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30km/lを実現したマツダの新エンジンの秘密に迫る!

燃費のいいクルマといえば真っ先に思い浮かぶのがハイブリッドカーだが、実はハイブリッドのようにモーターのアシストがなくても、まだまだエンジンの効率は上げられる。それを証明したのが、マツダの新技術『SKYACTIV』だ。

執筆者:宮島 小次郎

世界一の圧縮比「14.0」が実現する内燃機エンジンの未来

SKYACTIV-G

マツダの次世代エンジンとして登場する「SKYACTIV-G」。圧縮比14とガソリンエンジンとは思えないほどの高圧縮比を実現したのが注目だ


今やエコカーといえば、トヨタ・プリウスやホンダ・インサイトに代表されるハイブリッドカーがその代名詞のように言われていますが、実はハイブリッドのように電気モーターのアシストに頼らずとも、クルマの燃費はまだまだ改善できるのです。その一例が欧州車で多く採用されているダウンサイジング・エンジンですが、日本のマツダではそうした従来の方法とは全く異なるアプローチで、燃費向上を目指しています。

『SKYACTIV』と名付けられたマツダの新技術は、昨年の東京モーターショーでも「SKY-G」「SKY-D」という名でガソリンおよびディーゼルエンジンが、それぞれ参考出品されていましたが、ここへきてようやくその具体的な内容が見えてきました。そのキーワードとなるのが、ガソリン、ディーゼルいずれのエンジンにも採用された圧縮比「14.0」という数字です。

少し専門的な話になりますが、圧縮比とはエンジンのシリンダ―内の全容積と燃焼室の比率のことで、一般的にガソリンエンジンでは10~12あたりが市販エンジンの標準値で、レース用のハイチューンエンジンでようやく12~13近くに設定されます。それがいきなり14となると、これまでに市販車ではほとんど聞いたことがないほどのレベルです。

一般にガソリンエンジンの燃焼エネルギーは、その70~80%が発生する熱や内部の摩擦などによってロスされているといいますが、簡単にいえば圧縮比を上げれば、その効率を高めることができると考えられています。ただ、現実的には圧縮比を上げ過ぎると、異常燃焼(ノッキング)が発生するため、点火時期を遅らせるなどの対策を取らざるをえず、結果として圧縮比向上のメリットを活かすことができませんでした。

では、マツダではどのようにして、14という高圧縮比を実用化したのでしょうか。その解決策のひとつがエンジンから出た排気ガスを一本にまとめてマフラーへ送る、いわゆる「エキマニ(エキゾーストマニフォールドの略)」の設計です。

これも専門的な話となってしまいますが、市販車のエキマニは通常、製造コストやスペース効率を重視した設計とされているため、エンジン性能の面から見ればあまり効率的な形状とはなっておらず、とりあえず排気をひとまとめにすることを優先して設計されています。

ただ、このエキマニの設計がエンジンの性能に与える影響は大きく、昔から性能を重視したレーシングカーやパワーアップを目指したチューニングカーでは、効率を重視したエキマニを採用することが常識となっています。効率のいいエキマニとは、すなわちいかに素早く排気ガスを燃焼室から排出できるかを追求したものです。

ピストン

ノッキングの発生を抑えるため、燃焼をコントロールする特殊なピストンを採用する

マツダでは、燃焼室に残った高温の排気ガスが異常燃焼の一因となっていることを突き止め、効率のいいエキマニを使って、素早くこの排気ガスを燃焼室から排出させることでノッキングを低下させることを目指したといいます。ただし、高効率なエキマニを採用することで、排ガスの浄化機能が低下するなどの問題も発生したため、それを解消するためにキャビティと呼ばれる大きな窪みをもった特殊なピストンを採用するなどの対策が必要となっています。

これらと合わせて、燃焼室へ燃料を噴射する噴霧特性の改善や燃焼室内の空気の流れ(スワール)を強化することで燃焼時間を短縮するなどの対策を行うことでノッキングの発生を抑えることができたのです。この他、エンジン内部の摺動部品の軽量化や摺動部のフリクションの低下によって、従来エンジンに比べて約15%燃費が向上しただけでなく、低中速トルクも同じく15%ほど改善できたのです。

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