防災グッズは優先順位をつけ、何を何処にどれだけ備蓄するのかが必要
備えてほしい防災グッズの優先順位と管理が必要。備蓄する量と種類も学びましょう。
災害というと地震だけでなく近年では大雪や大雨による洪水なども増えています。またそれに伴い停電や断水などもあり、いつ何が発生するか分からない状況です。
多くの方がなんらかの物を防災グッズとしてもっていたり食糧の備蓄をしているかと思いますが、いくら準備しているようでも何も考えていない準備だと、いざ停電になったらどこに何があるのか分からないとか、備蓄している食糧の賞味期限が切れていたということにもなりかねません。
優先順位をつけ、何を、何処に、どれだけ用意しておくのかを考えて備えておくことが必要です。
ガイドは東日本大震災後、被災した地域に足を運んでいます。今回はそこで教えていただいた内容を含めまとめご紹介いたします。災害に対する備えは、家族の人数や住んでいる地域によっても必要とされてくるものが大きく変わってきますので、本記事をもとに自分の家の場合はどうしたら良いのか、考えるきっかけにしていただけると幸いです。
防災グッズ優先順位1位の備蓄品と保管法/とにかく生きるための備え
携帯電話で家族の安否を確認したいなど、災害が起こるといろいろ必要となってきますが、まずは「生きるための物」を優先順位の1位と考えて備えておくべきでしょう。■災害時にすぐに持ち出しできるよう備えておく物
【1】水
人間が生きるには1日に2リットルの水が必要と言われています。生活用水も含めれば3リットルです。でも優先順位1では生きるための水を備えておくことを考えます。2リットル×家族の人数分です。
【2】最低限の食糧
この優先順位1では、お腹をいっぱいにすることまでの量ではなくとにかく生きるためのものとして考えます。このときパサパサなもの、塩からいものは避けたほうがよいでしょう。余計に水分を欲してしまうからです。乳幼児がいる方はミルク類も必要ですし、ペットを飼っている場合はペットの餌も考えてあげてほしいと思います。
栄養補助機能があるドリンクゼリーも備蓄にいれておくとよい
そのためガイドは、東日本大震災発生直後に避難所に送る物資として栄養補助食品のドリンクゼリーを大量にお送りしました。パサパサなビスケットタイプではないので、水気を余計に欲することもないからです。優先順位1に備えておく食料の一部としても良いのではないでしょうか。
【3】防寒具
東日本大震災では津波から逃げ、雪の降る高台で夜を明かした方も多数います。厳しい寒さは凍死の可能性もありますし、死までいたらなくても体力を消耗します。また最近では大雪で大渋滞になり車の中で過ごさなくてはならないけれど、ガソリン消費をおさえるためにエンジンを切っていて寒さに耐えられなかったという話もききます。
備えておくものとしては、薄い銀色の保温シートや、ダウンジャケット、下半身も包み込むレインコートなどもよいでしょう。ダウンジャケット類は空気をぬけば小さく畳めますので非常用の持ち出しグッズとしては場所もとらずにすみます。携帯用カイロも2年3年と保管できますので、用意しておくと便利です。
【4】薬ほか持病の対策
病気によっては一日でも薬をかかすことができないものもあります。そのような持病のある場合は、緊急時用の分を非常用持ち出し袋の中にいれておくとよいでしょう。
■優先順位1のものを何処に保管するか
非常用のグッズの保管場所は以下の3つを考えて置く場所を決めるとよいのではないでしょうか。
・1日24時間のうち何処に長く滞在しているか
・持ち出しやすい形にまとめられてあるか
・持ち出しやすい場所に置かれているか
必ず通る玄関の脇に置いてある非常用持ち出し袋
・勤務先に用意するもの
大きな会社や大きなビルに入っている勤務先であれば、ビルとして備蓄を用意してあるところも多くありますが、それでも自分の身を守る最低限のものは用意しておいたほうがよいでしょう。また東日本大震災のときは、交通機関がとまってしまい何時間もかかって歩いて帰った人も多くいました。最低限の水と食料とともに、レインコート、歩きやすい靴、ヘルメット、マスクを勤務先に個人のものとして用意しておくとよいでしょう。
・車の中にも災害対策グッズを準備
賞味期限2年、保存状態がよければ3年利用できるという「備蓄用デニッシュパン」
そのため、車の中にも最低限の水、食料、防寒具を準備しています。ガイドの場合は車の中に備えておく食糧は忘れがちなのでロングライフ食品など長期保存できるものにしてあります。また着なくなったダウンジャケットも防寒具として入れてあります。(ロングライフ食品については後述)
