選挙によって判断が右から左へと地滑り的に変化することもたびたび起きた。

今回の選挙権の引き下げでそうした課題がわずかながら是正されるかもしれない。

それは18~19歳の人たちはいわゆる"ネットネイティブ"として、インターネットの世界に当たり前のように接して成長し、情報もネットから収集することに慣れていることだ。

こうしたツールに慣れ親しんだ層が政治参加できるようになる意味は大きい。舛添氏の問題も、ネットに掲載されている収支報告書の調査から発覚したものだ。

むろんネットにも短所はあるが、ネットで自ら情報を取りに行くことが億劫でない世代も加わることで意見のバリエーションが増えることは期待できる。
とりわけ、これから社会を背負っていく世代にも手厚い政治を実現するには、その受益者となる若者が自ら切なる声を挙げることが最も効果的だ。

「良識」を常に心がけよう

最後に、選挙に参加する上での注意点を挙げておこう。
一にも二にも選挙違反をしないことだ。

若い世代は2ちゃんねるなど、ネット掲示板に書き込むことにあまり抵抗がないが、それと同じような感覚で選挙期間中に書くと、場合によっては公職選挙法違反に問われかねない。

よって、ネットの活用も「良識」をもって行うことが大切だ。

(ネット選挙に関する参照:千葉県議会議員 水野ゆうき氏公式HP「インターネットを使った選挙運動で「できること」「できないこと」」
http://mizunoyuuki.com/feature_internet_election)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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