不動産売却・査定/不動産売却の流れ・基礎知識

不動産売却における両手取引(仲介)の問題点(2ページ目)

中古不動産の購入または売却は、不動産会社に依頼して取引を行います。不動産会社が売り手と買い手の間に立つことを「仲介」もしくは「媒介」と呼びます。また、仲介をする不動産会社の数が1社の場合を「両手取引(仲介)」、2社の場合を「片手取引(仲介)」と呼びます。ここでは、売り手が知っておくべき両手取引の問題点について解説します。

風戸 裕樹

執筆者:風戸 裕樹

不動産売却・査定ガイド


「両手取引(仲介)」と「片手取引(仲介)」の違い

「両手取引(仲介)」とは仲介会社が1社で行う取引です。売り手から売却の依頼を受けた仲介会社が自社を通じた買い手と契約を行います。この場合、仲介会社1社が、仲介会社は契約書に立会い印を押すとともに、宅地建物取引業者として買い手に重要事項説明書の説明を行います。

例えば、4000万円の取引の仲介手数料は、売り手から4000万円×3%+6万円=126万円(別途消費税)買い手からも同様の126万円(別途消費税)となり受領する仲介手数料は合計で252万円です。

両手取引の仲介手数料

両手取引の仲介手数料(上)と片手取引の仲介手数料(下)

一方「片手取引(仲介)」は、売り手の仲介会社が自社以外の会社の顧客と契約をする取引です。仲介会社は2社になります。売り手と買い手の仲介会社が異なるため、契約書の立会い印は2社、重要事項説明書の作成も2社で行います。

この場合の仲介手数料は、売り手の仲介会社が126万円、買い手の仲介会社が126万円それぞれの売り手もしくは買い手から受領します。

デメリットが多い両手取引(仲介)

両手取引は、仲介会社が1社だけなので、申込から契約までスムーズに進みやすいというところがメリットです。

しかし、デメリットも多く指摘されています。少しでも良い条件(高い金額)で売却したい売り手と、少しでも良い条件(安い金額)で購入したい買い手は利益が相反する立場です。仲介会社の業務の一つに売り手と買い手の交渉も含まれているため、双方の仲介を兼ねることは利益相反行為であると考えられています。

また、仲介会社が両手取引を行うことで得る仲介手数料は、片手取引の2倍の金額になります。そのため仲介会社としてはなるべく両手取引をしたいのが本心です。

さらに仲介会社の営業担当も自分の業績が仲介手数料金額で判断されるため、営業担当も両手取引を望みます。実は、両手取引を望むことで売り手にとって弊害が生まれるのです。

例えば、売り手の仲介会社はできれば他社に広告活動をしてほしくありません。他社の顧客から申込が入ると両手取引ができなくなってしまうからです。そのため、自社以外の仲介会社にインターネット広告、自社サイトへの掲載などを許可しないということがあります。また、折り込みチラシも許可しない場合もあり、売却に関する広告量が減少してしまいます。

さらに、自社の顧客を優先したいあまりに他社へ物件の案内や紹介をしぶるということもあります。悪質な場合は他社からの申込を売り手に報告しないということすらあるのです。よりよい条件の買い手を探して欲しい売り手にとって、このような売却活動は望ましいものではありません。

まとめると、両手取引が許可されていると、仲介会社は利益を優先すればするほど両手取引を目指してしまいがちになるということ。また、売り手の仲介会社と営業担当が売却状況を握ることができるため、売り手や他の仲介会社に対して真意を告げないことが可能だということです。

両手取引(仲介)と片手取引(仲介)という聞きなれない言葉ですが、売り手としてメリット・デメリットを理解した上で、依頼した仲介会社がどのような売却活動を行うのかを知るとよりよい売却につながります。

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