血友病とは
血友病とは、一言で言うと、生まれつき血液中にある凝固因子が少ないか、ほとんどないために、血が止まりにくくなってしまう病気です。非常にまれに、凝固因子を抑制する抗体ができる後天性がありますが、ほとんどが生まれつきなので、先天性として説明したいと思います。まずは、血が止まる仕組みについて理解しておくことが大切です。通常、血管内を流れている状態で血液は固まりません。しかし外傷などで血管が傷つくと、血が外部に出ていってしまいますので、血を止めるために必要な成分が働きます。1つは血小板、もう1つは凝固因子です。凝固因子は、血小板同志をくっつける糊(のり)のようなものです。まずは傷ついた血管の穴を塞ぐように血小板が集まってきて、血小板から出てくる成分と血管から出てくる成分で、血液中の凝固因子が働くようになり、血小板同士をしっかりとくっつけ、血管の穴を閉じます。血管の穴は血管の細胞で徐々に再生され、元に戻ると、くっついた血小板と凝固因子は離れていきます。
この凝固因子が少ないか、ほとんどない人が、血友病になります。凝固因子には1から13まであり、それぞれローマ数字で表現します。
血友病には、2つの種類があります。
- 血友病A…第VIII(8)因子の欠乏
- 血友病B…第IX(9)因子の欠乏
血友病の原因・発生頻度・確率
血友病の原因は、血友病Aも血友病BもX染色体の異常で起こるために、男性のみ発症します(X染色体の異常で、正常なX染色体があれば、発症しない遺伝形式を「伴性劣性遺伝」と言います)。血友病Aの発生頻度は5000人に1人、血友病Bの発生頻度は25000人に1人で、血友病Aと血友病Bを合併しているのが男児5000人に1人です。
平成18年の調査では、血友病Aは4100人、血友病Bは900人と示されています。
血友病の症状
関節内出血を繰り返すことを防ぐことが大切です
- 関節内出血……出血を繰り返すことで、関節の変形、硬直(血友病性関節症)が起きる。この症状は血友病の80%以上に見られ、かかと、膝、肘、足などの関節に起きやすい
- 筋肉内出血……背中の腸腰筋と言う筋肉で出血で年齢が高い時に起きやすい
- 頭蓋内出血……頭の中で出血
- 鼻出血……鼻血が出やすい、出血すると止まりにくい
- 歯肉出血……歯肉での出血、腫れ
- 血尿…割と年齢が高いと起きやすい
血友病の診断
■問診出血症状がいつからどんな状態であるかを聞き、出血部位を確認します。血友病は遺伝病でもありますので、親族、家族に症状のある人がいないかどうかも確認します。
■血液検査
血液検査で、血が固まるまでの時間を測定します。測定方法は、プロトロンビン時間と活性化部分トロンボプラスチン時間を測定し、プロトロンビン時間は正常で、活性化部分トロンボプラスチン時間が延長していたら、血友病が疑われます。さらに、実際に、第VIII(8)因子と第IX(9)因子の量を測定します。この凝固因子の活性の状態で重症度が決められます。軽症は正常の5%より多く、中等症は正常の1から5%で、重症は正常の1%未満です。
血友病の治療法
遺伝子組み換え型第VIII因子製剤(コージネイトFS)です(バイエル薬品株式会社HPより引用)
出血時は安静にし、冷やしながら出血部位を圧迫して拳上し、欠乏している凝固因子を補充します。例えば、関節内出血している場合は、1日1~2回、2~3日静脈注射します。出血時に補充しますので、しっかりと補充して止血していくことになります。
定期補充療法は、名前の通り、出血していない状況で、未然に出血を予防するために、欠乏している凝固因子を長期間定期的に補充する治療です。
最近は、出血時補充療法から定期補充療法に治療方針が変わりつつあります。理由として、定期補充療法で、中等症では出血回数が有意に少ないこと、頭蓋内出血などの命に関わる重症な出血が非常に稀であることです。さらに、関節内出血を繰り返すことで、関節の硬直や変形が、定期補充療法で少ないことが挙げられます。
現在、血友病の凝固因子を補充するためには、血管内に直接入れる注射しか方法がありません。そこで、1983年から、在宅自己注射が可能になっています。しかし、静脈注射では、それなりの手技の修得が必要になります。
補充療法の問題点として、凝固因子に対して、自己抗体と言う凝固因子を攻撃する免疫タンパク質が体にできてしまい、補充療法の効果が激減することがあります。凝固因子に対する抗体を、抑制するものと言う意味で、インヒビターと呼んでいます。
血友病性関節症になれば、整形外科での人工関節に変える人工関節置換術、関節にある滑膜という膜を切除する滑膜切除術などが行われ、リハビリテーションが重要になってきます。
現時点では、補充療法しかありませんが、遺伝子治療などによって、自分の細胞が凝固因子を作るようになる治療が期待されています。