土地活用のノウハウ/入居者ニーズとマーケティング

土地活用の新しいキーワード、それは「子育て」

少子化時代なのに、保育所が足りない?この5年間で保育所数は500近く増え、定員も10万人以上増えたのに、「待機児童数」は増えています。リーマンショック後の景気低迷から、お母さん達が働かざるを得なくなったからです。その一方、「一人の子どもに6つの財布」と言われるように、少子化が進む中で子ども一人あたりの消費額は大きくなっています。今、「子育て」関連事業には大きなビジネスチャンスが広がってきているのです。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

差別化を図る!「子育て」というキーワード

女の子

「子育て」を大事にする社会へ

少子化が進む一方で、「子育て」に係わる話題が取り上げられることが多くなってきています。「子育て」は土地活用の面からも重要なキーワードであると言えます。保育所に代表される子育て施設設置のニーズ、子育てに適した住宅のニーズ……等々。今回は、社会的に関心の高い「子育て」というテーマを切り口にして、土地活用を考えてみましょう。


差し迫っている待機児童問題

「保育施設が足りない」という声を皆さんもよく聞かれることかと思います。子育てのための社会インフラの立ち遅れは少子化の原因の一つです。子育てのための施設の増加が期待されています。

「待機児童、3年連続増」。これは先日のある新聞記事の見出しです。認可保育所を希望しながら入所できない児童が、2010年4月現在で全国に2万275人もいます。その約8割が首都圏や近畿などの都市部に集中しています。1994年に国によって“エンゼルプラン”が制定され、行政も待機児童の解消に取り組んできました。その成果として2003年より一旦減少に転じ、2007年には過去最低のところまでいきましたが、2008年からは再び上昇に転じてしまっています。

待機児童数増加のグラフ

保育所増加なのに、待機児童数が増加

東京都は、2008年度から3年間で定員1万5千人分の保育サービス定員の整備を行う、「保育サービス拡充緊急3か年事業」を推進してきました。2009年度では当初計画の1.5倍の整備目標を達成し、その結果、2010年4月の東京都の保育サービス定員は、認可保育所・認証保育所・認定こども園・家庭福祉員の合計で19万4849人となり、前年より8538人も増加しています。ところが保育所入所待機児童数は、前年度比496人増加の8435人で、依然として厳しい状況が続いています。

「少子化なのに、なぜ」と疑問に思われるでしょうが、原因の一つとしてリーマンショック以後の景気の低迷が影響しています。つまり「働くママ」の増加は、女性の社会進出という理由ではなく、家庭の経済的な理由が大きく影響しているのです。リストラや賃金カットにより、一人の働き手の収入だけではなく、二人の収入が必要になっている家庭が増えているという事情もあり、子どもを預けて仕事をしたいという子育てママの願いに、行政の力がまだまだ及んでいないという状況なのです。


保育施設への場所の提供 

そこで注目されているのが、保育施設をはじめとする「子育て支援施設」です。行政は、民間の活力を導入することで保育施設の多様化を模索しています。

時代の要請に応えて、あなたのマンション1Fフロアや事務所テナントの空きフロアを保育施設へ提供することは、前向きに検討する余地があります。

実際に空きスペースを保育施設として転用した例も増えています。ある大手企業の社員寮を、1階は保育施設に、2階・3階を子育てマンションに転用した例もあります。住宅と教育施設が近ければ、働くママたちにとって安心できる環境になります。また、小さなスペースでも保育施設として利用できる場合があるので、マンションの一室を活用することも可能です。

しかし、ここで気をつけなければならないのは「立地」です。あくまでも待機児童が多くいる地域であること。また、駅の近くや住まいの近くで、子育てママにとって便利な場所であるかなど、しっかりとしたマーケティングが必要になります。


その他の「子育て」施設の可能性

男の子

経済的に恵まれている最近の子ども達

「一人の子どもに6つの財布」という言葉を耳にされたことがあると思います。日本では少子化がどんどん進んでいますが、1人の子どもにかけるお金は、むしろ増えているということです。6つの財布とは、そのお金の出所を表す子どもマーケット用語で、父母の財布で2つ。父側の祖父母と、母側の祖父母の財布が合わせて4つ。合計6つの財布から、子どものためにお金が使われるということです。

そのため、少子化が進む中で、子ども一人あたりにかける消費額は大きくなってきており、学習塾、キッズスクール、習い事の施設等々、子育てのための施設を誘致することは、有効活用の選択肢として有望であると言えるのです。

個人宅で開かれる比較的小さな塾形式から、大規模な施設が必要な子供向けのスポーツクラブまで、様々な規模の施設のニーズがあります。個々の状況に応じて、しっかりマーケティングすることが必要です。

そのためには、運営主体となる事業者をしっかり見極める必要があります。地域に密着した、将来ビジョンのある事業者でなければ、短期間で閉鎖され撤退されるリスクが潜んでいます。また経済基盤(事業者の財務体質)も大丈夫であるかも調べる必要があります。大手の看板は出していても、実際は個人の事業者である零細フランチャイジーであるケースなどもあります。施設を長期にわたって安心して任せられる事業者であるかを、注意深く判断することが必要です。
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