年金制度はわかりにくい?日本の公的年金の特徴である「世代間扶養」を支える仕組みを中心に解説します
保険料を納付しない理由として最も多いのは「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」という経済的なもの。次いで多いのが「年金制度の将来が不安・信用できない」という年金制度自体への不信が挙げられています。
その反面、老後の生活資金源は何を充てる予定か聞いた調査では、「公的年金」が各世代とも最も高く、平均で約80%は公的年金が老後の生活を支える手段と考えています(金融広報中央委員会「平成23年度家計の金融行動に関する意識調査」より)。
日本の公的年金制度の仕組みは複雑でわかりにくいところもあるので、よくわからないまま不安になっている人も多いかもしれません。仕組みを理解することで解消できることもあるでしょう。現行の年金制度とはどんな仕組みなのか、再確認してみましょう。
<INDEX>
・日本の公的年金制度の3つ特徴
・役割交代しながら扶養する「世代間扶養」の仕組み
・現役世代が高齢者を支える「賦課(ふか)方式」
・自分が負担した保険料が自分の年金になる「積立方式」
・自分の親の扶養を社会全体で支えている
・職業で異なる加入できる年金制度
・40代女性、自営業と会社員の年金額は?
日本の公的年金制度の3つの特徴
日本の公的年金には、「国民皆年金」「社会保険方式」「世代間扶養」という3つの特徴があります。国民皆年金は、原則20歳以上のすべての国民に加入の義務があることを意味しています。さらに、加入する制度や種別はおもにその人の職業によって決まっています。社会保険方式は、加入者が負担する保険料で給付が賄われる仕組みです。社会保険方式に対して、国民全員で費用を負担する税方式があります。スウェーデンの最低保証年金は税方式の年金ですが、社会保険方式を採用している国の方が多くみられます(詳細は「年金は社会保険方式?税方式?」をご覧ください)。なお、日本の公的年金は社会保険方式ですが、現在は給付に必要な財源の2分の1は税金を財源とした国庫負担が行われているという、税方式の特徴も採用しています。
世代間扶養は、社会全体で現役世代が高齢者世代を扶養するという考え方です。昔の日本は、高齢の親を同居する子どもが扶養する私的扶養が一般的でした。国民皆年金が実現した昭和30年代以降は経済発展とともに日本人のライフスタイルが多様化し、複数の世代が同居する大家族から核家族へと変化していきました。そのため、世代間扶養の機能を持つ公的年金制度が徐々に高齢者の生活を支える制度として定着してきました。
役割を交代しながら扶養する「世代間扶養」の仕組み
(厚生労働省ホームページより)
上図は、世代間扶養の仕組みを表したものです。A2世代の保険料はA1世代の年金を支え、A2世代の年金は次のA3世代の保険料が支えるといった流れで、役割を交代しながら扶養する世代から扶養される世代に移行していく様子を表しています。
老後の収入を「配偶者・子どもに期待する」という人の割合は、85歳以降の高齢者では約20%ですが、45歳未満では10%に満たないという調査結果もあります(厚生労働省「平成22年度の国民年金保険料の納付状況と今後の取組等」より)。公的年金の世代間扶養という仕組みは、老後の生活を支える担い手になっているといえるでしょう。
世代間扶養の考えの下、日本の公的年金制度では社会保険方式で徴収した保険料を賦課方式という財政方式で年金制度を運営しています。年金制度改正を議論するときにこの方式と比較検討されるのが積立方式です。
次に賦課方式、積立方式それぞれの仕組みについてみてみましょう。