後部硝子体剥離による飛蚊症の治療法
治療を薦められない飛蚊症もあります。上手につきあうコツを掴むことも大切
理論的には手術で除去することができますが、手術の合併症で失明リスクを伴う「網膜剥離(もうまくはくり)」になるリスクがあるので、患者さんには手術を受けることは決してお勧めできません。私の病院では、以前手術で治療を行ったことがありますので、その時の経験を元に述べています。
飛蚊は目の中で動くので、うまく端の方に行ってくれれば気にならなくなります。あまり神経質にならず、自然と移動してくれることを気長に祈りましょう。
アメリカでは、レーザーを使って硝子体混濁を細かく砕いて飛蚊症を目立たなくする治療をしている先生がいらっしゃいます。このレーザーの機械はまだ開発段階らしいのですが、将来日本でも使えるようになったら朗報ですね。今アメリカに治療を受けに行くには、専門のコーディネーター業者を通すのが一般的なようですが、費用はコーディネート料込みで50万円から100万円ほどかかるようです。
網膜裂孔による飛蚊症の治療法
網膜に裂け目ができると、眼内の水分が網膜の下にしみこんで、網膜はく離を起こす可能性が高いので、レーザーによる治療が必要。大切なのは、レーザー治療はあくまで網膜裂孔が網膜はく離に進展しないための治療であり、厳密には飛蚊症を治すための治療ではないということです。他院でレーザー治療を受けたが飛蚊症が治らない、といって病院に来られる患者さんも少なくないのですが、それは治療の目的がそもそも違うためです。
レーザー治療は、診察料込みで通常3割負担で7万円前後とお考えください。
また、目薬やサプリメント、食生活などの工夫で飛蚊症が改善する、といった話を聞くことがあります。それについては「飛蚊症治療は可能?目薬・サプリメント・レーザー治療」記事で詳しく解説していますので、ご興味のある方は併せてご一読いただければと思います。
若年性の原因不明飛蚊症の治療法
硝子体にある濁りが自分で見えてしまうことが原因と考えられますが、医学的には原因がはっきりとは解明されていないため、よい治療法はありません。飛蚊が見えるのは気になるでしょうが、失明や視力低下などの恐れはないので治療の必要はない、と聞いて安心できるなら、この病気はそう深刻ではありません。しかし当院に来られる前に多くの眼科を受診し、どの眼科でも「問題ない」「気のせいだ」と言われ、ノイローゼのような状態になっている患者さんも現実には多くいらっしゃいます。ひどいケースでは、病院で診断してもらえない飛蚊の正体や現象が気になるあまり、学校や仕事にも行けなくなり、家族も困り果ててしまい、当院で診察・説明をしても全くノイローゼ状態が改善しない方もいらっしゃいました。毎日起きている間はずっと飛蚊が見えるので、極端に気になりだすと心まで壊れてしまうのでしょう。これは医師としてもとても辛いケースです。
私は「他の病院で治らないような患者さんを治療してさしあげたい」というモットーを持っていますので、以前「息子が飛蚊症が気になって引きこもってしまい、自殺も考えているようなのでなんとかしてやってほしい」と親御さんに頼み込まれる形で、患者さんの硝子体除去の手術を手がけたことが何度かありました。
しかし、ほとんどの患者さんにおいて「以前より減ったけれども完璧とはいえない……」という程度の満足度。網膜剥離などの合併症もありえるので、総合的に見て患者さんの利益にならないと判断し、現在は手術治療をお断りしております。
なお、この若年性の飛蚊症は、先述のアメリカのレーザーでも治療できないようです。悩みの深い若い患者さんには、以下のようなことをお伝えしたいです。
「若年性の飛蚊症は自然発生した硝子体混濁によるものであろう。実際に見えていることは間違いないので、気のせいではない。いつも見えるので悩む気持ちはわかる。
しかし、それを気にしすぎて心まで病んでしまうのは、体に完璧を求めてしまう心自体を治療する必要があろう。自分だけと心配することはない。若い頃にはいろんなことに悩み、その悩みを自分で制御できずに心を病んでしまうのはよくあることだ。自分(大高)にも経験がある。
若くて健康な君たちにはわかりにくいことかもしれないが、残念ながら人間の体は完璧ではない。年齢が上がれば、自分の体に弱いところがたくさんあることを知るだろうし、最後には死ぬ。
世の中には、若くして失明し、この文章すら読めない人もいる。若くして癌になって死ぬ人も多い。歓迎できないことが若い頃に目に発生することは大いにありうる。
あきらめを知ることが豊かな人生を生きるための第一歩であるということをわかってほしい」
お困りの若い方、参考にしていただければ大変うれしく思います。