・電車での通勤時間が長い人は電車の中で災害にあうことも想定
ガイドの場合は電車に乗る時は長時間乗ることが多いので、必ずペットボトルの飲料と防寒具代わりにもなるレインコートをカバンの中に入れてあります。
・ペットとともに逃げることも想定
リュック型のキャリーバッグであれば両手があくので便利
ガイドの場合は猫なので、リュックとして背負えるキャリーバッグを用意し、その中に猫用の餌を入れてあります。
防災グッズ優先順位2位の備蓄品と保管法/最低1週間暮らせる準備
東日本大震災のとき長く避難所にいた方から聞いた話では、1週間目でも届く食糧に限りがあったため、届いたおにぎりを大人は我慢して子どもたちに食べさせたということでした。災害が起きると他の地域などから物資が届きますが、大雪で被害のあった地域に入ってくることさえもできない等、災害の内容や地域によって物資が届くまでの時間は違ってきます。
また東日本大震災のとき、家は残っているので住める状態だけれど、避難所にいなければ食糧がもらいづらいという理由で家を出ていた方もいました。それでなくても疲れやすい避難所、体力低下にともなう感染症などを防ぐためにも、できることなら家にいたほうが過ごしやすいと思われます。
災害発生後、幸いにして自宅にいられる場合、電気、ガス、水道のライフラインがとまった状況で、最低でも一週間は暮らしていける用意をしておくべきでしょう。
【1】水
前述しましたが、人間が生きていくのに必要とされる水は1日2リットル。生活用水を含めれば3リットルです。家族の人数分の水の準備が必要です。断水で水洗トイレが使えない場合、そのままにしておくと衛生面でもよくありません。市販の飲料水をペットボトルで用意しておくというだけ以外にも備える方法はあります。
・風呂水はつねに貯めておく
・発災後すぐに水道水をためる
東日本大震災のとき、1ヶ月近く断水が続いた地域の方に聞いたのですが、地震が発生してから半日弱は水道水が出たそうです。その方はその間に浴槽と大きなゴミ袋4つ分に水をためた為、それで随分と活用できたという話です。
逆に言えば、発災後に水道が出ることを確認して安心しても、半日後から断水になってしまう可能性もあるということです。水が出るようだったら、できる限り早いタイミングで水をためておくとよいでしょう。
・雨水タンクで雨水をためる
雨水をためられる雨水タンク
・給水車から水をもらうときの準備
薄く折りたためるポリタンク20L
水を備蓄していても足らない場合は、給水車から水をもらうようになりますので、その準備もしておくと安心でしょう。
灯油などをいれるポリタンクは場所をとるので、最近ではコンパクトにたためるタンクがあります。
また水は重たいので、保管場所に余裕があるのであれば台車があると便利です。
【2】食糧
・主食を確保
主食はお湯で温めるだけで食べられるご飯や、日本には長期保存できる乾麺があるのでそれを利用しない手はありません。蕎麦やうどんなどつゆが必要というイメージかもしれませんが、災害時であればそれもまた別です。茹でたうどんにおかずになるようなものを乗せてたべることもできます。
・そのまま食べられるおかず食材
熱源を必要とせず、缶切りも不要な缶詰を複数用意しておくとよいでしょう。
・乾物も利用価値大
東日本大震災で被害にあった人から聞いた話で「温かいお味噌汁を飲んだときに本当にほっとした」ということがありました。家での備蓄とするのであれば、温かい汁物を飲めるようにしておきたいものです。インスタントの味噌汁は意外と保存期間が短いので、それ以外で用意しておいたほうが備蓄の管理は楽になります。
数年前に乾燥野菜が流行ったおかげで最近では市販の乾燥野菜も多数あります。ほうれん草や人参、そして昔ながらの高野豆腐もたんぱく質の栄養が豊富なので役にたちます。これに顆粒の出汁の素を用意しておけば味噌汁とまでいかないでも温かい汁物が飲めます。
1週間から10日分の家族分の食料を考えるとき、1日3回の食事として「主食」「おかずになるもの」「汁物」の3種類に分けて考えていくと、備蓄しておくべき数が把握しやすくなります。
【3】熱源
電気もガスも止まってしまった状況を考えれば、ガスのカセットコンロはやはり必須です。最低でも1週間使える分のガスを用意しておくとよいでしょう。また外で利用しなければならないという制限はつきますが、木炭とそれを利用する七輪やバーベキュー用のコンロなどもあると安心です。
【4】灯り
