ストレス/人間関係・人付き合いのストレス

いじめ、暴行・・・集団心理が危険な結果を招くわけ

人が集団になると、いじめや暴行、暴動などの極端な行動が起こることがあります。どうしてこうしたことが起こってしまうのでしょう? また、周りがそれを止められないのはなぜでしょう? 集団心理の謎を解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

群衆の意見は極端に走りやすい!?

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「そうだそうだ!」と言っているうちに極端な結論に傾いていませんか?

人が何人も集まる場所では、なぜかどこでも誰か1人の人に対しての非難・批判で盛り上がったり、仲間はずれやいじめが起こったりします。誰もが不快なこと、避けたいことだと思っているのに、どうして同じようなことが起こってしまうのでしょう。

人は集団のなかで討議をすると、個人の意見よりも極端な意志決定になる傾向があるといわれ、これを「集団極性化」といいます。

たとえば、ネットの掲示板では、議論が一方向に流れると違う切り口の異見が叩かれ、議論が一方向に極端に暴走していくことがあります。ブログやSNSでは、ネット上で誰かが批判されると、そこに他人も同調し、とことん槍玉に上げられて炎上し、閉鎖に追い込まれてしまうこともあります。

このように、ネット上で集団極性化が起こる現象を「サイバー・カスケード」と呼びます。

集団論議はどこに向かうのか?

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小さな批評があっという間に激しい集中砲火に炎上することも

集団極性化には、「コーシャスシフト」と「リスキーシフト」の2つの側面があります。

コーシャスシフトは、集団で決めた決定が、個人で決めるよりも、慎重でより安全志向になることをいいます。議論を重ねるごとに、リスクをとることを怖れて消極的で現状維持に治まり、結局はいつまでも効果的結論が出ずに、ずるずると同じようなやりとりを引きずっているような場合、議論がコーシャスシフトに傾いていると考えられます。企業の会議や行政の議論などで、コーシャスシフトはよく見られます。

一方リスキーシフトは、集団で決めたことが、個人で考えるよりも危険性の高い決定になることをいいます。たとえば、先に紹介したサイバー・カスケードのように、ネット上で誰か一人を集中攻撃したり、サイトが炎上する現象は、リスキーシフトの代表例です。学校などでしばしば問題になる「集団いじめ」や「集団暴行」もそうですし、国や政治を脅かす暴動やテロリズムにも、リスキーシフトの側面があります。

傍観者が多いほど助けの手は少なくなる!?

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傍観者が多いほど一人あたりの責任意識は薄くなる

では、集団行動がリスキーシフトに傾き、いじめが発生しているとき、周りにいる人はどのように反応するものなのでしょうか? 実は誰もが「やめたらいいのに」と思っていても、そう言えずに問題を放置してしまうことは多いものです。

このように、自分の他に傍観者がいることで積極的な行動を起こせなくなってしまうことを「傍観者効果」といい、周りに傍観者が多いほどこの効果が高くなるとされています。この傍観者効果が生じる背景には、

1. 責任分散
--他の人がいることで、一人の責任が分散する
2. 多元的無知--周りの人も行動しないので、行動する必要がないのだと勝手に判断してしまう
3. 評価懸念--自分が行動することで、周りにどう見られるかを怖れる

の3つの要因があります。

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