妊娠の基礎知識/出生前診断・新型出生前診断

妊娠したら誰しも受ける「超音波検査」の落とし穴(2ページ目)

出生前診断の全体像をお伝えする5回シリーズの最終回。ここでは、超音波検査の発達によるジレンマをお伝えします。誰もが受けている超音波検査でも、染色体疾患のある可能性が高いと言われることがあります。それはどういうことなのでしょうか。

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド

もしも、超音波検査で赤ちゃんに異常があると言われたら?

ただ、妊婦さんたちに取材をしていると「やる以上は、結果が出たあともちゃんとフォローして欲しい」という痛切な訴えが聞こえてきます。

妊婦健診の超音波検査で異常のある可能性が高いと言われたら、専門医による本格的な胎児超音波検査が行える病院や専門クリニックに必ず紹介してもらってください。そして、精密な超音波検査を受けてください。そこで正常という結果が出ることも、少なからずあります。問題のある可能性が高いとなれば、次の行動についてより詳しい情報をもらったり、相談したりすることができます。

NTは、厚くても疾患があるとは限らないことにも注意が必要です。羊水検査を受けると、正常である人の方が多いのです。NTの正確な計測は英国のFMF(Fetal Medicine Foundation)のライセンスがない医師には難しいので、正確な値は、ライセンスを持つ人に計り直してもらう必要もあります。妊婦さんがNTについて相談したい場合は、FMFのライセンスを持つ医師がいて、遺伝カウンセリングも受けられる施設を探すことをおすすめします。

NTの値を積極的に知りたいと思う場合も、FMFのライセンスがある医師、検査技師さんなどのいる施設へ行くことをおすすめします。遺伝カウンセリングを受け、わかるかもしれない疾患や検査の限界などについてよく理解してから、正確に測ってもらいましょう。

誰でも、妊娠すれば受ける。それが現代の「出生前診断」

お腹の赤ちゃんの病気は、今後ますます簡単に、より多くの疾患が、より安価に、否応なしにわかるようになっていくことが予想されます。妊娠した人は、誰でも、この現実に巻き込まれる可能性があります。

5回シリーズで出生前診断について書いてきました。出生前診断については「賛成か反対か」「受けるべきか否か」を思い悩むものだととらえている人が多いでしょう。でも私は、2年間近い取材から『出生前診断−出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』を書いてみて、それは少しずつ現状からずれてきているように感じました。

高性能の超音波検査機が入っている現代の産婦人科では、もはや産婦人科にかかるということ自体が出生前診断なのです。

これから、検査の技術はさらに進んできます。技術の現状に合った議論がもっと盛んになることを期待します。

【出生前診断 全5回シリーズ】
第1回:賛成? 反対? 出生前診断の歴史と意義
第2回:出生前診断とは? 種類・時期・費用・実施病院
第3回:出生前診断に必要な「遺伝カウンセリング」とは
第4回:優生思想、命の選別…日本の出生前診断の問題点
第5回:妊娠したら誰しも受ける「超音波検査」の落とし穴(この記事です)

【参考書籍】

「出生前診断」(朝日新書)表紙

出生前診断-出産ジャーナリストが見つめた現状と未来(朝日新書)

出生前診断−出産ジャーナリストが見つめた現状と未来(朝日新書・2015年)

本シリーズは、医師や遺伝カウンセラー等の専門家、妊婦さんに取材したこの本をもとに構成しました。出生前診断について自分なりの答えを探している方は、ぜひご一読ください。

 

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※妊娠中の症状には個人差があります。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。体の不調を感じた場合は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。

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