歯科インプラント/歯科インプラントの施術方法・治療法

歯科インプラント治療における歯科衛生士の役割

高齢化が進む現代。いつまでも健康な歯でいたい患者様のニーズに的確に対応できるように日々進化をしている口腔外科業界において歯科衛生士の役割はとても重要なものです。今回は歯科衛生士が備えている知識とテクニックをお伝え致します。

梅田 和徳

執筆者:梅田 和徳

歯科医 / 歯科インプラントガイド

歯科インプラント治療における歯科衛生士の役割

歯科治療における歯科衛生士の役割は、あらためて言うまでもなくとても重要です。特に、歯科インプラントという第3の歯のメインテナンスケアにおいては、通常の天然歯や歯周組織の臨床に加え、更なる専門知識とテクニックが必要とされます。患者さんへの歯科インプラント治療の説明を行うのはもちろんのこと、術前の口腔衛生指導や管理、手術器具、器材の滅菌処理や術前準備、埋入手術時のアシスタント、上部構造(クラウン)の装着にいたるまでの診療補助、術後の管理と口腔衛生指導などとても幅広いものとなります。

歯科衛生士とは

診療中の歯科衛生士

手術前の口腔衛生管理を行う歯科衛生士

高校卒業後、専門学校、短大、大学などの専門機関において知識と技術を取得卒業し、歯科衛生士国家試験に合格した者を歯科衛生士といいます。平成22年以降は全ての教育機関が3年制となり、現在では4年制大学で教育を受けるところもあります。資格を持たない歯科助手や受付スタッフとは区別され、歯科衛生業務は国家資格を持たないとできない医療行為なのです。

2050年には2.5人に1人が高齢者になるといわれている日本ですから、より快適な口腔環境を求めるために歯科インプラント治療を行う方が今後ますます増える事でしょう。また、すでに機能し始めてから長期間経過した歯科インプラントが口腔内にあり天然歯と混在した状態で来院される方が多くなると思います。そういった意味でも歯科衛生士の役割はとても大きく、職業としてもとても将来性があると思われます。

厚生労働省保健・衛生行政業務報告では、全国で25万人以上の歯科衛生士がいる中で、実際に診療業務に従事しているのは半分以下の約10万人程度といわれており、医療現場では慢性的な歯科衛生士不足の状態です。

インプラント周囲粘膜炎と周囲炎

歯科インプラントも天然歯と同じように、歯槽骨の中に埋まり粘膜を貫通しています。様々な原因から、天然歯の歯周病の進行と類似した状況になることがあります。現在では定期検診時の入り口は歯科衛生士が担当していることが多く、役割も大きくなっています。その理由は、専門知識や経験がないと炎症を見逃してしまい、トラブルが大きくなってしまうからです。

■インプラント周囲粘膜炎
病変(炎症)が軟組織のみに限局しており、歯槽骨吸収(骨の痩せ)が起こっていない状態。歯肉の発赤・腫脹・プロービング(歯周ポケットの測定)時の出血などが主な症状で、歯科インプラント周囲に十分な不動粘膜(角化歯肉)が不足していたり、上部構造(クラウン)の形態が清掃困難な状態が原因といわれている。天然歯の歯周炎(歯肉炎)の対応と同様、環境改善を行い徹底したプラークコントロールを行えば改善の可能性は比較的高いが、この状態を見逃し放置しておくとインプラント周囲炎に移行し、重篤な状況に発展する可能性が高くなる。

■インプラント周囲炎
病変(炎症)が周囲の軟組織だけでなく、歯槽骨まで及んだ状態。歯科インプラントを支える歯槽骨は、正常な状態で治療後最初の1年で1~1.5mm程度、その後は1年で約0.1mm程度吸収(痩せ)するといわれている(ソーサライゼーション)。それを助長させるのが清掃不良で、歯肉が炎症を起こし、プラークや汚れがインプラント表面に固着し周囲組織に炎症が起きる。そうすると支えるはずの組織が脆弱になるため、さらに深部に汚れが入り込んでいき、炎症・骨吸収を進行させる。天然歯にはある歯根膜が歯科インプラントにはなく、周囲組織の血流やコラーゲン繊維も少なく、走行方向も違うために防御機構が天然歯よりも弱く進行が速いので注意が必要である。

メインテナンスケア

歯科インプラントは入れて終わりでなく、その後の定期検診におけるメインテナンスケアがとても重要です。
  • 上部構造の問題がないかどうか?
  • かみ合わせなど口腔環境に変化がないかどうか?
などの口腔内全体をチェックし、問題があったら担当歯科医師に速やかに報告します。また、一般的な歯科インプラント定期検診時のチェック項目は下記のようになります。

1. プロービング
インプラント表面を傷つけない材質の器具でポケットを測定する。挿入圧は天然歯の測定圧基準25gで同じといわれていたが、近年15gと少し軽めの方がいいのではないか、ともいわれるようになった。

2. 出血
プロービング時もしくは何もしない状態で、ポケット内から出血があるかどうかを確認する。

3. 浸出液
歯科インプラントの根尖方向から歯冠方向に向かって、指で歯肉を押し上げる。血液や膿汁が出るかどうかを確認する。

4. X-ray
骨吸収の程度をレントゲンで確認することもできるが、これだけで判断してはならない。

5. 動揺
インプラント体そのものの揺れがあるかどうか。かなりの骨吸収がなければ揺れることはないので、本当にインプラント体が揺れているのであれば撤去になる可能性が高い。上部構造の緩みをインプラント体そのものの揺れと間違えてしまうこともあるので、慎重に判断しなければならない。

インプラント学会認定歯科衛生士

プロフェッショナルケア

定期健診と歯科衛生士によるプロフェッショナルケアが重要

2007年に設立された、歯科衛生士の口腔インプラントに対する専門知識と技術を向上させ、国民の口腔保健の増進を目指すことを目的とした資格です。インプラントについて専門的な知識を持つ歯科衛生士かどうかを見極める基準の1つになると思われます。下記の条件をすべて満たしたうえでインプラント専門歯科衛生士試験に合格した者が認定されます。

  1. 日本国歯科衛生士の免許証を有すること
  2. 2年以上継続して正会員であること
  3. 3年以上インプラント治療の介助又はメインテナンスに携わっていること
  4. 本会学術大会及び支部学術大会に各1回以上参加していること
  5. インプラント専門歯科衛生士教育講座を2回以上受講していること
  6. 口腔インプラント専門医2名の推薦があること

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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