大学を卒業しても就職できるとは限らない
子どもが大学まで進学した場合、小さい頃からかけてきた教育費の累計額は、進路などによっても異なりますが、1000万~2000万円ほどになります。しかし、大学を卒業しても全員が就職できるわけではない(大学院などへの進学を除く)という現実も知っておく必要があります。「(希望の)大学に入る」だけではなく、入った大学を無事に卒業し、なおかつ安定的な職を得て初めて、教育費投資が報われるといえそうです。
大学卒業後の就労状況もチェック
データから見る大学卒業後の状況
文部科学省「学校基本調査」の中には、大学新卒者の「卒業後の状況」のデータも整理されています。まずは、2021年12月末に発表された、2021年5月1日時点のデータを見てみましょう。大学卒業後の状況※( )内は割合
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・卒業者……58万3518人
・進学者……6万8776人(11.8%)
・就職者(*1)……43万2790人(74.2%)
*1:就職者=自営業主等や無期雇用労働者、雇用契約期間が1年以上かつフルタイム勤務相当の有期雇用労働者、進学者のうち就職している者を含む
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(文部科学省「令和3年度学校基本調査(確定値)」より)
大学院などへの進学率は2010年から右肩下がり
大学卒業者の大学院などへの進学率は、かつてはゆるやかな上昇傾向でしたが、2010年(平成22年)3月の15.9%をピークに低下が続いています。2020年(令和2年)は過去12年間で最も低い11.3%となりましたが、2021年度は11.8%と微増しています。進学者のうち、一部には、就職が厳しい時期を避ける目的で進学する学生もいるようですが、近年の就職率の改善もあって下がったとも考えられます。あるいは、家庭の経済状況の厳しさを反映したものといえるかもしれません。
コロナ禍の影響が大学卒業者の進学率・就職率にどう表れるかについては、次年度のデータを見ないとわかりません。
大学卒業後の就職率は2020年よりダウン
大学卒業後の就職率は、2010年以降は上昇し続け、2019年は78.0%と過去23年間で最高となりました。コロナ禍の影響で、2020年は77.7%と若干下がり、2021年は74.2%と低下しています。この「就職者」の中には、前述のように、自営業主、無期雇用労働者のほか、雇用契約期間が1年以上でフルタイム勤務相当の有期雇用労働者も含まれます。
大卒の8.5人に1人が進学も安定的な就職もしていない!?
一方で、大学を卒業後、進学も安定的な就職もしていない学生もいます。「有期雇用労働者のうち雇用契約期間が1年未満の者」や「臨時労働者」、「進学も就職もしていない者」を合計すると、約6.8万人(11.6%)となります。割合ではおおよそ8.5人に1人と見ることができます。
進学も安定的な就職もしていない者
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・有期雇用労働者のうち雇用契約期間が1年未満の者……7225人(1.2%)a
・臨時労働者……4633人(0.8%)b
・進学も就職もしていない者(*2)……5万6228人(9.6%)c
*2:進学も就職もしていない者=進学準備中、就職準備中、家事手伝いなど
進学も安定的な就職もしていない者=a+b+c=6万8086人(11.6%)
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(文部科学省「令和3年度学校基本調査(確定値)」より)
数年前から、有期雇用労働者のうち1年以上の契約の者も「就職者」として合算されるようになりました。一般的には、有期雇用は1年以上の契約であっても非正規雇用の扱いとされるので、実際にはもう少し悪いデータになる可能性もあります。
学歴の希少性が低下
教育投資の出口戦略である就職は非常に重要です。直近は、コロナ禍の影響もあるとはいえ、長年にわたって多額の教育費をかけても、8.5人に1人が進学も安定的な就職もしていないという現実に愕然とします。一方で、高等教育(大学・短大・専門学校入学者や高等専門学校4年在学者)への進学率は83.8%で過去最高をマークしています(文部科学省「令和3年度学校基本調査」)。学歴の希少性が低下している状況といえるのかもしれません。青天井で教育資金をかけることだけが、成功への道ではなくなっているようです。
中長期的には、起業や開業、芸人・ユーチューバーなどで成功を収める例もあるため、就職がすべてではないかもしれません。人生、どこで大逆転するかはわかりません。
しかし、子どものモラトリアム期間を支える経済的余裕は、親側にもなくなってきているのは事実です。
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●参考資料 文部科学省「令和3年度学校基本調査」
https://www.mext.go.jp/content/20211222-mxt_chousa01-000019664-1.pdf