なるべく避けたいのがろうそくです。当然ながら倒れれば火事になる可能性が高いものだからです。とくに地震災害のときは余震があるので避けたほうがよいでしょう。遠くまで灯りを届けることができる懐中電灯とともに、停電のときに室内で過ごすために横への灯りの広がりがあるランタン型の電灯があると便利です。
ソーラーと手回しの両方で発電できるランタン
東日本大震災のあと、計画停電があった地域では乾電池が売り切れてどこの店にもおいていないという状況が長く続きました。ソーラー式と手回し式のどちらも兼ね備えた灯りがあると便利です。ソーラー式は曇っていたり夜間には蓄電することができません。手回し式は疲れます。両方のマイナス点を補うためにも両者をもしくは両方を兼ね備えたランタンがあると便利です。
また非常時に使う灯りは、家の中で長時間いる可能性が高い部屋(寝室・リビング等)の順に置いておいたほうが良いでしょう。単純に長くいる場所は発災のときにいる可能性が高いからです。
【5】衛生用品
・オムツと生理用品
小さいお子様がいらっしゃれば当然ながらオムツが必要なことは浮かぶかと思いますが、意外と忘れられがちなのが生理用品です。いつ災害が起こるか分からないのですから、1ヶ月分の生理用品は常に備えておくとよいでしょう。
・除菌グッズ
災害のときは体力も落ちているので、感染症対策も重要です。手を洗うことができなくても除菌のウェットティッシュがあれば役立ちます。除菌ウェットティッシュは入浴できない間に身体を拭いたりするなど幅広く利用できるので多めに備蓄しておくと便利です。
・応急処置ができるもの
優先順位1に入れるかどうか迷うところですが、1をそのとき生きるために最低限必要なものと考えると、応急処置ができるものは優先順位2に入れておきます。しかし持ち出しグッズに余裕があるのであれば1にいれてもいいでしょう。バンソコウや怪我をした際に消毒できるアルコール類もあると安心です。
【6】ラジオ、携帯充電など
優先順位2では家族の安否を確認するための電話利用や、情報収集のためにラジオなども考えなくてはなりません。東日本大震災後は、ソーラー式や手回し式などで発電できるグッズが手頃な価格で売られているようになりました。前述の通りソーラー式も手回し式も一長一短なので両方備えておくにこしたことありません。
無印良品のソーラー充電器。LEDライトとしても使える
【7】防寒のために湯たんぽ
電気やガスがとまった状態での防寒は厚着をするのが一番ですが、それでも心もとない場合はやはり役立つのが湯たんぽです。昔ながらの鉄製や陶器製の湯たんぽにカバーをつけて使えば保温効果が長く続きます。沸騰したお湯をいれれば24時間経ってもお湯が完全に水にならずにぬるま湯の状態です。同じお湯を繰り返して使うことができるという点も災害時には使いやすい点です。
【8】マスク・長靴・厚手の手袋など
優先順位1にも一部入れましたが、災害が発生したあとの対応の際に揃えておいたほうが良いものがあります。
ヘルメット・長靴・マスク・手袋。
手袋は軍手だけですと木材やガラスの破片などで怪我をする可能性もあるのでガーデニング用の厚手のゴム手袋もあるといいでしょう。
【9】ガソリン
東日本大震災のとき、多くの地域でガソリンが足らない時期がありました。やはり頻繁に給油してできる限りガソリンのある状態にしておいたほうが良いでしょう。
【10】お金
多少でも物流が回復したときなどお金があると買い物をすることが可能です。災害時用として、ある程度の金額(お札と小銭)を用意しておいたほうがいいのではないでしょうか。
【その他あったらよい品】
・食品用ラップ
食器にかぶせて使えば食器を洗う必要がなくなる。また出血していて他に止血するものがないときにも利用できます。
・水のいらないシャンプー
入浴できない日が続いた場合、頭皮の不快感だけでも解決してくれます。
防災グッズ優先順位3位の備蓄品と保管法/ロングライフ食品も備蓄
ガイドはかねてより食費節約のため食糧廃棄を減らせるように、長期保存が可能な食品を普段の食事に取り入れることを推奨し、自身もそのようにしています。その結果、前述の優先順位1.2以外に、通常食べる食糧として購入しているものも結果的に災害時にはある程度の期間食べることが可能になっています。具体的には乾物・缶詰・冷凍食品(ホームフリージング含む)で、停電になってしまえば冷凍食品は早いうちに消費しなければなりませんが、それでもある程度の量の食糧を保存しておけるという意味では有効です。
また最近注目されているのは、ロングライフ食品です。
ロングライフ食品とは、製造工程において殺菌条件を工夫することで賞味期限を通常品よりも長く設定可能な食品のことで、パッケージの中の酸素を抜いたり、食品が腐る原因となる目に見えない小さな細菌やカビなどを入らないような環境を保ったりすることで実現しています。
現在は牛乳や豆腐、パンなどにロングライフ食品があります。
東日本大震災の以降、ロングライフ食品の研究開発が活発化し、非常食としてのロングライフ食品の利点が見直されています。森永乳業は40年以上も前から研究しているそうです。通常の牛乳であれば賞味期限が4~5日ですが、ロングライフ食品の牛乳は40日となっています。
http://www.morinagamilk.co.jp/learn_enjoy/quality_safety/base/secret/
備蓄食糧の管理
狭い日本の住宅事情では保管場所の節約のために、備蓄食材を常に利用し追加していくという保管方法が提案されることもありますが、これは実は管理するのが意外と難しいのです。気づいたら使って減ってしまっていたということのほうがありがち。それであれば、備蓄食材は備蓄として別の場所に保管しておくほうが管理するには楽なのではないでしょうか。このとき気をつけるのは賞味期限切れ。そのため半年に1回備蓄食材を入れ替える時期を決めておいて保管しておく、食べるということを繰り返していったほうが楽に管理できます。
例えば日本では関東大震災があった9月1日が防災の日と定められています。また3月は東日本大震災があった月です。9月と3月に入れ替えるようにすれば忘れにくいと思います。また定期的に備蓄を入れ替えることで、備蓄しておく物の見直しをすることもできますし、防災意識を再確認するきっかけにもなります。
災害時に役立つスマホアプリとWEBページ
災害時には電話が回線が混み合ってかかりづらくなることも多くあります。その際にインターネット回線がつながれば、メールやスマートフォンアプリでの通話が可能な場合もあります。電話回線とネット回線の両方をおさえておくとよいのではないでしょうか。またスマートフォンのアプリでは災害時に役立つものもありますので、それらをインストールしておくこともお勧めします。
・Yahoo!防災速報(アプリ)
緊急地震速報や豪雨予報、避難情報などを知らせてくれます。
http://bit.ly/1k6oMdO(iOS)
http://bit.ly/1fPhSm3(Android)
・ゆれくるコール
緊急地震速報通知アプリ。最大3ヶ所の予測地点の設定が可能です。
http://bit.ly/14QOKtc(iOS)
http://bit.ly/1fPhV0Y(Android)
・防災情報 全国避難所ガイド
http://bit.ly/1fPhXGb(iOS)
http://bit.ly/1k6oQKq(Android)
・radiko
http://radiko.jp/
地域によって視聴できるチャンネルが限定されているところもありますが、ラジオをスマホで聴くことができます。
・災害用伝言ダイヤル
171(電話)
http://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171/index.html
WEB171
http://www.ntt-east.co.jp/saigai/web171/index.html
https://twitter.com/
東日本大震災のときに多く利用されたTwitter、Twitterを利用して安否確認をとった人も多くいました。
また帰宅困難者が多数でた都内近郊では、個人の発信ですが「○○大学が体育館を開放した」「○○電車が動き始めた」等のピンポイントでの情報が役にたったのも事実です。
しかし個人発信の情報にはデマや誤報もあるため、常日頃からそれらを見分ける目をもって利用しているといいでしょう。
またTwitterには公式の首相官邸(災害情報)Twitterアカウントがあります。
https://twitter.com/Kantei_Saigai
・LINE
LTE回線やWi-Fiなどインターネットに接続できる状態であれば、通話をすることも可能です。
http://line.me/ja/
「自分の身は自分で守る」使い古された言葉ですが、有事の際に本当に自分の身を守る準備はできているのか、今一度確認してみてはいかがでしょうか。
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